エコケミストリー研究会の情報誌「化学物質と環境」のRADAR に掲載した情報を紹介しています。
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2006年〜2010年の日本の動き
2000年〜2005年の日本の動き
厚生労働省が職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会のリスク評価ワーキンググループを開催
2019年9月から開催されている「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の議論を踏まえて「リスク評価ワーキンググループ」が10月20日、11月17日に開催された。
未規制物質による労働災害が頻発している事態を受けて、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」では化学物質の事業場での管理について、毎年約千種類の新規化学物質が開発され、万単位の化学物質が製造・使用され、労働災害の多くが「自主管理物質」で発生していることからも、今後の規制は物質の危険有害性に基づく「自律管理」を基軸として、その実効性を高めることにより重点を置くべきではないか、などの指摘がなされた。
これを受けて、国は従来の個別有害化学物質の規制を強めていく形ではなく、「自律管理」を軸とした制度に転換する方針を示し、「自律管理」の対象物質を現在の673物質から3,000物質程度に大幅に拡大する方針を示している。その実現に向けて、有害性情報の整備、GHS分類やラベリングによる情報伝達、ばく露限界値等の設定及びこれに基づく管理の方法などについて、労働災害の多い中小企業などでの実効性を考慮しつつ、表記のワーキンググループで検討が始められた。
世界的に化学物質管理手法は大きく転換している。我が国においてもこの検討が化学物質管理の転換点になると考えられるが、今後はこれらの有害情報の受け取り側の能力向上やこれらのリスク管理手法が有機的に活用されることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
欧州化学物質庁がSCIPデータベースの運用開始を公表
欧州化学物庁(ECHA)は、10月28日にSCIPデータベースの運用準備が整ったことを公表した。
SCIPデータベースは、欧州廃棄物枠組み指令(WFD)に基づくもので、化学物質の有害情報を増強整備することで、作業者や市民、環境を保護し、消費者がより安全な製品を選ぶことを可能とし、製造者がより安全な物質に代替することを促し、物質循環の中での有害物質量を減らすことを目指している。
2021年1月以降にREACH規則の高懸念物質(SVHCs)を0.1wt%以上含む製品を上市する企業は、化学物質名や濃度範囲、製品中で当該物質が含まれる場所、安全に使用するための情報、廃棄物になった際の適切な管理方法などの安全取扱情報をSCIPデータベースに登録しなければならない。また、2021年2月以降には、廃棄物事業者や消費者は、このデータベースを参照できる予定となっている。
200を超えるSVHCsの管理は企業側には相当の負担にはなると思われるが、日本では日本化学工業協会などの業界団体が登録の支援を行っている。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現においても、有害化学物質の管理は重要であり、有害性情報を事業者が提出し、消費者およびリサイクル事業者を含む廃棄物事業者が利用できる形は、今後、我が国においても考慮される方向であると考えられる。(文責:浦野 真弥)
環境省が中央環境審議会の化管法に基づく第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の指定の見直しの答申について公表
環境大臣より中央環境審議会に諮問された特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下、化管法)について、令和2年8月31日に中央環境審議会会長から環境大臣に対して答申がなされたことが公表された。
今回の対象物質の見直し作業の結果、有害性が化管法の現行選定基準に合致し、新たなばく露情報の選定基準に合致する物質は656物質(現行562物質)となり、うち特定第一種指定化学物質に該当する物質は24物質(現行15物質)となっている。単純な増減では94物質増であるが、内訳は現行法で対象外の物質が258物質(第一種190物質、第二種68物質)追加、164物質(第一種86物質、第二種78物質)が除外と、大きく変わっている。
環境省は、本答申を踏まえ、経済産業省とともに、化管法施行令を速やかに改正する予定であるとしている。
また、見直し後の新たな対象物質について関係者に周知するため、これらの物質の排出量・移動量を算出するためのマニュアルの改訂や、届出の手続きに関する手引きの改訂、届出対象となりうる事業者に対する説明会の開催等、必要な措置を講じていくとしている。
国際的な動向も踏まえて物質の再検討が行われているが、今後は単に毒性物質の環境排出・移動量の集計に留まらない有機的かつ分野横断的な情報の活用も望まれる。(文責:浦野 真弥)
環境省が中央環境審議会「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十四次答申)」について公表
環境省は、8月20日に表記の答申を公表した。
この答申では、微小粒子状物質等に関する対策、特殊自動車の排出ガス低減対策、日本ではほとんど該当車両が存在しないが低出力の乗用車等における排出ガス試験方法の国際調和等について示されている。
微小粒子状物質等に関する対策では、従来の粒子状物質の質量による規制に加え、より高感度な粒子数による規制(PN規制)を導入し、ガソリン車については2024年(令和6年)末までに、ディーゼル車については2023年(令和5年)末までにそれぞれ適用を開始することを答申している。
特殊自動車の排出ガス低減対策では、指定の定格出力の特殊自動車に対して、過渡試験サイクル(LSI-NRTC)及び定常試験サイクル(7M-RMC)を導入するとともに、許容限度目標値の強化を行い、2024年(令和6年)末までに適用を開始するとしている。
今後は、PN計測法の検出範囲の下限を引き下げるための試験法の改定、ブレーキの摩耗に伴い発生する粉塵の量を適切に評価するための試験法の策定、及び特殊自動車の微小粒子状物質規制の強化等について検討するとしている。
自動車については、燃費も含めて年々規制が厳しくなっているが、使用過程車の劣化管理や転換施策、交通システムなども含めて総合的な対策が進められることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
環境省が中央環境審議会「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第二次答申)」及び意見募集の結果について公表
環境省は6月26日に表記の答申および意見募集の結果を公表した。
平成30年6月15日の農薬取締法の改正によって、令和2年4月1日より農薬の動植物に対する影響評価の対象が従来の水産動植物から陸域を含む生活環境動植物に拡大された。この改正法施行に向け、平成31年2月7日に、中央環境審議会会長から環境大臣に対し、「陸域の生活環境動植物として、鳥類を評価対象動植物としてリスク評価を行い、農薬登録基準を設定すること」、「植物の授粉に重要な役割を果たす野生のハチ類のリスク評価の方法についても検討を進め、必要に応じ、評価対象動植物に加えること」等が答申されたことへの検討結果を今回二次答申として示したものである。
野生ハナバチ類については、植物の授粉に重要な役割を果たすことに加え、欧米等において農薬による被害のおそれがある対象としてリスク評価、規制が行われていることや、我が国でも農林水産省が養蜂用ミツバチに対するリスク評価を導入していること等を勘案し、評価対象動植物に加えることが適当であるとされた。リスク評価については、試験方法が確立されており、摂餌量等のデータが充実しているセイヨウミツバチを供試生物とした試験成績に基づいて行うことが答申された。
生理活性を持つ農薬類については、人を含むすべての生態系への影響も大きい可能性があることから、今後も広い視野での管理が必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
環境省が「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて」(第5次答申)について公表
環境省は、5月26日に表記の答申を公表した。
表記の第5次答申の中で、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびペルフルオロオクタン酸(PFOA)を人の健康の保護に関する要監視項目に位置づけ、指針値(暫定)として「0.00005 mg/l以下」の値を設定することが適当とされた。これは2月に定められ、4月1日から適用された水道水質に係る暫定目標値と同じとなっている。
環境省は、この答申を受け、5月26日付けで「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の施行等について(通知)」を地方公共団体に通知した。
また、環境省は6月11日に令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査結果を公表した。この調査結果を見ると、全国の河川や湖沼、海域計171地点の測定の結果、13都府県の37地点において、前記の水環境の暫定的な目標値を超過していた。
暫定的な目標値を超過した地下水・湧水は、いずれも飲用用途の水ではなかったが、環境省は、人へのばく露防止のため、目標値超過時の飲用に関する注意喚起や汚染状況の把握、PFOS等を含有する泡消火薬剤の在庫量調査及び代替促進等の取り組みを進めていくとしている。
健康影響が生じるような状況ではないが、環境残留性で一定の生物濃縮性を持つことから、継続的な管理が求められる。(文責:浦野 真弥)
経済産業省が『METI Journal』で「レジ袋有料化 その先の未来」を特集
経済産業省は、4月7日から広報サイト『METI Journal』で、政策特集「レジ袋有料化 その先の未来」を順次公開している。
Vol.1「ワンウェイプラスチックの削減へ最初の一歩」では、年間900万トンに上る国内のプラスチックごみの中で5%足らずのレジ袋を有料化する意味、その先の課題について示し、Vol.2「海洋プラごみ 汚染実態解明に挑む」では、海洋プラスチックごみの実態調査の現状と課題、国際的な取り組みと日本の状況などが示されている。Vol.3「流通大手 4月に対策前倒し コンビニの対応方針もみえてきた」では、レジ袋有料化に対応して削減やバイオマス素材への代替などの業界の取り組み、先行する自治体の取り組みが紹介されている。Vol.4「百花繚乱「生分解性」プラごみ問題解決の一助に」では、生分解性ブラスチックの開発状況や流通状況、見通しが示されており、Vol.5「広がる代替素材開発「海洋生分解性」に挑む」では、企業での海洋で分解するプラスチックの開発状況や国際規格化への取り組みなどが紹介されている。
広く普及したプラスチック製品であるがゆえに影響範囲は広い。海洋で生分解することにより、微細なプラスチック並びに表面積が増加することも考えられることから、プラスチックへの化学物質吸着濃縮を含めて、生態系への影響を検討しながら、社会を変革することが必要と考えられる。
