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日本の動き(2006〜2010)

エコケミストリー研究会の情報誌「化学物質と環境」RADAR に掲載した情報を紹介しています。
下記の情報をご利用になる場合は、各情報元をご確認下さい。

このページは、2006年から2010年までの日本の動きのアーカイブです。最新の日本の動きはこちらをご覧ください。

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2009年 1月号 3月号 5月号 7月号 9月号 11月号
2008年 1月号 3月号 5月号 7月号 9月号 11月号
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2006年 1月号 3月号 5月号 7月号   11月号

2010年11月号(No.104)

 3省が化学物質の「スクリーニング評価の基本的考え方(案)」と「化審法におけるスクリーニング評価手法(案)」に対する意見を公募
 改正化審法では、リスクが比較的高い可能性がある一般化学物質を「優先評価化学物質」とすることになっている。このため、厚労省、経産省、環境省の3省が「優先評価化学物質」に相当するかを判定するためのスクリーニング評価手法を検討してきた結果について、11月14日まで意見公募を行った
 スクリーニング評価の基本的考え方としては、人または生活環境動植物への有害性をそれぞれ5段階にクラス分けし、また製造・輸入数量や用途による排出係数等から予測した全国排出量を6段階にクラス分けして両者のマトリックスを作成し、「高」「中」「低」に優先度をつけるとしている。なお、有害性のクラス分けは、可能な限りGHS等の国際的な区分と整合性を持たせることとしている。
 また、物質指定の審議方法や情報の公開方法、年度ごとの評価手順、物性等からの毒性推定手法QSARやカテゴリーごとのアプローチの活用方法、および見直しについての考え方などを示している。
 また、具体的な評価手法(案)とその詳細(案)も出され、ヒトに対する毒性情報の不確実係数、水生生物に対する毒性情報の不確実係数や急性・慢性毒性比ACR、および有害性情報が得られない場合の取扱方法などの案が示されている。
 今後、提出された意見についての整理と対応が行われるが、できるだけ速やかに多くの化学物質の評価と公表が行われ、また、評価結果が関連する多くの法令による化学物質管理に速やかに活用されることが望まれる。(文責:浦野 紘平)

環境省が産業廃棄物処理施設の設置や産業廃棄物処理業の許可等の状況を発表
 環境省では、11月4日に産業廃棄物に係わる基礎資料として平成18、19年度の実績を発表した
 これによると、20年4月1日現在の産業廃棄物中間処理施設は前年比368増(19年は88減)の19,444となっているが、廃プラスチックの焼却施設や汚泥・廃油・廃プラ以外の焼却施設は減少している。
 一方、産業廃棄物処理業の許可件数は10,561増(19年は2,656増)の270,164件、特別産業廃棄物処理業の許可も2,231増(19年は1,827増)の29,729件と増加し続けている。
 また、広域的処理認定業者や広域再生利用業者による回収量はわずかに増減しているが、認定業者による再利用量は2年連続で減少しており、再利用が伸び悩み状態であることが伺われる。
 最終処分場は42減(19年は40減)の2,253カ所と減り続け、最終処分場の残存容量も635万m3減(19年は775万m3減)で減り続けているが、埋立処分量の減少によって残余年数は0.3年(19年は0.2年)延びて8.5年となっている。
 なお、許可取消処分の件数は、ここ3年間700件前後で推移している。
 20年度以降の実績に現れるであろうが、平成20年後半からの景気低迷によって、産業廃棄物業界は大きな影響を受け、構造改革が迫られている。 不況になると不法投棄の増加も懸念されるが、これを機会に、産業廃棄物業界が世界の効率的な資源循環を担う新たな静脈産業として脱皮・発展していくことを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2010年9月号(No.103)

 環境省がフロン等の排出量削減対策の強化に乗り出す
 環境省は、中央環境審議会地球環境部会にフロン類等対策小委員会を設置し、オゾン層破壊と地球温暖化に影響するフロン類と代替物の排出抑制対策の全面的な見直し、強化の検討を始めた(こちら)。
 オゾン層破壊については、その原因となるCFC類やHCFC類の製造が規制され、対策がほぼ完了しているかのような誤解があるが、これらを冷媒や断熱材として使用している空調・冷凍・冷蔵機器や建物等からの排出が続いている。
 「平成21年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告について」によると、大気中の濃度は、CFC類は横這い、HCFC22は急増し、強力な地球温暖化ガスであるHFC134aは激増していること、南極のオゾンホールの面積もあまり減少していないことが明らかになっている。また、地球温暖化へのこれらのガスの影響割合も増加傾向にある。
 環境省では、これらのことを踏まえて、上記の小委員会では、従来の対策とその効果を見直し、課題を整理して新たな対策の検討を始めている。
 今まで2回の会合で関係者のヒヤリングを含めた現状の確認と課題の抽出が行われ、9月27日の第3回検討会では課題の整理が行われ、その後、具体的な対策強化の方針が議論される予定である。
 京都議定書で温室効果ガスとされたHFC等3ガス以外のCFC類やHCFC類も地球温暖化に大きく影響するガスであるので、経済的措置と規制との組み合わせによるノンフロン化技術の育成や着香など、従来の対策の延長ではない新しい大胆な対策が期待される。(文責:浦野 紘平)

