農薬等ワーキンググループ

POPs農薬の概要物理化学的性質

対象農薬の概要

1.POPs農薬の概要(1)


化学物質名 構造 分類 農薬登録年
失効年
輸入量
生産量
毒性 概要
アルドリン
Aldrin
農薬・殺虫剤 登録:1954年
失効:1975年
(1971年に農薬として使用禁止)
原体換算3,313トン
(1958-1972)
意識喪失や全身痙攣などが起こる。 1981年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
ディルドリン
Dieldrin
農薬・殺虫剤 登録:1954年
失効:1973年
(1971年に農薬として使用禁止)
(シロアリ駆除剤として1980年まで使用)
原体換算683トン輸入
(1958-1972)
(シロアリ駆除剤として原体換算258トン輸入)
急性中毒で頭痛、めまい、脱力感、嘔吐、意識消失、強直性及び間代性痙攣発作等が起こる。 1981年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
エンドリン
Endrin
農薬・殺虫剤 登録:1954年
失効:1976年
(1971年に農薬として使用禁止)
原体換算1,360トン輸入
(1958-1972)
中枢神経毒で食欲不振、嘔吐、強直性及び間代性痙攣発作等が起こる。
1981年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
DDT
DDT
農薬・殺虫剤
シロアリ駆除剤
登録:
失効:1971年
(シロアリ駆除剤として1981年まで使用)
156,265トン生産
(1947-1971)
頭痛、めまい、食欲不振、吐き気、下痢、全身倦怠感がある。大量摂取すると振せん、四肢麻痺、意識消失などがある。 1981年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
第二次大戦終戦後に防疫やシラミの駆除剤として使用され、後に農薬としても使用。
ヘプタクロル
Heptachlor
農薬・殺虫剤
シロアリ駆除剤
登録:1957年
失効:1972年
(シロアリ駆除剤として1986年まで使用)
原体換算約1,500トン輸入
(1957-1972)
  1986年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。クロルデン中に不純物として含まれている。
クロルデン
Chlordane
殺虫剤
シロアリ駆除剤
登録:1950年
失効:1968年
(シロアリ駆除剤として1986年まで使用)
  黄色粘ちょうな液体。皮膚吸収があり、肝臓障害を引き起こす。 1986年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
HCB(ヘキサクロロベンゼン)
HCB
殺虫剤や化学合成原料 登録:
失効:
(1972年以降生産されていない)
  発ガン性、催腫瘍性、催奇形性の疑いがある。 1979年に化審法第1種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止。
マイレックス
Mirex
殺虫剤 日本では農薬登録されていない。      
トキサフェン
Toxaphene
殺虫剤 日本では農薬登録されていない。      
BHC(*)
benzene hexachloride
(HCH)
  農薬・殺虫剤 登録:1948年
失効:1971年
(1971年に農薬として使用禁止)
  頭痛、めまい、吐き気、嘔吐など。
重症では呼吸困難、チアノーゼを起こし死亡することもある。皮膚吸収があり、肝臓・腎臓障害も起こる。
 
PCP(*)
Pentachlorophenol
  木材防腐剤、農薬・殺虫剤     皮膚吸収があり、急性症状として筋の弛緩、循環器の衰弱、嘔吐、胸部圧迫感、など、慢性症状として倦怠、発刊などがある。 不純物としてダイオキシン類(H7CDD)を含む。

(*)POPs条約の対象物質ではないが、日本国内で問題になっている農薬であるため記載する。
(1)「化学物質 環境・安全管理用語辞典」(環境・安全管理用語編集委員会編、化学工業日報)

2.POPs農薬の物理化学的性質(2)


化学物質名
分子式
構造式 分子量 物理的性状 融点
(℃)
沸点
(℃)
密度
(g/cm3)
蒸気圧
(Pa,20℃)
LogPow 生物濃縮性BCF(2) 水溶解性 半減期
(土壌)(3)
アルドリン
Aldrin
364.9 無臭の白色結晶 104〜105 145
(0.27 kPa)
1.6  0.009 7.4 735〜20,000 溶けない 2〜9年
ディルドリン
Dieldrin
380.9 無色/白色結晶 175-176   1.7 0.0004 6.2 3,300〜14,500 溶けない 3〜6年
エンドリン
Endrin
380.9 無色/白色結晶 200 沸点以下245℃で分解(塩化水素やホスゲンが発生) 1.7 ほとんどない(25℃) 5.34 4,680〜14,500 0.2g/100ml(25℃)  
DDT
DDT
354.5 無色針状結晶 109 260 1,5 1.8×10-7 6.36 600〜84,500 溶けにくい 4〜10年
ヘプタクロル
Heptachlor
373.3 特徴的な臭気の白色結晶 95〜96 135〜145℃(0.2kPa) (比重)
1.65〜1.67
0.053(25℃) 5.27〜5.44 200〜37,000 溶けない 2〜9年
クロルデン
CChlordane
409.8 黄色粘ちょうな液体   175(0.27kPa) (比重)
1.59〜1.63
0.0013(25℃) 2.78 3,200以上 溶けない 5〜12年
HCB(ヘキサクロロベンゼン)
HCB
284.8  単斜晶系プリズム型結晶(4) 231 323〜326 1.21 0.001 Pa(20℃) 5.5〜6.2 1,600〜20,000 0.0000005 g/100 ml(20℃)  
マイレックス
Mirex
545.5 白い結晶(4) 485       5.28 2,580〜71,400 溶けない  
トキサフェン
(カンフェクロル)
Toxaphene
413.8(平均値) 70〜90℃で軟化する黄色ワックス状固体(4) 65〜90   (比重)
1.6
無視できるほど低い 2.47 〜 5 3,100〜69,000 溶けない 5年
BHC
benzene hexachloride
(HCH)*
  290.8 無臭の、白色結晶性粉末 113 323 (比重)
1.87
 0.0012 3.61〜3.7 5.5〜4240 溶けない 3〜11年
PCP
Pentachlorophenol
   266.4 特徴的な臭気のある、白色の結晶または様々な形状の固体 191 309 1.98 0.02 5.01 100〜1000 0.001g/100 ml(20℃) 5年

(1)国際化学物質安全性カード(ICSC)
(2)TOXNET HSDB(Hazardous Substances Data Bank)
(3)『バイオレメディエーションエンジニアリング』(John T,藤田 正憲 他監訳,エヌティーエス)
(4)化学物質安全情報提供システムkis−net

*リンデン(γ-BHC)の値。HCHには、α,β,γ,δ,εのなど7種の異性体がある。α,β,γ,δの異性体を含むものがBHC、BHCを生成しγ-HCHの純度を上げたものがリンデン