本誌次号(7月号)においても、下記予告のように少し別の角度からプラスチック問題を考える特集を予定している。本誌2019年1月号「海洋プラスチック汚染の現状と取り組み」なども含めて、プラスチック問題を考える参考にしていただきたい。(文責:浦野 真弥)
農林水産省と環境省が我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成29年度)を公表
農林水産省と環境省は、4月14日に表記の推計値を公表した。
この推計によると、平成29年度の日本の食品ロス量は612トンとされ、国民一人あたりでは年間約48kg(およそ一人の年間米消費量に相当)、一日約132g(およそ茶碗一杯分に相当)としている。内訳では事業系が約328トン、家庭系が約284トンと推計されており、やや事業系が多くなっている。
推計排出量の推移を見てみると、食品ロスの推計を開始した平成24年度以降で最少となっているものの、個別の項目を見ると変動も大きく、平成28年度までの平均141トンから14%ほど減少している食品製造業を除けば、そのほかでは確実に減少しているとは言えない結果となっている。
食品ロスについては、平成27年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められている「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットの一つであり、2030年までに世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させることが盛り込まれている。
国内では、第4次循環型社会形成推進基本計画及び食品リサイクル法基本方針(令和元年7月公表)において、家庭系及び事業系の食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減するとの目標が定められている。この目標を達成するためには、関係者それぞれが、さらなる取り組みを進めることが必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
環境省が「SAICM国内実施計画の進捗結果について」の取りまとめを公表
「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)」の目標年である2020年を迎え、2020年10月に開催予定の第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)において、2020年以降の国際的な化学物質管理に係る枠組みが策定される見込みとなっている。環境省は「化学物質と環境に関する政策対話」や意見募集の結果等を踏まえ、SAICM国内実施計画の実施状況を点検し、「SAICM国内実施計画の進捗結果について」を公表した。
今後は取りまとめた結果をSAICMの事務局に提出するとともに、新たな国際枠組みの内容等を踏まえつつ、関係省庁による包括的な化学物質対策の推進に向けて、SAICM国内実施計画に替わる国内計画の検討を行う予定としている。
また、重点検討項目として(1)科学的なリスク評価の推進、(2)ライフサイクル全体のリスクの削減、(3)未解明の問題への対応、(4)安全・安心の一層の推進、(5)国際協力・国際協調の推進を挙げ、さらに、取組状況の総括と今後の課題を示している。
例えば、科学的なリスク評価の推進では、QSAR、トキシコゲノミクス等の新たな安全性評価手法の開発、有害性評価支援システム総合プラットフォームの開発、蓄積性や分解性の予測システムの活用等、反復投与毒性予測システムや生態毒性予測システムの活用等及び高次捕食動物に係る毒性試験の高度化、生態毒性試験困難物質の試験方法、ライフサイクルを考慮したスクリーニング・リスク評価方法、農薬のリスク評価の推進と高度化等が検討されている。(文責:浦野 真弥)
国土交通省が「次期建設リサイクル推進計画に係る提言」を公表
国土交通省は、3月9日に、建設リサイクル推進施策検討小委員会等がとりまとめた「次期建設リサイクル推進計画に係る提言」を公表した。
これまで、わが国では「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」などによって、建設副産物の発生抑制や再資源化が進められてきた。その結果、建設廃棄物は、調査を開始した1995年度時点の約9,900万トンから、2005年度時点で約7,700万トン、2018年度時点で約7,400万トンと分別や削減が進められて減少した。
一方、高度経済成長期に整備された社会資本が老朽化し、本格的な維持管理・更新の時代に突入し、維持管理更新費は2018年度比で10年後に1.2倍、30年後に1.3倍と増大するなど、中長期的に建設業における建設副産物の発生動向も変化していくことが想定されている。
今回の提言では、引き続き、建設副産物の高い再資源化率を維持しながら、社会資本の維持管理更新時代到来等への対応を求めており、中長期的な観点から排出抑制、再資源化施策に資する対策を実施すべきとしている。また、現場での分別により排出量が減少した半面、中間処理での再資源化や縮減が困難となってきている建設混合廃棄物や海外での輸入禁止措置などにより、国内での資源循環体制の構築が必要な廃プラスチックに留意しつつ、ICT技術等を活用しながら生産性を向上させるべきとしている。(文責:浦野 真弥)
厚生労働省が「『作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令案要綱』について諮問と答申がありました」を公表
厚生労働省は、12月25日、厚生労働大臣が労働政策審議会に対し「作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問を行い、この諮問を受け、同日、同審議会安全衛生分科会で審議が行われ、妥当であるとの答申があったことを公表した。
厚生労働省は、この答申を踏まえて、速やかに省令及び関係告示の改正作業を進めるとしているが、現在のところ、省令等の公布は令和2年1月下旬、施行は令和3年4月1日を予定しており、所要の経過措置を設けるとしている。
労働安全衛生法では、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、必要な作業環境測定を行い、その結果の評価に基づいて適切な措置を講ずることを事業者に義務付けている。今回予定されている改正では、指定作業場において作業環境測定を行う際のデザイン及びサンプリングとして、従来のものに加え、作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行うもの(個人サンプリング法)を新たに規定している。
従来、特定の地点での測定が行われていたが、作業者の作業内容や行動、作業技術の相違によって、実際の化学物質暴露量が大きく異なるケースがあることが指摘されていた。
今回、個人サンプリング法が新たに規定されたことで、それらの技術が発展、活用され、より細やかなリスク評価や管理が行われることが期待される。(文責:浦野 真弥)
環境省が「無害化処理認定施設等の処理対象となるPCB廃棄物の拡大に係る関係法令等の改正について」を公表
環境省は、高濃度PCB汚染物の処理期限が迫る中、PCB濃度0.5%〜10%の汚染物の処理体制の構築を目的とし、環境大臣の無害化処理認定施設等の処理対象を拡大するため、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画を変更するとともに、関係法令を改正したことを12月20日に公表した。
基本計画では、PCB濃度0.5%〜10%の可燃性の汚染物等の焼却実証試験の結果を踏まえて無害化処理認定制度の対象とした。これにより、これらの汚染物の処分期限は令和9年3月末となった。
また、PCB廃棄物の発生量、保管量及び処分量の見込みを最新の状況に更新するとともに、新たに発生したPCB濃度0.5%〜10%の可燃性の汚染物等の量を掲載した。さらにPCB含有塗膜について、各省庁、地方公共団体及び民間事業者の保有・管理する施設を対象に実施している調査により、継続的な実態把握に努めるとともに、把握されたPCB含有塗膜は、関係法令に基づき、その濃度に応じた適正な処理を行うものとする旨明記した。
さらに関連法令および告示の改正を行い、新たにPCB濃度10%以下の可燃性の汚染物等を定義するとともに、これらの焼却処理温度を規定した。また、中小企業等の処理費援助等に関する法律等の改正は別途措置されることとなった。
この改正でPCB濃度0.5〜10%の汚染物の処分期限は伸びることになるが、未把握の塗膜等を含めて円滑な処分が望まれる。(文責:浦野 真弥)
内閣府が「環境問題に関する世論調査」の結果について公表
内閣府は本年度の世論調査の一環として実施された標記の世論調査結果を10月25日に公表した。 今回の調査ではプラスチックごみ問題や、生物多様性、動物愛護に関する国民の意識をテーマとしており、これらの問題に対する国民の認識率や年代ごとの傾向などが示されている。
プラスチックごみ問題については、昨今、使い捨てプラスチックの廃止や海洋生物の被害などがニュースになったことを反映してか、幅広い年代で高い関心が持たれており、その内容や対策についても一定の理解がされている結果となっている。ただし、年代別回答では39歳以下とそれ以上で無関心の割合に少し乖離が見られており、若い世代での意識が低めであることが示されている。
生態系サービスを含む生物多様性については、認識率あるいは理解度がやや低く、国の取り組みについてもあまり認知されていない結果となっている。性別や年代別の回答では、男性や若い世代の認識率が高めで、学校や職場で目に触れていることが関係しているように思われる。
環境省では、今回の調査結果を踏まえ、プラスチック資源循環戦略や海洋プラスチックごみ対策アクションプランに基づき、プラスチックごみ対策を着実に進めるとともに、生物多様性国家戦略などに基づき自然共生社会の実現に向けた施策を進めるとしているが、情報発信も様々な形で進めることが期待される。(文責:浦野 真弥)
環境省が「モニタリングサイト1000 第3期とりまとめ報告書概要版」を公表
環境省は、11月12日に同省の生物多様性センターが実施する重要生態系監視地域モニタリング推進事業(モニタリングサイト1000)の5年に1度のとりまとめ報告書概要版を公表した。
モニタリングサイト1000は、我が国を代表する様々な生態系の変化状況をモニタリングし、生物多様性保全施策への活用に資することを目的とした調査で、全国約1,000か所の調査地(モニタリングサイト)において、平成15年度から100年以上を目標に長期継続的に実施されている。調査は、研究者をはじめ、NPO団体や市民調査員など、様々な主体の協力を仰ぎながら行われている。
この報告書概要版は一般向けにわかりやすい形でとりまとめられており、生物多様性の解説に始まり、モニタリングサイト1000の内容と各生態系ごとの調査結果が示されている。
詳細は割愛するが、外来種の影響や変化、明確ではないものもあるが温暖化の影響が疑われる生息域の変化などが起こっていることが示されている。また、東日本大震災などの自然災害の影響についても調査されている。