環境省が環境ビジネスウィメンによる「女性のための環境ビジネス創造塾」開催地を公募
 環境省では、環境を軸としたビジネス創造の芽が広がるように、地域において農林漁業、商店街、観光・旅行業などの様々な業種で頑張っている女性を対象に、今後のビジネス展開に向けたアドバイスをするために「環境ビジネスウィメン」を派遣することとし、派遣希望地域を公募している(こちら)。
 2004年に、小池百合子元環境大臣の呼びかけで、環境分野で事業を展開している女性起業家たち「環境ビジネスウィメン」が集まって懇談会を行ったのを契機に、2007年に、一般社団法人環境ビジネスウィメンが設立され、民主党政権下でも環境省との連携を継続している。
 本事業は、環境活動で地域を活性化している女性などを対象に、環境を軸としたビジネス創造について、課題解決手法や一歩を踏み出す勇気と具体的なノウハウなどを、「環境ビジネスウィメン」がアドバイスするものであり、今まで熊本県水俣市での「女性のための水俣環境ビジネス塾」の結成などに貢献してきた。
 「環境と経済の好循環」を具体化するためには、全国に環境ビジネスの芽を広げていくことが不可欠であり、地域の女性の活躍を支援していくことも今後ますます重要になるが、「環境ビジネスウィメン」の知恵と経験を基にした芽を大きく育てるためには、男性を含めた地域全体の理解と長期的な支えが必要であり、アドバイス以上の支援制度の充実が期待される。(文責:浦野 紘平)


2010年7月号(No.102)

 化審法で評価を行う必要がない化学物質の指定について意見募集
 厚生労働省、経済産業省、環境省は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第2条第2項各号又は第3項各号のいずれにも該当しないと認められる化学物質その他の同条第5項に規定する評価を行うことが必要と認められないものとして厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣が指定する化学物質を定める告示(仮称)」に対する意見を公募した(6月10日〜7月13日)。
 改正化審法では、@審議会において、人や動植物の生体膜を透過し、長期毒性を発現するものでないことが判定された化学物質、A地殻、水域又は大気等の自然界に本来大量に存在する化学物質、B生体の生命活動に必須又は重要な化学物質等については、健康被害又は生活環境動植物被害を生じるおそれを評価する必要がないものとして指定し、製造量等の届出も免除することになっている。また、他の法律で上市(販売)規制される物質も検討の上で対象外にできることとなっている。
 今回、@に該当する高分子物質、Aに該当する地殻構成成分や水中で一般的なイオンにのみ分解する物質、Bに該当する物質のうち食事摂取基準が定められている物質以外の物質などとして、多数の指定候補物質が示され、意見公募がなされた。
 多数の指定候補物質について、指定が妥当であるか否かを短期間に確認して意見を提出することは容易なことではないので、今後も意見を受け付けて見直すことが望まれる。(文責:浦野 紘平)

「改正化審法における化学物質のリスク評価スキームに関する調査」の報告書が公表
 改正された化審法に基づく新たな化学物質管理制度では、多くの化学物質のスクリーニング評価およびリスク評価を行うことになっている。
 このために経済産業省が(独)製品評価技術基盤機構に調査委託をした
「化審法における優先評価化学物質に関するリスク評価の技術ガイダンス(案)」の報告書と、
そこで利用する暴露量推定のための用途分類別排出係数の設定方法と検証、及びスクリーニング評価手法の提案と根拠とした試行結果などをまとめた報告書が公表された。
 前者は、4章58ページの第T部総論編と8章224ページの第U部各論編、および8章264ページの付属書からなる大部の報告書である。これは、化学物質のリスク評価について、基本的な考え方から、優先評価物質選定のための有害性と暴露性の評価手順、優先評価物質の有害性と暴露性の評価手順、リスク推計とリスクキャラクタリゼーションなどの手順をかなり良くまとめている。
 また後者は、8章194ページからなる報告書で、前者の裏付けとするとともに、PRTRでの排出係数と排出量の推計やGHS分類にも役立つ方法について、具体例と課題をまとめている。
 方法にも、データ不足な点にも課題は多いが、今後、これらの具体的な活用事例が蓄積され、改善されることによって、化学物質のリスク管理が進展することを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2010年5月号(No.101)