左記のように生態系に対する国民の関心や理解が高いとは言えない状況にある中で、このような調査を実施すること、その結果をわかりやすい形でとりまとめ、容易にアクセスできる形で公開する意義は大きい。今後は、自然の変化を感じる力がますます必要になるように感じるが、その一助にもなることが期待される。(文責:浦野 真弥)
経済産業省と外務省が東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の現状に関する在京外交団向けの説明会を開催
経済産業省と外務省は、9月4日に標記の説明会を開催した。
我が国では、東日本大震災以降、福島第一原子力発電所の状況等について継続的に在京外交団に対して情報提供を行ってきており、国際原子力機関(IAEA)等の国際会議の機会を通じても迅速かつ積極的な情報発信を行っている。
使用資料は、既に国内に公表されている情報をまとめ直したものとなっているが、廃炉に向けたスケジュールと周辺環境における放射性物質濃度の推移を示し、放流口付近の海域では2012年頃からWHOの飲料水基準を大きく下回っていることや、敷地境界の放射線量が大幅に低下し、安定していることなどを示している。また、汚染水の発生とALPS処理水の状況について説明されており、処理水の保管タンクの容量が2022年夏頃に飽和する見込みが示されている。同時にタンクに保管されている処理水の告示濃度比の総和も示されているが、告示濃度比が1未満の量は18%に過ぎず、82%は再処理が必要な濃度とされている。初期の不調や、設備管理の問題、諸般の外的な要因があったにしても、保管可能容量が飽和に近づくまで再処理の必要な水が蓄積、保管されていった状況と、その複数回にわたる大量の修正や公表経緯には疑問を呈さざるを得ない。
現在、議論となっている海洋放流については、基準以下になったもののみが対象との方針だが、漁業者を含む国民や諸外国への処理水の取り扱いに関する説明は、正確なデータに基づく誠実な対応の継続が求められる。(文責:浦野 真弥)
環境省がPCB廃棄物の焼却実証試験(令和元年6月実施)の実施結果について公表
環境省は、9月17日に関連県市および無害化処理認定施設の協力を得て実施した0.5%以上のPCB廃棄物の焼却実証試験の結果を公表した。
環境省では、平成21年に無害化処理認定制度にPCB廃棄物を加え、5,000mg/kg以下のPCB廃棄物の処理を無害化認定処理施設等で進めてきたが、現在調査を進めているPCB含有塗膜の量が増加する可能性があること、また、最近になって、PCBを使用した感圧複写紙や汚泥の存在が新たに発覚した事例があることが課題になっている。こうした廃棄物の中のPCB濃度0.5%〜10%程度の廃棄物の処理体制の構築に向けて、全国4カ所で実証試験が行われた。
焼却は、燃焼ガスの温度を1,100℃以上に保ちつつ、2秒以上滞留させて行われ、排ガスや焼却後の燃え殻、ばいじん及び排水に含まれるPCB、ダイオキシン類、鉛及びクロムの濃度、施設の敷地境界における大気中のPCB濃度、施設周辺における大気中のPCB及びダイオキシン類濃度が基準値等よりも低いが確認されたことから、周辺環境に影響を及ぼすことなくPCBが安全かつ確実に無害化処理されたとしている。
この焼却実証試験結果を踏まえ、今後、無害化処理認定施設の処理対象の拡大等、制度の見直しが行われる予定となっている。高濃度PCB使用機器の処理は進んでいるが、処理半ばである汚染物や低濃度PCB廃棄物について、合理的な処理が進められることが期待される。(文責:浦野 真弥)
環境省が「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を国連に提出
環境省は、6月26日に標記の長期戦略を国連気候変動枠組条約事務局に提出したことを公表した。
これはパリ協定において策定、通報が要請されている日本の温室効果ガス低排出型への発展のための長期的な戦略であり、6月11日に閣議決定され、その後、英訳を経て、提出された。
長期戦略では、(1)最終到達点として「脱炭素社会」を掲げ、それを野心的に今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年までに80%の温室効果ガスの削減に大胆に取り組むこと、(2) (1)のビジョンの達成に向けて、ビジネス主導の非連続なイノベーションを通じた「環境と成長の好循環」の実現を目指すこと、(3)エネルギー、産業、運輸、地域・くらし等の各分野のビジョンと、それに向けた対策・施策の方向性を示している。加えて、ビジョン実現のためのイノベーションの推進、グリーンファイナンスの推進、ビジネス主導の国際展開、国際協力といった横断的施策等を推進するとしている。
今後の日本の産業の在り方や国民生活に大きく関わることもあり、これに先駆けて実施された意見募集に対しては、880件もの意見が寄せられた。
長期戦略自体は、将来のあるべき姿を描いたものとされ、ビジネス主導の非連続的なイノベーションを含めて達成すると位置づけられているものだが、現時点では目指すべき姿と、直近での取り組みの間に大きな溝が存在しており、多様な選択肢が提示されている段階と感じられる。
今後、2030年に向けた進展を図るためには、定期的な見直しによる具体化と抜本的な施策の実施が求められる。(文責:浦野 真弥)
国連がSDGs報告書(2019)を公表
国連は、7月9日に持続可能な開発目標(SDGs)報告書(2019)を発表した。
この報告書では、気候変動や国家間、国家内の不平等がSDGsの進展を妨げており、過去数十年間の取り組みによって得られた成果を打ち消してしまう恐れがあると警告している。
極度の貧困の削減や予防接種の拡大、子供の死亡率の低下、電気へのアクセスなどの一部の項目で進展が見られたものの、世界的な取り組みは十分に意欲的であるとはいえず、最も苦しい状況にある人々や国が取り残されているとしている。
差し迫った問題として、南アジアやサハラ以南のアフリカで発育不良の子どもが3/4になっている状況や、女性と女児が不平等の壁に直面している状況を挙げ、国家間や国内での不平等に対して注意を払う必要があるとしている。さらに、極度の貧困の中にいる人は1990年の36%から2018年は8.6%に減少したが、世界での取り組みにもかかわらず、その減少率は自然災害に対する脆弱性や武力衝突などによって低下しているとしている。
また、気候変動や生物多様性などの環境関連項目で遅れが目立っているとしている。2018年は記録上4番目に暑い年となり、二酸化炭素の濃度レベルも増加し、海洋の酸性化も産業革命以前と比べて26%高く、このままのペースでは2100年までに100〜150%程度高くなると予測されている。
日本では、企業を中心にSDGsの取り組みが進められているが、パリ協定の長期戦略を含めた国の施策への反映、国民の意識転換や行動転換も強く求められる。(文責:浦野 真弥)
ストックホルム条約、バーゼル条約及びロッテルダム条約締約国会議の結果について
環境省は、4月29日から5月10日にスイスのジュネーブで開催された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」及び「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」の合同締約国会議の結果を5月14日に公表した。
ストックホルム条約については、ジコホル、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質の条約附属書Aへの追加が採択された。加えて、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩及びペルフルオロオクタンスルホニルフルオリド(PFOSF)について、認められる目的及び個別の適用除外の見直しが行われた。さらに、PCB廃棄物の処理の進捗状況の報告と継続した進捗状況のレビューなどが行われた。
バーゼル条約については、同条約の附属書を改正し、汚れたプラスチックごみを条約の規制対象とすること等が決定された。また、海洋プラスチックごみに関するパートナーシップの設立なども決定された。
ロッテルダム条約では、ヘキサブロモシクロドデカン及びホレートの2物質が新たに条約対象物質に追加された。
今回の締約国会議で、昨今、問題が噴出している低品位プラスチック廃棄物が規制対象となった。日本でも、安易なプラスチック利用を改める時期にきているといえよう。(文責:浦野 真弥)
外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果について
環境省は、2017年末からの中国政府において実施されている使用済プラスチック等の輸入禁止措置等の影響について、状況の改善は見られず、処理施設のひっ迫の状況は悪化傾向にあるとの2018年8月のアンケート調査を受け、2019年3月に改めて実施した都道府県等及び産業廃棄物処理事業者に対するアンケート調査結果を5月20日に公表した。
2019年2月末時点で外国政府の輸入規制等の影響による廃プラスチック類の不法投棄は確認されていないが、一部地域において上限超過等の保管基準違反が増加し、一部は改善命令の発出に至っていることなどから、引き続き、廃プラスチック類の適正処理に支障が生じたり、不適正処理事案が発生する懸念があるとされた。
今後は、外国政府の動向も踏まえながら、実態把握及び自治体を含めた情報共有を進め、(1)6月までに策定予定の「プラスチック資源循環戦略」に基づき、プラスチックの資源循環を促進し、(2)速やかに国内資源循環体制を構築すること、(3)域外からの産業廃棄物搬入規制を行っている自治体に対し、搬入規制の廃止、緩和、手続の合理化、迅速化を促すこと、(4)排出事業者に対し、適正な対価の支払いを含めた適正処理の推進について周知するとともに、自治体に対して排出事業者の指導の強化を依頼すること、(5)市町村に対し、ごみ焼却施設等での廃プラスチック類の受入れを積極的に検討するよう依頼するとしている。(文責:浦野 真弥)
中央環境審議会「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第一次答申)」及び意見募集の結果について
環境省は2月7日に標記の答申と意見募集結果を公表した。
平成30年6月15日に農薬取締法の一部を改正する法律が公布され、農薬の動植物に対する影響評価の対象が、従来の水産動植物から、陸域を含む生活環境動植物に拡大された。この規定は平成32年4月1日に施行されるが、施行に先立って評価対象動植物を新たに選定するとともに、毒性試験(試験 生物種の選定を含む)、ばく露評価及びリスク評価の方法を検討し、農薬登録申請者等に対する周知期間を勘案して、これらを早期に示す必要があった。そのような状況を受けて平成31年1月29日に中央環境審議会土壌農薬部会において、標記の第一次答申が取りまとめられた。
答申では、評価対象動植物選定の基本的考え方として、(1)人の生活に密接に関係する動植物を対象とし、国内外の知見を踏まえること、(2)改正法に係る国会の附帯決議にある「リスク評価手法の早急な確立」と「農薬メーカーの負担への配慮」を考慮することとされ、水草及び鳥類を評価対象動植物に加えた。また、野生のハチ類についても早急にリスク評価の方法の検討を進め、必要に応じ、評価対象動植物に加えることとされた。環境省では本答申を踏まえ、生活環境動植物の農薬登録基準に関する告示の改正手続を進めるとしている。当面は水草と鳥類だが、陸域生物に拡大された点は評価できる。(文責:浦野 真弥)
生態毒性予測システム「KATE2017 on NET 正式版」の公開について