 環境省が新「環境研究・環境技術開発の推進戦略」案に意見募集
 環境省は5月7日に、環境研究および環境技術開発を効果的に推進するための新たな戦略案をとりまとめて意見公募を行った。この案では、まず、わが国の果たすべき役割とともに、目指すべき長期(2050年)の「持続可能」な我が国のあるべき姿として、(1)脱温暖化、(2)循環型社会、(3)自然共生型社会、(4)安全が確保される社会を上げ、それらを念頭に置いた中期(2020年)の姿として、具体的な24の目標を示している。その上で、今後5年間で重点的に取り組むべき課題として、(1)全領域共通分野の創設による各研究領域へのあるべき社会像の明示、(2)領域横断分野の創設による課題解決、(3)技術・システムの社会実装によるイノベーションの必要性を述べている。さらに、全領域共通課題と領域横断的課題としてそれぞれ3つ、個別領域課題として、(1)脱温暖化社会に4つ、(2)循環型社会に3つ、(3)自然強制型社会に2つ、(4)安全が確保される社会に2つの「重点課題」を設定している。
 また、これらの効果的な推進方策として、(1)研究・技術開発間の連携、(2)産学官、府省間、国と地方との連携、(3)アジア等との連携・国際的な枠組みづくり、(4)地域レベルの研究開発の強化、(5)研究・技術開発成果の施策への着実な反映、(6)国民への分かりやすい発信、および(7)フォローアップの重要性、必要性を述べている。
 このような戦略の実現には、論文数ではない研究成果や研究者の評価が不可欠であるので、この点についての省庁等の壁を越えた制度的改革と意識改革の具体化が望まれる。(文責:浦野 紘平)

環境省が生物多様性総合評価結果等を発表
 環境省は5月10日に、わが国の生物多様性の「総合評価結果」と生物多様性条約事務局がまとめた世界の「生物多様性概況第3版(GBO3)」を発表した
 わが国の総合評価結果では、わが国の自然と社会経済の状況、生物多様性損失の要因、損失の状態、評価の総括と今後の課題などを、多数の資料を基にまとめている。結論として、(1)生物多様性の損失は全ての生態系に及び、続いている。(2)特に、陸水、沿岸・海洋、島嶼の生態系における損失が大きく、続く傾向にある。(3)損失の要因には、開発等(第一の危機)の影響が大きいが、里地里山等の縮小(第二の危機)の影響が増大し、外来種や化学物質の影響(第三の危機)のうち、外来種の影響が顕著であり、地球温暖化の影響も一部の生態系で懸念されている。(4)損失要因を抑制するためには、地域レベルの合意形成が重要である。(5)陸水、沿岸、島嶼の生態系は、回復不能になるおそれがあることなどが述べられている。
 また、条約事務局がまとめたGBO3では、2010年目標としてきた11のゴールの達成状況を評価し、多くが不十分で、人類への影響が深刻化することを示し、このような状態を覆すためには、緊急、包括的かつ強力な措置が必要であることを述べ、2010年以降の戦略計画の骨子を示している。
 まもなく第10回条約締約国会議が名古屋で開催されるが、日本での活動を効果的にするためには、省庁や国・地方、産学官民の壁を越えた取組体制の構築が不可欠であろう。(文責:浦野 紘平)


2010年1月号(No.99)

 政府が「生物多様性条約ポスト2010年目標に関する日本提案」を条約事務局に提出
 日本政府は、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)およびカルタヘナ議定書第5回締約国会議が日本で開催されることを踏まえて、有識者、NGO、関係機関等からの意見聴取や議論を重ね、パブリックコメントを経て、10月開催のCOP10で検討される「生物多様性条約ポスト2010年目標に関する日本提案」を決定し、1月6日に条約事務局に提出した
 この目標では、2050年までの中長期目標と2020年までの短期目標、および(1)生物多様性への影響が間接的で広範な主体に関連する目標、(2)生物多様性への影響が直接的で対象が限定される目標、(3)生物多様性の状態それ自体を改善するための目標、(4)生物多様性が人間にもたらす恩恵に関する目標、(5)上記の目標を効果的に実現するための目標として合計9つの個別目標が示され、さらに、それらの個別目標ごとに合計34の達成手法とその具体例、およびそれらについての数値指標等の達成指標が示されている。
 これらの目標の実施については、各締約国が生物多様性国家戦略に可能な限り数値目標を盛り込むこと、国家戦略に盛り込まれなかった数値目標も含めた進捗状況を定期的に報告すること、新たな情報や技術の利用可能性に応じて見直すことを定め、2020年には達成状況を評価し、2050年までの目標達成に向けた2030年までの目標を策定することなどが示されている。
 生物多様性の恩恵や保護・改善に対する日本人の理解や意識レベルはまだまだ低いが、COP10の開催を機に、これらの大幅な向上が図られ、議長国である日本の先進的目標設定と着実な達成につながることを期待したい。(文責:浦野 紘平)

環境省が「今後の効果的な公害防止の取り組み促進方策の在り方について」をとりまとめ
 近年、大手企業などにおいても公害防止に関するデータの改ざん等の不適切な事例が散見されてきたことから、環境省では、中央環境審議会に大気環境・水環境合同部会公害防止取組促進方策小委員会を設置し、公害防止体制の全面的な見直しの議論を進めてきた。この委員会では、不適切な事例が生じた直接的な原因だけでなく、地方自治体での関連予算や人員の削減、経験者の退職、制度の形骸化、法律や条例の運用面の不十分さなどの根本的な課題と改善策についても議論がなされた。その結果、「今後の効果的な公害防止の取組促進方策の在り方について」の答申案が出され、1月15日までパブリックコメントが実施された
 現在、このパブリックコメントの結果の整理と最終答申のまとめが進められているが、答申案には、取組の現状、および促進方策の課題と基本的方向のほかに、今後の在り方として、(1)法令遵守の確実な実施、(2)自主的・継続的な取組の促進、(3)事業者や自治体での公害防止体制の高度化、(4)地域ぐるみの取組の促進と環境負荷の低減、(5)排出基準超過や事故時の自治体の機動的対応の確保、(6)事務手続等の合理化などの方策が示されている。
 とくに、情報共有による地域のパートナーシップによる取組や住民・NPO等が持つノウハウを活かした取組などの促進、および事務手続等の合理化が求められたことは画期的であり、今後、新しい環境時代にあった公害防止体制の構築が進められることを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2009年11月号(No.98)

 水銀規制条約への動き活発化
 国連環境計画(UNEP)は、2001年より水銀汚染対策に関する活動を開始し、2005年からは鉛とカドミウムを加えた「重金属プログラム」を行ってきたが、2009年2月に開催された第25回UNEP管理理事会で、従来反対していた米国を含めた主要国が水銀規制条約の制定について合意し、2010年に政府間交渉委員会(INC)を設置し、2013年に結論を出すことが決まった。
 これを受けて、2009年10月19日に、タイのバンコクで「UNEP水銀に関するアドホック公開作業グループ会合」が開催され、各国の取り組みについての情報交換が行われ、第1回のINCを来年6月にストックホルムで開催することなどが決められた。また、10月23日には、75ヶ国以上のNGO・NPOで構成された「ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ」が、条約締結の促進に向けて「アドホック公開作業グループ会合」の要点と意見[PDF]を発表した。
 日本でも10月15日に、国内54団体と海外60団体の賛同を得た市民団体共同声明「日本政府に水銀輸出禁止法の制定を求める」が内閣総理大臣、外務大臣、環境大臣に提出された。
 EUや米国が昨秋に水銀輸出禁止と余剰水源の安全な保管を決めた中で、水俣病を経験した日本がアジア唯一の水銀輸出国となっている現状は早期に改善する必要があろう。(文責:浦野 紘平)