環境省と国立研究開発法人国立環境研究所は、1月30日からKATE2017 on NET 正式版の公開を開始した。
KATEは生態毒性QSAR(定量的構造活性相関)モデルの一つで、化学物質の構造式等を入力することにより、魚類急性毒性試験の半数致死濃度、ミジンコ遊泳阻害試験の半数影響濃度等を予測するシステムで、平成23年に「KATE on NET」として公開され利用されてきた。今回公開されたものは、機能を充実させ昨年度から公開している「KATE2017 on NETβ版」の正式版で、「KATE on NET」に搭載されていた魚類及びミジンコの急性毒性予測の機能に加え、藻類に対する毒性や3種の慢性毒性予測の機能を追加し、さらに、QSARモデルの改良及び複数物質の予測機能の追加等が行われている。毒性の予測は実測のlogP(オクタノール水分配係数の常用対数)と毒性値の関係に基づくもので、物質の部分的構造から、魚類、ミジンコ、藻類に対する毒性を推定している。
このシステムを用いて予測された毒性値は、化学物質の生態毒性影響の程度についての参考値で、化審法に基づく届出に必要な生態毒性試験結果として用いることなどはできない。しかし、新規化学物質の生態毒性予測や工場排水中に含まれる化学物質の環境影響の大小を見積もるなど、生態毒性情報が少ない化学物質の影響を考慮する上での有効なツールになりうるので、今後も精度向上や使い勝手の向上などが行われることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)等の結果について
環境省などは、12月17日に標記の結果を公表した(環境省、国立環境研究所)。
COP24および関連会合は、ポーランド・カトヴィツェで12月2日から15日にかけて開催され、日本からは環境大臣、気候変動交渉担当政府代表および7省の関係者が出席した。
COP24では、2020年以降のパリ協定の本格運用に向けて、パリ協定の実施指針採択を目指して議論が行われ、一部を除いて合意がなされた。実施指針では、緩和、適応、透明性枠組み、市場メカニズム、資金等について詳細に規定されており、この採択により、2020年からパリ協定が本格的に動き出すことになった。
また、気候変動対策にかかる資金の支援やタラノア対話の政治フェーズ等が実施された。
日本は、(i)パリ協定の実施指針の採択、(ii)タラノア対話への貢献、(iii)ハイレベル・イベント等を通じた日本の取り組みの発信の3点を主な目的として臨み、おおむね達成できたと評価している。
閣僚級会合では、来年のG20議長国として、「環境と成長の好循環」を実現する世界のモデルとなるべく取り組みを進めることなど、環境大臣による気候変動対策への強いメッセージを発信することができたとしている。
COPなどで議論されている気候変動対策と身近な生活環境で実感する変化には、まだまだ大きなギャップを感じている。世界のモデルとなるために、官民協同で実体のある気候変動対策を推進することが期待される。(文責:浦野 真弥)
公共用水域水質環境基準、地下水環境基準、土壌環境基準及び排水基準等に係る告示の一部改正案に対する意見の募集について 環境省は、1月21日から標記の意見募集を開始した。
公共用水域水質環境基準測定方法等に引用している日本工業規格(JIS)K0102(工場排水試験方法)及びK0170(流れ分析法による水質試験方法)は、平成31年度改正が予定され、分析技術の向上等に対応した分析方法が検討されている。これを受けて、環境省では同規格の改正内容のうち、公定分析法への導入が適当であるものを公定分析法に適用するための告示改正を検討している。
この改正案では、ふっ素、アルキル水銀、全シアン、各種窒素化合物、全りん、フェノール類、六価クロムについて、概要が示されている。
具体的には、アルキル水銀分析でのベンゼン抽出からトルエン抽出への転換、アンモニア分析での「サリチル酸-インドフェノール青吸光光度法」の採用、フェノール類分析での「くえん酸蒸留4-アミノアンチピリン発色CFA法」の採用など、有害物質を代替する方法への転換や新たな方法の取り込みが行われている。なお、少量の試料で蒸留を行う方法や分解前処理を行う方法は、公定法としての検証が未了のため、見送ることとなっている。
基本的には、有害性物質の代替、薬品使用量の削減、省エネルギーに向かうべきであり、今回、公定法への取り込みが見送られる技術、あるいはこのような方向の新たな技術についても、積極的に実証して公定法へ取り込むことが期待される。(文責:浦野 真弥)
厚労省が「個人サンプラーを活用した作業環境管理のための専門家検討会」報告書を公表
厚生労働省は11月6日に標記の報告書を公表した。
労働安全衛生法第65条に基づき、事業者には、一定の作業場において、化学物質などの濃度を測定・評価するための作業環境測定(A・B測定)の実施が義務づけられている。標記の報告書では、「作業者の胸元(呼吸域)に化学物質などの捕集用機器を装着し、1日の作業時間中(原則8時間)、呼吸域の空気中濃度を測定する個人サンプラーによる測定方法は、作業環境測定に加えて、リスクアセスメントも同時に行うことができるため、作業環境測定の一つの方法として広範な作業場に導入することが望ましい」とされた。しかし、個人サンプラーによる測定を実施できる作業環境測定士の数が十分でないため、測定者の養成期間などを考慮して、まずは一部の作業について、個人サンプラーによる測定の方法を先行導入し、A・B測定と個人サンプラーによる測定のいずれかを選択できるようにすることとされた。
厚生労働省は、この報告書での提言を受け、個人サンプラーによる測定の先行導入作業に対する具体的な測定・評価方法や、この測定を実施できる人材の養成方法などの詳細について検討を行い、法令改正の検討などの準備を進めるとしている。
化学物質による労働災害を低減するためにも、より現実的な曝露を把握できる個人サンプラーによる方法が整備・活用されることが望まれる。また、同時にリスクアセスメントで活用しやすい有害性情報の整備も望まれる。(文責:浦野 真弥)
経産省が東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜4号機の廃炉に向けた取組について国際原子力機関(IAEA)によるレビューを受け、サマリーレポートを受領したことを公表
経済産業省は、11月13日に標記のレビュー結果を公表した。
福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップに基づき進めている廃炉に向けた取り組みについて、11月5日〜13日にIAEA調査団を受け入れ、第四回目の国際的なレビューを受けた。
サマリーレポートには、IAEA調査団による17の評価できる事項と21の助言が示されている。日本が緊急時対応の状況から安定的な状態へ向けて前進し、大きな進展を遂げたことを評価しつつ、安全な廃炉・放射性廃棄物管理に係る戦略の実行と強化を勧めるとともに、水の管理がプロジェクト全体の持続可能性にとって決定的に重要であると指摘した。また、廃炉に伴って発生する廃棄物の問題やステークホルダーとの対話継続、適切なナレッジマネジメントシステム、広汎な国際協力の実施など、改善が可能な個所について助言を提示した。なお、IAEA調査団は、当該報告書の最終版を2019年1月末までに日本に発出する計画となっている。
福島第一原子力発電所の廃炉に際しては、さまざまな課題に対して技術的に対応していくと同時に、廃炉に伴う周辺事項を含めて、知恵と知見の集積の観点から、今後も国際社会と協力していくことが求められる。(文責:浦野 真弥)
食品中のピロリジジンアルカロイド類の含有実態調査結果について
農林水産省は、8月10日および8月31日に標記の調査結果を公表した。
ピロリジジンアルカロイド類は、キク科、ムラサキ科等の一部の植物に含まれる天然毒素で、海外では長期摂取による重篤な健康被害が多数報告されている。国内においては健康被害の報告はなされていないが、食品中の含有量等に関する情報が不足しているため農林水産省が実態を調査した。
今回の報告では、ピロリジジンアルカロイド類を含有する植物の花の蜜に含まれる可能性があることから、はちみつと、欧州で茶からの検出事例があることから、国内で流通しているチャノキ由来の緑茶、含有報告があることから、ふき、ふきのとうについての結果が示されている。
それぞれ知見に基づいて測定対象とした物質の種類や数は異なるが、はちみつ(120点)、および緑茶(60点)についての測定濃度は、定量下限未満、もしくはその付近の低い濃度であった。一方、ふき(91点)、ふきのとう(62点)については、ほとんどから検出され、ふきよりもふきのとうの方が含有濃度が高いことが示されたが、あく抜きによって1割から4割減少すること、これまでの食経験から、しっかりとあく抜きをするか、大量に食べたり、食べ続けたりしない限り、安全に食べられるとしている。まだ食品中の含有量に関する知見も少ないことから、農林水産省では、今後も他の食材での調査を検討するとしており、適切な情報発信が望まれる。(文責:浦野 真弥)
土壌の汚染に係わる環境基準についての一部を改正する告示の公布および意見募集の結果について
環境省は、9月18日に標記の告示および意見募集の結果を公表した。
これは平成21年から26年にかけて、1,4-ジオキサン、クロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン及び1,1-ジクロロエチレン、カドミウム、トリクロロエチレンについて、公共用水域の水質汚濁に係る環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準の項目の追加及び基準値の見直しが行われたことをうけて、土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年8月環境庁告示第46号)の土壌環境基準についても改正することとなった。
また、平成28年12月に中央環境審議会から環境大臣に答申された「今後の土壌汚染対策の在り方について(第1次答申)」において、溶出試験方法について、分析コスト・時間の増大につながらないよう配慮しつつ、試験期間や分析者ごとの分析結果の差を抑制する方向で、土壌の汚染状態をより適切に分析できるよう手順の明確化を進めるべきとされたことから、同告示の検液の作成方法について見直しを行うものとなっている。
特に検液の作成方法については、既知の問題点を踏まえて、風乾環境の温度上限の規定、粉砕の程度、振とうの方向、遠心分離条件の変更、ろ紙の直径やろ紙交換のタイミングを規定するなどの大幅な修正がなされている。
来年の4月1日から施行されるため、関係者は注意が必要と思われる。(文責:浦野 真弥)
タラノア対話ポータルサイト開設の公表
環境省は、6月1日に世界全体の温室効果ガス排出削減の取組状況を確認して更なる取組意欲の向上を目指す「タラノア対話」に積極的に参加するため、日本版タラノア対話の特設ページ、FacebookページおよびTwitterアカウントを立ち上げたことを公表した。
タラノアとは、気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)の議長国であるフィジーの言葉で、「包摂的、参加型、透明な対話プロセス」を意味する。タラノア対話では、政府だけでなく、企業や自治体、研究機関、NGO等のあらゆる主体の参加が推奨されており、(1)我々はどこにいるのか、(2)どこへ行きたいのか、(3)どうやって行くのかの三つの論点についての意見を取りまとめ、世界全体の温室効果ガス排出削減の取組状況を確認することとしている。