環境省が微量PCB汚染物処理のために廃棄物処理法施行規則を改正
 環境省は、微量PCB汚染廃電気機器等の処理促進のために、平成21年11月10日付けで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令2件と告示5件を交付した(11月24日施行)。
 処理が進められている数十%以上のPCBを含む廃棄物に比べて1万分の1以下の数十ppm程度のPCBで汚染された廃電気機器やOFケーブルなどが大量に見つかった。環境省ではこれらの安全かつ経済的な処理方法として、焼却処理の実証試験を行ってきた。その結果を踏まえて、微量PCB汚染廃電気機器等を焼却処理する施設を「無害化処理に係わる特例」の対象として環境大臣が個別に認定することとし、また、無害化処理の内容の基準、処理者の基準、処理施設の基準等を定めることとした。さらに、中小企業が保管している微量PCB汚染物の処理費用を(独)環境再生保全機構の助成対象として負担軽減を図ること、および焼却処理施設の排ガスや放流水中のPCBの測定に関する規定と記録・閲覧についても定めた。
 世界一厳しい基準を定めていても、PCB含有廃棄物を放置しておくと環境中に放出されたり、事故や災害時に大量放出されてしまうリスクがあるので焼却処理の早期認知を主張してきたが、ようやく実現に至った。適切なリスクコミュニケーションを行い、安全・確実な処理が立証されている850℃〜950℃での処理施設を含めて、広く普及することを期待したい。ている。この国民会議の提案が、国民各層の意見を反映し、幅広い理解を得て実現することを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2009年9月号(No.97)

 環境省が「生物多様性民間参画ガイドライン」を公表
 環境省は、8月20日に、生物多様性基本法(平成20年6月施行)に定められた事業者の責務規定を具体化するため、「生物多様性民間参画ガイドライン」を公表した
 環境省では、すでに平成19年11月に「第3次生物多様性国家戦略」を示し、企業等の事業者が生物多様性に大きな影響を与えているとともに、保全と持続的利用のために重要な役割を担っているとの認識のもとで、企業等の自主的活動のための指針を検討してきた。
 今回のガイドラインでは、事業者に、様々な主体と連携して積極的に取り組み、生物多様性に配慮した製品やサービスを提供してライフスタイルの転換を促すなど、自然共生社会、持続可能社会の実現に貢献することを期待している。具体的には、地域重視と広域的・グローバルな認識、多様なステークホルダーとの連携と配慮、社会貢献、地球温暖化対策その他の環境対策等との関連、サプライチェーン、生物多様性に及ぼす影響の検討、事業者の特性・規模等に応じた取組などを考慮して、(1)生物多様性に及ぼす影響の回避・最小化、(2)予防的な取組と順応的な取組、および(3)長期的な観点での取組を進めることを求めている。とくに、取組姿勢を明確に示し、優先順位を定めて取り組むことが有効とし、参考事例も示している。
 平成22年10月には、第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が名古屋で開催される。これを契機に、多くの企業等が生物多様性の重要性を認識し、その保全に本格的、持続的に取り組むことを期待したい。(文責:浦野 紘平)

水制度改革国民会議の活動が本格化
 平成20年6月に設立された水制度改革国民会議が設立1周年を迎えた21年6月に、「水循環基本法研究会」の第9回会合を開催するとともに、水循環基本法と政策大綱の「起草委員会」を設置した。この国民会議は、国内外での有害化学物質を含む排水の放流による人や生態系への悪影響の深刻化、洪水や渇水の頻発、日本における水関連法の縦割りと連携不足、地下水保全法がないことなどの問題点に対して、国民の視点から多角的に調査研究し、3年間をめどに「水循環基本法」と水行政の一元化を提案し、実現することを目標にしている。
 「水循環基本法研究会」には、超党派の国会議員17名と民間各分野の有識者16名が参加しており、第9回会合では、(1)海外の水制度と日本、(2)水質汚濁の野生生物に及ぼす影響、(3)会員から寄せられた意見の3つの問題提起と議論がなされた。
 今後は、「起草委員会」で水循環基本法と政策大綱の原案を作成し、基本法制定と水行政一元化に向けた活動を本格化するとしている。
 水問題の重要性は多くの人が認識しているが、それだけに関わる省庁や機関・団体が多く、縦割りになりがちである。特に日本の水行政の連携の悪さは様々な無駄の原因になっているだけでなく、野生生物(生物多様性)に対する水の影響についての管理体制、地下水を含む水循環の管理体制、および国際連携・貢献体制が貧弱であるといわれている。この国民会議の提案が、国民各層の意見を反映し、幅広い理解を得て実現することを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2009年7月号(No.96)