日本版タラノア対話の特設ページでは、企業、自治体、NGOなどの国内の様々な主体から提供された優れた事例や知見を掲載し、取組意欲の向上や優良事例の横展開につなげるとしている。また、情報の一部は日本全体の意見として気候変動枠組条約事務局に提出することを目指している。
優良事例や知見の集積と共有については、2020年からのパリ協定に向けて大きな期待が寄せられているが、今のところ共有範囲は狭いように感じられる。今回、開設されたポータルサイトやSNSアカウントが今後さらに活用されることが期待される。(文責:浦野 真弥)
エコチル調査での血中重金属と早産の関係に関する研究成果の発表
国立環境研究所は、7月4日に子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の拠点の一つである福岡ユニットセンター(産業医科大学)が中心となって取りまとめた標記の研究成果論文がEnvironmental Research に掲載されたことを発表した。
エコチル調査は、2010年度に開始された環境が子どもたちに与える影響を明らかにするための大規模かつ長期にわたる疫学調査である。今回の調査では、2万人のデータの中から有効な14,847名の単胎妊婦の出生情報と血中重金属濃度データ(カドミウム、鉛、水銀、セレン、マンガン)を用いて解析が行われた。
解析の結果として血中カドミウム濃度が高いと早期早産(22〜33週での出産)の頻度が上がることが示され、その他の金属類では早期早産、後期早産(34〜36週)との関連は見られなかったとしている。なお、このカドミウムの由来については本研究では明らかになっていないため、別途、検討が必要とされている。また、この解析結果は必ずしも確定的なものではなく、今後、作用機序に関する研究の推進や10万人規模のデータで再検証することなどが必要であるとしている。
多様な環境要因が存在する中から、子どもの健康に影響与える因子を見つけ出すことは容易ではないが、このような類を見ない大規模な研究の成果が子どもたちの健康を守る情報として活用されていくことが望まれる。(文責:浦野 真弥)
平成29年度低炭素型行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業の結果について(速報)
環境省は、4月24日に標記の事業結果の速報を公表した。
近年欧米では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)等の行動科学の理論に基づくアプローチにより、国民一人ひとりの行動変容を直接促し、ライフスタイルの変革を創出する取組が着目されている。これは「ナッジ・ユニット」等と呼ばれる政府関連機関の下で行われ、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法である。こうした取組が我が国においても、とりわけ持続的・中長期的に、適用可能であるかを検証するため、環境省では日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足し、標記の事業を行っている。
家庭部門の取組では、行動科学の知見に基づく省エネアドバイス等を記載したレポートを一般世帯に送付して、その後の電気やガスの使用量にどのような効果が表れるかを検証した結果、レポートの送付開始後2か月間で、地域によって1%から2%強の省エネ・省CO2効果が統計的に有意に確認された。また、スマホアプリを通じて使用量の見える化をしたり、使用量の変化に関するアラートメッセージを送ったりすること等により、3%強の省エネ・省CO2効果が統計的に有意に確認された。
運輸部門の取組では、加速度、速度、燃料消費量等の実運転データを点数化し、運転終了後にスマホアプリを通じてドライバーにフィードバックすることにより、その後の運転でどのような効果が表れるかを検証した結果、行動の面では、急ブレーキや急発進が抑制され、燃費の面では1割程度改善する傾向が認められた。
レポートの効果が安定するには一定期間が必要と見込まれることから、平成30年度も引き続き実証を継続している。行動科学の知見に基づく取組の効果が複数年にわたりリバウンドなく持続するか、効果を持続させ、また、さらに高めるにはどのようにすれば良いか等を中長期的に実証し、一人ひとりに配慮した無理のない、コスト効率的な行動変容のモデルの確立を目指している。
省エネ・省CO2に関しては、今後より高いレベルで進めていくことが求められているので、このような従来とは異なるアプローチによる成果と社会への反映にも期待したい。(文責:浦野 真弥)
農薬取締法の一部を改正する法律案を閣議決定
農林水産省および環境省は、3月9日に「農薬取締法の一部を改正する法律案」が閣議決定されたことを公表した。本法律案は現在開会中の第196回国会(通常国会)に提出される予定となっている。
本改正案は、農薬の安全性の一層の向上を図るため、(1)安全性等の再評価を行う制度を導入するとともに、(2)農薬の登録事項の見直し等の措置を講じるものである。
(1)再評価制度の導入では、同一の有効成分を含む農薬について、一括して定期的に最新の科学的根拠に照らして安全性等の再評価を行うこととしている。また、農薬製造者から毎年報告を求めること等で、必要な場合には、随時登録の見直しを行い、農薬の安全性の一層の向上を図るものとなっている。
(2)農薬の登録審査の見直しでは、@農薬の安全性に関する審査の充実として、ア.農薬使用者に対する影響評価の充実、イ.動植物に対する影響評価の充実、ウ.農薬原体(農薬の主たる原料)が含有する成分(有効成分及び不純物)の評価の導入が行われる。Aジェネリック農薬の申請の簡素化では、ジェネリック農薬の登録申請において、先発農薬と農薬原体の成分・安全性が同等であれば提出すべき試験データの一部を免除できることとしている。
常に最新の科学的情報を参照しながら、生産性、作業者安全、環境配慮の観点から、合理化されることは望ましいことと考えるが、安全性が確保された上で効果的な農薬の利用が促進されることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案を閣議決定
経済産業省は、3月9日に標記の改正法案が閣議決定されたことを公表した。本法律案は現在開会中の第196回国会に提出される予定となっている。
エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)では、産業・業務・運輸(貨物輸送事業者、荷主等)を対象に省エネ取組の判断基準を示し、一定規模以上の事業者にはエネルギー使用の状況を報告させ、必要に応じ、指導等を実施している。
現状で企業単位の省エネは相当進展したものの、効率(原単位)については改善が足踏みとなっている。また、従来は一方に不利な形になる場合も、企業間の連携による省エネ量を分配して報告できる形に変更し、企業間連携を促している。
また、ネット通販の拡大で小口配送・再配達が増加しており、輸送の効率化が急務となっている。工場から工場への配送を念頭に、貨物の所有者を荷主としている現行制度では、ネット小売り業者の一部が捕捉されなかった。本改正案では、貨物の所有権を問わず、契約等で輸送の方法を決定する者を荷主と定義し、ネット小売業者にも取り組みを促すこととしている。
また、企業間連携による省エネやネット小売業界の優良取組事例を公表し、他の企業の取り組みを促すとしている。合わせて荷受け側も準荷主として定め、貨物輸送の省エネへの協力求めている。
今後も各所での連携と省エネ努力の継続が必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
経済産業省が「水素基本戦略」を公表
経済産業省は、平成29年12月26日に開催された第2回再生可能エネルギー・水素等閣僚会議において、世界に先駆けて水素社会を実現するための「水素基本戦略」が決定されたことを公表した。
水素基本戦略は、我が国のエネルギー自給率の低さや輸入先の偏り、パリ協定を踏まえた温室効果ガスの削減を背景として、2050年を視野に入れた将来目指すべきビジョンであると同時に、その実現に向けた2030年までの行動計画とされている。
この基本戦略では、水素のコストをガソリンやLNG等の従来エネルギーと同等程度にすることを目標に掲げ、その実現に向け、水素の生産から利用まで、各省にまたがる政策群を共通目標のもとに統合している。
具体的には、低コストな海外未利用エネルギーの利用と二酸化炭素回収貯留(CCS)の組み合わせ、国内再生可能エネルギーの導入拡大と、これを活用した水素製造技術の開発と低コスト化、電力分野やモビリティでの社会利用、商用規模の国際的なサプライチェーン構築などを2020年から2030年頃の目標として挙げている。また、褐炭とCCSの組み合わせを将来的な軸に据え、日本が低炭素化で世界をリードするとしている。
要素技術開発から実用化技術、海外を含めたサプライチェーン構築など広範囲に影響が及ぶことが考えられると同時に、将来的な日本の立ち位置にも関わると思われることから、関係各所の連携のもと、スピード感を持って進められることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
環境省が国内資源循環確保に向けたプラスチックリサイクル体制整備の緊急支援について公表
環境省は、11月24日に標記の緊急支援について公表した。
昨年7月18日に中国政府が、世界貿易機関(WTO)に対して、危険物や汚染物の混入が多かった生活由来の廃プラスチックの輸入を2017年12月から禁止することを表明した。これにより、これまで資源として我が国から中国に輸出されていた廃プラスチックを国内で処理せざるを得なくなると考えられた。これを受けて、環境省は国内の資源循環に向けてプラスチックリサイクル体制の構築を支援すべく「省CO2型リサイクル高度化設備導入促進事業」の第3次公募を行った。これは、今後の資源循環への懸念と示唆を与えている。
なお、今回の中国政府の輸入禁止は、一般廃棄物のプラスチックのほか、紙、製鉄の鉱さい、繊維等も含まれている。
日本を含めて、先進国の多くが廃棄物資源を中国をはじめとしたアジア諸国等に輸出してきたため、今回の措置は、世界の廃棄物由来原料のフローや処理コストに大きく影響すると推定される。今後は、これまで以上に資源の質や現地環境に配慮しなければならないことを突きつけられたといえ、類似の事案が将来再び発生するリスクも抱えている。単純にコスト面から輸出を考えるのではなく、国内における資源・エネルギーの確保や温暖化対策など、関連する事項を総合的に判断して対応することが求められていると考えられる。(文責:浦野 真弥)
環境省が「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針」について公表
環境省は、10月2日に標記の中央環境審議会(中環審)具申およびパブリックコメントの結果を公表した。
循環型社会形成推進基本法に基づき、循環型社会形成推進基本計画は、おおむね5年ごとに見直しを行うとされていることを受け、中環審循環型社会部会において審議が行われ、標記の指針が中央環境審議会会長から環境大臣へ具申された。
この具申では、「日本の循環型社会形成に向けて中長期的な方向性を設定し、そこからバックキャスティング的に検討し、下記の取組を戦略的に進める必要がある。」とされた。具体的な取組として、1.低炭素社会、自然共生社会など持続可能な社会づくりとの統合的取組、2.多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化、3.ライフサイクル全体での徹底的な資源循環、4.適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進、5.万全な災害廃棄物処理体制の構築、6.適正処理の更なる推進と環境再生、7.循環分野における技術開発、人材育成、情報発信等、8.指標・数値目標に基づく評価・点検が挙げられ、それぞれの方向性が示されている。
今後、この意見具申に即して、中央環境審議会循環型社会部会において、次期循環型社会形成推進基本計画の策定に向けた審議が進められていくと考えられるが、内容が広範囲に及び、また社会制度の変革にも係わることから、具体的な計画についても注視していく必要があろう。(文責:浦野 真弥)
環境省と経済産業省が残留性有機汚染物質検討委員会第13回会合の結果について公表
環境省と経済産業省は、10月24日に標記の結果を公表した。
ストックホルム条約(POPs条約)に関する規制対象物質について検討を行う「残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)」の第13回会合がイタリアのローマで開催された。
この会合では、ジコホルについて、条約上の廃絶対象物質(附属書A)への追加を締約国会議に勧告することが決定され、また、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質について、POPs条約上の位置付け(製造・使用等の廃絶若しくは制限、並びに意図的でない生成)及び適用除外について、更なる情報収集を行い、引き続き検討することが決定された。
さらに、新たにノルウェーから提案されたペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)とその塩及びPFHxS関連物質(主用途:フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤等)については、附属書Dのスクリーニング基準を満たすとの結論に達し、リスクプロファイル案を作成する段階に進めることが決定された。また、その他の検討として、PFOSについて、適用除外が引き続き必要であるかを2019年の4月末から5月初めにジュネーブで開催予定の第9回締約国会議(COP9)で評価するため、POPRC13で具体的な作業内容とスケジュールが決定された。
日本でPFOAやPFHxSとそれらの関連物質が使用された製品の調査と調査結果の公表が望まれる。(文責:浦野 真弥)
環境省が2014年度及び2015年度の地球温暖化対策及び施策の進捗状況について公表
環境省は、9月4日に標記の進捗状況を公表した。
平成25年に定められた「当面の地球温暖化対策に関する方針」において、政府は地方公共団体、事業者及び国民の取組状況を踏まえ、京都議定書目標達成計画に掲げられたものと同等以上の取組を推進することを求め、各取組の加速を図ることとされている。この方針に基づき、地球温暖化対策計画(平成28年閣議決定)に掲げられた対策・施策を対象として点検が行われた。
これによると、2015年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、二酸化炭素換算で約13億2,500万トン(2013年度比で5.9%減、2005年度比で5.2%減)であった。減少した要因としては、省エネ、冷夏・暖冬等による電力消費量の減少や電力排出原単位の改善(再生可能エネルギーの導入拡大や原発の再稼働等)に伴う電力由来のCO2排出量の減少などが挙げられている。
また、2015年度に実績が目標水準を上回った業種は全114業種中37業種、実績は目標水準を下回るが基準年度比/BAU(無対策)目標比で削減できた業種は59業種となっており、全体的には2030年目標に向けて、一定の進捗があった。
一方、部門別の2030年度目標と比較すると、業務その他部門、家庭部門のエネルギー起源二酸化炭素、非エネルギー起源二酸化炭素、代替フロン等4ガスで課題があることが示されている。しかし、これらの部門内でも業種あるいはガスごとに増減程度が大きく異なっており、今後も状況に合わせた推進対策が望まれる。(文責:浦野 真弥)
環境省が平成28年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について公表
環境省は、8月31日に標記の報告書を公表した。
この報告書によると、地球規模のオゾン全量は、1990年代後半からはわずかな増加傾向がみられるものの、1970年代より少ない状態が続いている。
日本上空のオゾン全量は、札幌とつくばでは主に1980年代から1990年代半ばまで減少傾向が表れ、その後、1990年代後半以降には各地点とも増加傾向となっていたが、2016年は近年の増加傾向と異なり、4地点全てで大きく減少した。
オゾン層破壊物質等の大気中濃度について、川崎市内で連続測定したCFCは、次第に変動幅が小さくなるとともに、北海道における大気中濃度とほとんど変わらなくなってきている。変動幅の縮小や濃度の低下には、日本における生産の全廃および排出抑制などが進んだ結果が反映されていると考えられている。一方で、HCFCおよびHFCは、近年やや放出量が減少する傾向を示しているものの、依然として頻繁に高い濃度で検出されている。
7月21日に環境省が公表した平成28年度のフロン類の再生量等及び破壊量等の集計結果によると、再生量は合計約1,248トン(前年比29.4%増)、破壊量は合計約4,784トン(前年比0.7%減)と、再生量の増加傾向が見られている。昨年のモントリオール議定書改正でHFCが新たな生産規制対象に追加されたこともあり、取り扱い量が変化することが考えられ、確実な回収や再生、漏洩防止が求められている。(文責:浦野 真弥)
環境省がG7ボローニャ環境大臣会合結果を公表
環境省は、6月13日に標記の会合結果を公表した。
米国がパリ協定の離脱方針を表明する中、7ヶ国が合意したコミュニケを採択し、G7の一体感が示された。
コミュニケは、(1)持続可能な開発のための2030アジェンダ、(2)気候変動、(3)持続可能性に資するファイナンス、(4)資源効率性、3R、循環経済及び持続可能な物質管理、(5)海洋ごみ、(6)多国間開発銀行(MDBs)と2030アジェンダ及びパリ協定の実施支援、(7)環境財政改革と持続可能な開発、(8)環境政策と雇用、(9)アフリカに関する内容であった。
(2)気候変動に関しては、米国以外の環境大臣、環境及び気候担当の欧州委員がパリ協定を迅速に、かつ効果的に実施するという、強固なコミットメントを再確認した。米国は、強い経済と良好な環境の両方を確保するという国内の優先順位と整合する形で、重要な国際的なパートナーと引き続き関わっていくとして、コミュニケの気候及びMDBsに関する部分には加わらないとした。また、(4)資源効率性・3Rの分野では、富山物質循環フレームワーク等の成果を踏まえた「ボローニャ・5ヶ年ロードマップ」を採択した。
米国のパリ協定離脱表明は大きなインパクトであったが、長期的な視点から関係各国が協調を強く表明したことに意味があると考えられる。一方、出遅れた日本に、どのような貢献ができ、今後、どのような立場を築いていくのか注目される。(文責:浦野 真弥)
環境省が平成29年度版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書を公表
環境省は、6月6日に平成29年度版循環型社会白書・生物多様性白書が閣議決定され、国会に提出されたことを報告している。
持続可能な開発目標(SDGs)の採択やパリ協定の発効等、国際社会が持続可能な社会の実現に向けて動き出していることを踏まえて、平成29年度版白書では、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」をテーマとしている。
総合施策に係わる第一部は、「第1章 地球環境の限界と持続可能な開発目標(SDGs)」、「第2章 パリ協定を踏まえて加速する気候変動対策」、「第3章 我が国における環境・経済・社会の諸課題の同時解決」、「第4章 東日本大震災及び平成28年熊本地震からの復興と環境回復の取組」で構成されており、第1章から第3章では、これらの背景となる状況や具体的な目標と課題などに関する国内外の動向とともに、SDGsやパリ協定の目標達成の鍵となる環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた我が国の方向性や取組事例等を紹介している。
率直な印象として、SDGsおよびパリ協定に関して、かなり強い国際協調の圧力と我が国の意志が感じられる。同時にこれらへの対策が広範囲に亘ることを踏まえて、我が国固有の状況や課題を同時に視野に入れた方向性が検討されている。包括的な対応が不得手と感じられる場面が多い日本にとって、このようなゴールを設定した対策は、環境行政の転換期になることとして注目される。(文責:浦野 真弥)
建築物等の解体等工事における石綿の飛散防止対策に係わるリスクコミュニケーションガイドラインについての公表等
環境省は4月28日に標記のガイドラインを公表し、「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」の改訂に関する意見募集を開始した。
建築物等の解体等工事に伴う石綿(アスベスト)の飛散は、社会的に強い関心が寄せられており、周辺住民の不安を解消し、より安全な解体等工事を進めるために、周辺住民等との間の円滑なリスクコミュニケーションの重要性・必要性が高まっていたため、環境省は検討委員会を設置し、建築物等の解体等工事の発注者及び自主施工者に向けたガイドラインをとりまとめた。このガイドラインは、解体等工事における石綿飛散防止対策に関するリスクコミュニケーションの基本的な考え方や手順をとりまとめたもので、具体的な事例も多く記載されている。
また、災害時においては、建物が倒壊・損壊して外部に露出することや、多数の被災建築物等の解体・補修、大量の廃棄物の処理に伴う石綿の飛散が懸念される。この災害時の石綿飛散防止対策について、大防法の改正や東日本大震災の状況を踏まえて、平成19年8月作成のマニュアルが改訂された。この改訂案では、平時の準備、応急対応、津波等により発生した混合廃棄物での留意事項などが追加されている。
リスクコミュニケーションによって周辺住民が安心を得るため、また災害時においては作業者や住民の健康被害を避けるために、これらが有効に活用されることが期待される。(文責:浦野 真弥)
ストックホルム条約、バーゼル条約、及びロッテルダム条約の締約国会議の結果が公表
本年4月24日(月)〜5月5日(金)にスイスジュネーブにおいて開催された化学物質・廃棄物関連3条約の締約国会議の結果が5月9日に公表された。
ストックホルム条約については、条約上の規制対象物質として新たにデカブロモジフェニルエーテル(デカBDE)、短鎖塩素化パラフィン(SCCP)が廃絶の対象として追加され、ヘキサクロロブタジエン(HCBD)が非意図的生成の削減の対象に追加されたことから、今後、国内でこれを担保するための所要の措置を講じる予定とされた。