 温室効果ガスHFCの排出量が大幅増加修正
 環境省は、「微小粒子状物質に係る環境基準について(答申案)」に対する意見を8月10日まで募集している。
 昨年12月9日に環境大臣から中央環境審議会大気環境部会に対して大気中の2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準の設定について諮問されたことを受け、同部会は「微小粒子状物質環境基準専門委員会」と「微小粒子状物質測定法専門委員会」を設置して検討を重ねてきた。7月2日にこれらの専門委員会からの報告書が大気環境部会に提案、了承され、新しい環境基準として「1年平均値が15μg/m3以下、かつ1日平均値が35μg/m3以下であること」、および測定法として「ろ過捕集法による質量測定方法またはこれと等価な値が得られる自動測定機による方法」とする案が出された。なお、人に対する健康影響に関する調査結果や各種の測定法の精度等については、両専門委員会の報告書が資料として示されている。
 PM2.5の発生源は、工場や自動車等から直接排出される微粒子状物質、大気中で光化学反応や中和反応によって生じる2次生成粒子のほかに、自然由来の粒子がある。このため、黄砂、火山等の影響や海外工場等からの2次生成粒子の飛来の影響などについて、さらに調査・検討を進める必要がある。現状では、この基準値案を越えている地域も少なくないので、これらの発生源情報を踏まえた効果的な排出抑制対策をいかに早く進めるかが今後の重要な課題である。また、測定方法についても簡易測定法を含めた効率的で経済的な方法の開発と普及が望まれる。(文責:浦野 紘平)

POPs条約第4回締約国会議で新規物質を追加
 環境省は、微量PCB混入廃電気機器等の処理に関して廃棄物処理法施行規則の一部改正を提案し、8月12日まで意見を募集している。
 環境省では、高圧トランスや高圧コンデンサ、OFケーブルなどの廃電気機器等の中に数mg/kgから数十mg/kg程度のPCBで汚染された絶縁油を含むものが大量に見つかったことなどを受け、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会に「微量PCB混入廃電気機器等の処理に関する専門委員会」を設けて微量PCB混入絶縁油、PCB付着物、PCB処理物等の処理のあり方を検討してきた。その結果、適切な設備であれば焼却や洗浄によって確実かつ安全に処理できることが確認されてきたことなどを踏まえ、環境大臣がこれらの処理業者を個別に認定することとし、そのための無害化基準、無害化処理の内容の基準、無害化処理者の基準、施設の基準、その維持管理基準、認定申請書への記載事項、実証試験書類、記録の閲覧と記録事項、環境大臣への報告事項等について明記するとともに、国が技術的、経済的な支援を図ることしている。
 微量PCB混入・付着物等は、放置すると漏洩や投棄あるいは不適切な処理によって環境汚染を引き起こすリスクがあることから、正しい情報を分かりやすく伝えて広く関係者の理解を得ながら、実証が進んでいる1,100℃未満での焼却処理や効率的で低廉な測定方法なども含めて、できるだけ速やかに全国的な処理体制が構築されることを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2009年5月号(No.95)

 温室効果ガスHFCの排出量が大幅増加修正
 3月17日の経済産業省産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化対策小委員会で、温室効果ガスである代替フロン等3ガスの07年度国内排出量の推計値が、従来の推計値よりCO2換算で約670万トンも増加することが公表された。この増加の原因は、業務用冷凍空調機器と家庭用ルームエアコンの使用時に、冷媒用ハイドロフルオロカーボン(HFC)が従来の推計より大量に排出されていることが分かったことによる。
 従来から、これらの機器からのHFCの排出係数がIPCCのガイドライン値に比べてかなり小さく見積もられていたことや、毎年の出荷量が新規補充量と排出量の和よりかなり多いことなどが指摘されてきた。今回、種類や大きさの異なる業務用冷凍空調機器26万件について調査した結果を基に、16種類の業務用冷凍空調機器についての排出係数が0.01〜4.4%から2〜17%に大幅修正され、ルームエアコンの排出係数も0.2%から2%に修正された(カーエアコンは5.2%のまま)。
 また、約7千件の調査を基に、各機器の廃棄までの使用年数分布も修正され、各年度の冷媒出荷量が新規補充量と排出量の和とほぼ一致するようになることも確認された。
 このように使用時の排出係数がかなり大きいことが明らかになったことから、今後は、冷媒フロンの廃棄時の回収・破壊のほかに、一層の代替化と使用時の排出抑制対策の促進が求められる。これに対して、上記小委員会が示した「代替フロン等3ガス分野の中期の排出削減対策に関する見解」はかなり消極的なものとも受け取られかねないが、今後の対策強化に期待したい。(文責:浦野 紘平)

POPs条約第4回締約国会議で新規物質を追加
 5月4日〜8日にストックホルム条約(POPs条約)の第4回締約国会議がジュネーブで開催された。
 この会議では、従来の13物質のモニタリング結果を基にして条約の有効性の評価が初めて行われるとともに、新しく9物質がPOPsに指定された。すなわち、附属書A(製造・使用等を原則廃絶)には、プラスチック難燃剤として使われてきた臭素数4から7のポリブロモジフェニルエーテル類とヘキサブロモビフェニル、農薬のクロルデコン、ペンタクロロベンゼン、リンデン及びその副生物であるαとβのヘキサクロロシクロヘキサンが追加され、附属書B(製造・使用制限)には、撥水撥油剤や界面活性剤として使われているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びその塩とペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)、附属書C(非意図的放出の削減)にもペンタクロロベンゼンが追加された。PFOSとその塩及びPFOSFは代替化が難しい用途があるとされ、技術開発を進めつつ、将来的な廃絶に取り組むとされた。このため、日本でもこれらの必須用途については適用除外の登録等を行う予定とされているが、本当に必須用途か否かの慎重な判断が求められる。
 また、平成19年に化審法で第1種特定化学物質に指定された紫外線吸収剤の2-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルヘノール:(DBHP)BTについてもPOPsとして国際的に使用を制限するよう、日本が主体的に働きかけることが期待される。(文責:浦野 紘平)


2009年3月号(No.94)

 環境省の微量PCB含有油等の焼却分解試験が着実に進行
 数十ppm程度(高濃度PCB廃棄物の数万分の1)の微量PCBが混入してしまった廃電気機器等が約450万台もあり、国民負担の少ない処理体制の整備が求められている。このため、環境省は既存の産業廃棄物処理施設において、微量PCB混入絶縁油等を安全かつ確実に焼却処理できることを確認するため、平成17年度に3施設、18年度に5施設、19年度に4施設で実証試験を行ってきた。これらの12施設のうち、9施設は焼却温度1100℃以上、ガス滞留時間2秒以上での処理、3施設は850℃以上、2秒以上の処理であったが、いずれも安全かつ確実に分解できたことが確認されている。
 平成20年度には、秋田県大館市と福岡県北九州市の2施設で微量PCB混入絶縁油と油を抜いた変圧器やドラム缶等を加熱して気化したガスを1100℃以上で分解する試験を行って安全、確実な処理ができることを示した(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10831)ほか、21年3月に広島県福山市と鳥取県松江市の施設で微量PCB混入絶縁油の850℃以上、2秒以上での焼却試験を実施する。
 また、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会の「微量PCB混入廃重電機器の処理に関する専門委員会」で、実証試験結果や国内外の情報を基にした検討を行い、来年度から廃棄物処理法の特例として、国が個別に施設を認定し、微量PCB混入油等の焼却処理を推進する方針を示している。
 99.99%程度がPCB以外の絶縁油等である微量PCB混入廃棄物は安全・確実に焼却処理できるという事実について、地方自治体や地域住民、市民団体やマスコミの理解が進み、負の遺産の処理が着実に進むことを期待したい。(文責:浦野 紘平)

環境省が化学物質の環境リスク初期評価第7次の結果を公表
 環境省は、平成21年3月17日に化学物質の環境リスク初期評価(第7次)において、健康リスクと生態リスクを評価した23物質と生態リスクのみを評価した10物質の評価結果をとりまとめて公表した(詳細結果はこちら)。
 健康リスク評価では、1,2,4-トリメチルベンゼン、生態リスク評価では、5-クロロ-2-(2',4'-ジクロロフェノキシ)フェノール、1-デシルアルコール、ポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニルエーテルが「詳細な評価を行う候補」とされた。
 また、健康リスク評価では、ジブロモクロロメタン、1,2,3-トリクロロプロパン、ブロモジクロロメタンが、生態リスク評価では、ジブロモクロロメタン、ピレン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1-ノナノールが「引き続き情報収集する必要がある物質」とされた。
 なお、6次までの結果は、「化学物質の環境リスク評価」(第1巻〜第6巻)として公表されている。
 この健康リスク評価では無毒性量等を予測最大暴露量で除したMOEが10未満の場合に、生態リスク評価では予測環境中濃度を予測無影響濃度で除した値が1以上の場合に「詳細な評価を行う候補」とされ、関係部局との連携と分担の下で、詳細な評価の実施等が行われることになっている。
 しかし、予測最大暴露量や予測環境中濃度についての情報は非常に限られているので、発生源近傍での測定等によって、さらに評価の信頼性が高められることを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2009年1月号(No.93)