バーゼル条約については、電気電子機器廃棄物(E-waste)の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関する技術ガイドラインについて検討を行う専門家作業グループの設置が決定されるとともに、我が国がリード国となって改定を進めてきたPCBs等廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインの改訂版が採択された。
ロッテルダム条約では、カルボフラン、短鎖塩素化パラフィン、トリブチルスズ化合物、トリクロルホンの計4物質群が対象物質に追加された。
また、条約ごとに技術的な議題などについて議論が行われた他、3条約の共通の課題である途上国及び経済移行国への技術支援、資金メカニズム、国際協力と協調等について合同で議論が行われた。
特に電気電子機器廃棄物等の有効利用に関しては、排出者として、また情報や技術の保有者として、我が国がアジア地域で大きな役割を果たすことが期待される。(文責:浦野 真弥)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案を閣議決定
標記の法律の一部を改正する法律案が3月10日に閣議決定され、第193回国会に提出される予定となっている。
食品廃棄物の不正転売事案および鉛等の有害物質を含む電気電子機器等のスクラップ(雑品スクラップ)等の破砕や保管での火災の発生や有害物質の漏出等の問題が生じており、対応の強化が必要となっている。
標記の法律案は、業の許可を取り消された者等が廃棄物の処理を終了していない場合に、都道府県知事等が必要な措置を講ずることを命ずることができることとし、当該事業者から排出事業者に対する通知を義務付けることとしている。また、特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者に、電子マニフェストの使用を義務付け、虚偽記載等に関する罰則を強化するものとなっている。さらに、雑品スクラップ等の有害な特性を有する使用済みの機器の保管又は処分を業として行う者に対しては、都道府県知事への届出、処理基準の遵守等の義務付け、処理基準違反があった場合等における命令等の措置の追加等を講ずるものとなっている。その他、親子会社が廃棄物処理業の許可を受けないで、相互に親子会社間で産業廃棄物の処理を行うことができることとする内容も含まれている。
雑品スクラップを含めて規制が強化されている点は好ましい。電子マニフェスト義務化については、その活用の在り方についても議論がなされる時期にあると考えられる。(文責:浦野 真弥)
特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の一部を改正する法律案を閣議決定
3月10日に標記の法律案が閣議決定され、第193回国会に提出される予定となっている。
この法律はバーゼル条約を担保するための国内法であるが、法制定から約25年が経過し、近年の資源循環の国際取引の増大に伴い発生した課題に対応する必要が生じてきた。この法律案では以下のような改正がなされている。
(1)「特定有害廃棄物等」の範囲の見直しとして、@輸出先国において条約上の有害廃棄物とされている物を、我が国においても特定有害廃棄物等として、輸出承認を要件化し、規制対象物を法的に明確化する。A途上国からのリサイクル等に適した廃電子基板等の輸入について、輸入承認を不要とするよう、規制対象物の範囲を見直す。
(2)特定有害廃棄物等の輸出に係る規制の適正化として、輸出先の環境汚染防止措置について環境大臣が確認する事項を明確化する。
(3)特定有害廃棄物等の輸入に係る認定制度の創設・輸入手続緩和として、輸入事業者及び再生利用等事業者の認定制度を創設し、認定輸入事業者が、認定再生利用等事業者による再生利用等のために特定有害廃棄物等の輸入を行う際の輸入承認を不要とする。
国際的に資源の獲得競争が起こっている状況に即しており、環境汚染を引き起こす可能性の低い場合の措置であるが、有用物については左記のような事案もあることから、継続的な状況の確認も必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
「今後の化学物質対策の在り方について(案)」に対する意見募集について
環境省は1月5日から2月3日まで標記の案に対する意見募集を行っている。
化審法については、平成23年4月の改正法の全面施行から5年が経過したことから、産構審製造産業分科会化学物質政策小委員会制度構築WG及び中環審環境保健部会化学物質対策小委員会において、緊急性の高い項目について検討がなされ、標記の案がとりまとめられた。
一つは、少量新規化学物質確認制度及び低生産量新規化学物質確認制度における全国単位の製造・輸入数量の上限見直しについてである。近年、我が国の化学産業が少量多品種に移行していることを受け、同一化学物質について、複数事業者から届出・申出がなされるケースが増加している。このため、毒性審査が不要となる低生産量新規化学物質認定制度が適用できる全国合計の製造・輸入量10トンが制約となり、個社の製造・輸入量が 1トン以下であっても制約を受けることが考えられる。そこで、上限値を製造・輸入予定量から環境排出量に変更することを検討するとしている。
もう一つは、少量であっても毒性が非常に強い新規化学物質について、現在の制度では第二種特定化学物質にも該当せず、環境排出量が非常に小さいために優先評価化学物質にも指定されない場合があることを踏まえ、このような物質について、情報伝達の努力義務、国による指導及び助言、取り扱い状況の報告要請などが提案されている。
環境排出量は排出係数を用いて安全側で評価することを求めているが、この根拠についての情報公開も重要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
「今後の土壌汚染対策の在り方について(第一次答申案)」に関する意見募集の結果及び環境大臣への答申について
環境省は昨年12月12日に標記の意見募集結果および第一次答申を公表した。
答申では、平成21年の土壌汚染対策法の改正以降の状況や課題を踏まえた今後の在り方として、「土壌汚染調査及び区域指定」について、一時的免除中や施設操業中の事業場での土地の形質変更や搬出の規制などについて方向を示している。さらに、一定規模以上の土地の形質変更の際の土壌汚染状況調査に関する手続きの迅速化、届出対象範囲と調査対象深度の適正化、特定有害物質が地下水に到達しうる範囲の設定、飲用井戸の把握等や、臨海部の工業専用地域の特例として新区域を設定することなどが示されている。
また、「要措置区域等における対策及び汚染土壌処理施設における処理」について、措置内容の確認が行われていないケースへの対応や区域指定解除情報の記録、要措置区域内の非汚染土壌を搬出するための認定調査の合理化、自然由来・埋立材由来の基準不適合土壌の取り扱いなどが示されている。
全体的には過剰な対応を避け、リスクに応じた管理を促すと共に、不適切な扱い・措置等による汚染拡大を防止する内容となっており、科学的な視点からは適切に思われるが、リスクの評価方法や評価結果については、今後も汚染地の地方自治体や周辺住民の理解を求めていく必要があると思われる。(文責:浦野 真弥)
PCB廃棄物の早期処理に係わる広報について−処理の期限まで最短で500日−
環境省は11月15日に標記の広報内容等について公表した。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物については、法律で定められた期限内に処理することが求められている。特に高濃度PCB廃棄物は、地域ごとに異なる計画的処理完了期限が定められており、最も早い地域では平成29年度末までにJESCOに処分委託することが求められている。
環境省は、11月16日が期限まで500日となることを一つの機会と捉え、関係省庁及び都道府県市のSNSなどの広報ツールを活用し、高濃度PCB廃棄物の一刻も早い処理の達成に向けた一斉広報を展開するとしている。
具体的な取り組みとして、(1)PCB早期処理情報サイトの開設、(2)PCB廃棄物の早期処理に向けたパンフレット[PDF]の改訂、(3)関係省庁および都道府県市によるPCB廃棄物の早期処理に係る一斉広報、を挙げている。これらのホームページやパンフレットでは、制度の説明や種々の廃棄物の汚染判断の仕方、問い合わせ先などがまとめられている。
PCB廃棄物については、未だに処理制度や保有機器の取り扱いについて関係者の理解が十分に進んでいるとはいえないと感じられる点がある。今後も情報を更新、発信していくとのことであるが、これらによって、より積極的、かつ合理的な処理が進むことを期待したい。(文責:浦野 真弥)
残留性有機汚染物質検討委員会第12回会合(POPRC12)の結果について
環境省は9月27日に標記の会合の結果を公表した。
9月19日から23日にかけて、残留性有機汚染物質を国際的に規制するストックホルム条約の規制対象物質について検討を行う「残留性有機汚染物質検討委員会」(POPRC)の第12回会合がイタリアのローマで開催された。そこでは、短鎖塩素化パラフィン(SCCP)以外の塩素化パラフィンに混入するSCCPの低減のための規制の必要性と共に、SCCPを条約上の廃絶対象物質に追加することをCOPに勧告することを決定した。また、SCCPは難燃剤や可塑剤、金属加工油剤として使用されており、途上国における必要性が明確にされれば特定の用途についての適用除外を設けることもあるとされた。なお、我が国ではSCCPは化審法の第一種監視化学物質に指定されている。
さらに、ジコホル(化審法第一種特定化学物質指定済)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩及びPFOA関連物質について、規制対象物質とする必要性の検討を進めることが決定された。
その他、デカブロモジフェニルエーテル(DBDE)の個別の適用除外に関する検討、ヘキサクロロブタジエン(HCBD)の意図的でない生成による放出の削減に関する検討、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)代替ガイダンスの改訂、臭素化ジフェニルエーテルの個別の適用除外の見直しに関する報告書内容の吟味などが行われた。これらについて、日本の適切な対応が望まれる。(文責:浦野 真弥)
「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画(改定案)等」に対する意見募集について
環境省は7月14日に標記の国内実施計画(改定案)等を公開し、意見募集を開始した。
ストックホルム条約に基づいて、我が国では国内実施計画が作成、改訂されてきた。今回、平成25年4月から5月に開催された第6回締約国会議において対象物質として追加が決定したヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)の効力が発効したことを受け、関係省庁連絡会議において、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画(改定案)」が取りまとめられた。また同時に、国内実施計画の実施状況を点検し「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画の点検結果(案)」が取りまとめられた。
国内実施計画(改定案)では、2015年5月の第7回締約国会議で附属書への追加が決定されたペンタクロロフェノール又はその塩若しくはエステル、ポリ塩化ナフタレン及びヘキサクロロブタジエンを含めた対象物質についての国内状況や講じた施策の有効性の評価と課題、排出量削減への取り組みなどが整理、記載されている。
PCBのように現在処理の過程にある物質から、HBCDのように今後排出が増加すると見込まれる物質、および今後新たに追加される物質などの残留性有機汚染物質は、身近に使われている物質も多いことから、国民の理解を進めながら、着実な廃絶、排出量削減がなされることが望まれる。(文責:浦野 真弥)
福井県の事業場における膀胱がん発症に係る調査結果について
厚生労働省は6月1日に標記の調査結果を公表した。
厚生労働省では、これまでにも膀胱がんの原因と考えられたオルト-トルイジンを使用している事業場において同様の健康被害が生じていないかなどの調査を行い、その結果を示していたが、今回の調査結果は、(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所に委託した原因調査に関するものとなっている。
調査では、事業場、労働者に対してヒアリングを実施し、労働者に保護具を着用させた上で過去の使用状況を再現して、オルト-トルイジン、アニリン、2,4-キシリジンの作業環境濃度、個人曝露量、尿中オルト-トルイジン、保護具の汚染濃度等の測定を行い、過去の曝露量を推定している。
これらの調査、測定の結果、オルト-トルイジンを含む調査物質の経気道曝露量は少ないと推察され、作業に使用していたゴム手袋をオルト-トルイジンを含む溶剤で洗浄し、繰り返し再使用していたこと、作業に伴って直接接触する場合があったこと、洗浄を速やかに行わなかったことなどで、長期間にわたって経皮吸収された影響が強いと推定している。
有機溶媒については、揮発と経気道曝露に注意が払われているが、今回のケースのように、取り扱い方によっては、経皮曝露により被害が生じる可能性があることを十分に理解しておくことが必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
G7富山環境大臣会合の結果について
環境省は5月16日に「G7富山環境大臣会合の結果について」を公表した。この会合では、東日本大震災と福島第一原発事故により被災した地域における環境回復及び復興の進展の現状説明等がなされた後、(1)持続可能な開発のための2030アジェンダ、(2)資源効率性・3R、(3)生物多様性、(4)気候変動及び関連施策、(5)化学物質管理、(6)都市の役割、(7)海洋ごみについて議論され、その結果がまとめられた。
この中で、資源効率性・3Rについては率先して取り組み、経済成長と天然資源利用との分断(デカップリング)を促進することで一致し、さらに共通のビジョン、G7各国による野心的な行動、グローバルな取組の促進、着実なフォローアップを含む「富山物質循環フレームワーク」が採択された。また、同日に環境省から、資源効率性の向上がいかに経済成長や開発に寄与し、世界の物質、エネルギー、バイオマス、水の使用量や環境影響を低減させるかの展望を示したUNEP国際資源パネルの統合報告書、資源効率性の向上を実現するために取るべき主な政策アプローチや手法等を示したOECD政策ガイダンスが公表された。
化学物質管理に関しては、水銀に関する水俣条約の早期発効と締約国による効果的な実施を引き続き支持することや、子どもの環境保健に関する科学的知見の共有を推進することなどで一致した。 全体的に国際的な課題に対して協調を図りながら対応していくことを強く示したものとなっている。(文責:浦野 真弥)
日ASEAN化学物質管理データベースの本格運用開始
経済産業省は5月11日に、AMEICC(日ASEAN経済産業協力委員会)の枠組みを活用して、ASEAN各国と日本の化学物質管理についてのデータベースを構築し、4月28日より独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)にて本格運用を開始したことを公表した。
このデータベースには、日本とASEAN各国の政府から直接提供された化学物質関連規制情報が収載されている。トップページ及び一部の検索画面は、日本語及びASEAN各国言語にも対応しており、CAS番号や物質名、分子式などから検索することで、特定の化学物質に対する各国の規制状況を調べることができる。また、各国の法律における規制物質の一覧や法律の概要を知ることもでき、GHS分類結果や参考SDS等も入手できる。その他、関連情報へのリンクも用意されている。
今まで必ずしも入手が容易でなかったASEAN各国の規制情報に無料で、誰でもアクセスできるようになり、日本とASEAN各国の規制の透明性が高まり、日本とASEAN内外の化学産業のコンプライアンスに関するリスク低減への貢献や、将来的には規制制度の調和への貢献が期待される。
今後もユーザビリティなどの改善が行われることが望まれるが、このような他国の規制情報等は海外で事業展開する際に極めて重要と考えられる。今後、ASEANのみならず他の先進諸国を含めて国際的な情報が整理され、活用しやすくなることを期待したい。(文責:浦野 真弥)
「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定
環境省はポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案が平成28年3月1日に閣議決定さたことを同日公表した。
平成13年にPCB特措法を制定し、国が中心となって、JESCOの全国5か所の事業所に処理施設を整備し、高濃度PCB廃棄物の処理を実施してきた。事業所ごとの計画的処理完了期限は、地元との約束で、最短で平成30年度末となっているが、処分委託しない事業者や使用中のPCB製品も存在し、その達成が危ぶまれる状況となっている。本法律案は、こうした状況を踏まえ、期限を遵守して一日でも早く確実に高濃度PCBの処理を完了するために必要な制度的措置を講じるものである。
法律案の概要は、(1)PCB廃棄物処理基本計画の閣議決定、(2)高濃度PCB廃棄物の処分の義務付け、(3)報告徴収・立入検査権限の強化、(4)高濃度PCB廃棄物の処分に係る代執行となっている。
具体的には、保管事業者に計画的処理完了期限より前の処分を義務付け、義務違反に対して改善命令ができると同時に命令違反に対して罰則を科すものとなっている。また、PCB特措法に基づく届出がなされていない廃棄物等が一定量存在するとの調査結果等を受けて、都道府県等による事業者への報告徴収や立入検査の権限を強化し、保管事業者が不明等の場合にも、都道府県等が処分に係る代執行を行うことができる内容となっている。
高濃度PCB廃棄物の不適正な取り扱いにより、環境汚染等を引き起こしてきた側面があることから早期の適正処理が望まれる。(文責:浦野 真弥)
家庭用品規制法における特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料の規制が開始
厚生労働省は、平成28年4月1日から、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)において「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」を含む家庭用品の販売規制が始まることを改めて通知し、今回改正された規制の内容を紹介している。
アゾ染料は種類も多く安価であることから、広く社会で用いられているが、規制対象となる有害物質は、皮膚表面や腸内細菌、肝臓等で還元され、発がん性、あるいはその疑いがある物質(特定芳香族アミン)を生成する可能性があるものである。すなわち、省令で定める試験法でベンジジンなど24種類の特定芳香族アミンを生成するものとなっており、規制濃度は特定芳香族アミンとして30mg/g以下となっている。また、規制対象となる家庭用品は、特定芳香族アミンを生成するアゾ染料を使用している家庭用品のうち、下着、靴下、中衣、外衣、手袋、寝具などの14繊維製品と、帽子、手袋などの6革製品となる。規制対象部位は、通常の使用形態で直接肌に接触する部分のみで、例えばコートの場合、襟元と袖口のみとなる。
EU等では既に規制が行われており、また過去に実施した国内の実態調査においても、市販製品から検出、あるいは海外基準の超過が見られていた。使用範囲が広く、化学的変化によって生成する物質の規制であることから、対応が後手に回る可能性も考えられる。関係者への継続的な周知が必要と考えられる。(文責:浦野 真弥)
環境省が化学物質の環境リスク初期評価(第14次とりまとめ)の結果を公表
環境省は中環審環境保健部会化学物質評価専門委員会の審議を経た上で「環境リスク初期評価(第14次とりまとめ)」を平成27年12月24日に公表した。
環境リスク初期評価は、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高い可能性がある物質を、科学的な知見に基づいてスクリーニング(抽出)するための最初のステップである。「詳細な評価を行う候補」及び「関連情報の収集が必要」と評価された物質については、関係部局等との連携と分担の下で、より詳細なリスク評価の実施、規制法に基づく排出抑制、継続的な環境濃度の監視、より高感度な分析法の開発等を図ることとしている。
今回、健康リスクと生態リスクの双方を対象とした環境リスク初期評価が15物質、生態リスク初期評価が7物質について取りまとめられた。この初期評価の結果、詳細な評価を行う候補として、健康リスク初期評価で1,1-ジクロロエチレン、生態リスク初期評価でセレン及びその化合物、N,N-ジメチルオクタデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミンが抽出された。そのほかに関連情報の収集が必要なものとして、健康リスク初期評価で6物質、生態リスク初期評価で6物質が抽出された。
今回の第14次取りまとめにより、これまでに240物質の環境リスク初期評価が取りまとめられたことになるが、近年、化学物質使用に伴う健康被害や事故の事例が散見される。関係者の協力の下でリスク評価及び管理がより一層進められることが期待される。(文責:浦野 真弥)
厚生労働省が芳香族アミンによる健康障害の防止対策について関係業界に要請
染料・顔料の中間体を製造する事業場で、複数名の労働者が膀胱がんを発症する事案が発生したことが明らかになった。膀胱がんを発症した労働者は、オルト−トルイジンをはじめとした芳香族アミンを取り扱う作業に従事していたことが分かってるが、現在、作業実態や発生原因について労働局・労働基準監督署及び(独)労働安全衛生総合研究所において調査を行っている。これらを踏まえ、平成27年12月18日、厚生労働省は予防的観点から関係業界団体に対して、芳香族アミンによる健康障害の防止対策の適切な実施を要請した。
当該事業場で取り扱われている芳香族アミン5物質については、労働安全衛生法令では製造等の禁止や、管理濃度を定めた上での局所排気装置の設置・健康診断の実施等は義務付けられていないが、これらの物質を取り扱う事業者には、有害性等を確認するよう努めるほか、空気中の濃度が有害な程度にならないようにするため発散源を密閉する等により適切に管理しながら使用することなどが求められている。また、譲渡提供時の危険有害性や取扱い上の注意事項等を記載した安全データシートの提供が義務付けられている。
法的に強い規制がされていない化学物質の中にも適切な管理を行わなければ健康被害をもたらす可能性がある化学物質が多数含まれている。労働安全衛生法改正もあり、安全データシートの確認、職場環境などの化学物質リスクを基本から見直す時期にあると考えられる。(文責:浦野 真弥)