 化管法施行令改正に伴うMSDS提供スケジュールについて経産省が説明
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)施行令を改正する政令が平成20年11月21日に公布され、PRTRとMSDSの対象になる第一種指定化学物質が354物質から462物質になり、MSDSのみの対象となる第二種指定化学物質が81物質から100物質になった。これに伴うMSDS提供のスケジュールについて経済産業省が説明を発表した
 PRTRは、平成22年4月1日から新規指定物質の排出・移動量の把握をして平成23年4月から届出するため、新規指定物質のMSDSは平成21年10月1日から提供しすることになっているが、できるだけ早めに提供してほしいとされている。
 一方、平成21年度分のPRTRの届出は、現行指定物質によるので、平成22年3月までは現行指定物質のMSDSも提供する必要がある。したがって、平成22年3月までは、新旧のMSDSが提供されることになる。このため、新規指定物質のMSDSには「記載してある化学物質によるPRTR届出のための排出・移動量の把握は平成22年4月からの開始であり、平成21年度分の届出は政令改正前の第一種指定化学物質に基づき行う必要がある」旨を明記又は通知してほしいとされている。
 また、平成22年4月以降は現行指定物質のMSDSの提供は停止すること、取り扱う物質がそのまま現行指定物質から新規指定物質になった場合にもMSDSの番号の変更が必要である点などに注意してほしいとされている。新しいPRTRの届出とMSDS提供が混乱なく実施されるよう一層の周知が望まれる。(文責:浦野 紘平)

欧州化学物質庁ECHAがREACHの予備登録約15万物質のリストを公表
 欧州化学物質庁ECHAは、2008年12月2日にREACHの予備登録状況を公表し、12月19日に予備登録物質のリストを公表した
 これらによると、2008年12月1日までの6ヶ月間の予備登録期間に、30カ国の65,655社から220万件以上の登録があったという。国別に見ると、ドイツが8,655社から約67万件で最も多く、英国が22,227社から約42万件、フランスが4,409社から約25万件、ポーランドが2,434社から約17万件、オランダが5,526社から約13万件、イタリアが4,638社から約11万件等となっている。これらの中には、既存化学物質すべてを予備登録した会社もあったとされている。これらの登録を整理したところ、既存化学物質と新規化学物質とを合わせて約15万物質になったとしてリストが公表された。ただし、これらについてはさらに精査した結果を後に公表するとされている。また、質問と回答もまとめられている。
 予備登録の半数が締め切り前の3週間に集中したためにトラブルもあったようであるが、一応、予備登録が終了した。日本の企業が欧州を経由してどれだけの予備登録を行ったかは不明であるが、今後、これらの物質の有害性の評価が行われ、公表されることによって、世界の化学物質管理が改善されることを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2008年11月号(No.92)

 REACH最初の15高懸念物質が決定
 10月28日に、REACHの事務局ECHA(European Chemicals Agenncy)は、最初の高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concern)として15物質を決定した。SVHCは販売や使用に許可が必要であり、成型品や最終製品に0.1%以上含まれていると川下企業等に情報提供が義務づけられる。
 今回決定された物質は、ヘキサブロモシクロドデカン類や短鎖塩素化パラフィン類(炭素数10-13)などのPOPs候補とされている物質(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10337)をはじめ、フタル酸ジブチルとフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸-n-ブチル=ベンジル)などの可塑剤、五酸化二砒素、三酸化二砒素、砒酸鉛、砒酸トリエチルなどの砒素化合物、塩化コバルト、二クロム酸ナトリウムの無水物と二水和物、ビス-n-トリブチルスズオキサイドのほか、アントラセンと 4,4'-メチレンビスアニリン、マスクキシレンである。ここで、注目されるのは、メーカーが安全性を主張してきたフタル酸エステル類と排水等のCOD測定などにも用いられている二クロム酸ナトリウムであろう。
 SVHCには、いずれ千を越える数の化学物質が指定されるであろうとされ、米国のNGOが267物質の候補リストを公開している(http://www.chemsec.org/documents/080917_reach_sin_list.pdf、ピコ通信第121号参照)なかで、今回やっと15物質が決定された段階である。ほとんどのSVHCが決められるのにはかなり時間がかかりそうであるが、日本でも独自に高懸念物質リストを作成して適切な管理システムを構築しておく必要があり、化審法等の改訂だけでなく、個別企業や業界団体の自主的な取り組みが期待される。(文責:浦野 紘平)

環境省がエコファースト企業10社を認定
 企業が自らの環境保全についての取り組みを環境大臣に約束する「エコファースト」の第5回目の認証式が11月11日に行われた(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10397)。今回の認定は、近畿環境興産(株)、三洋商事(株)、住友化学(株)、全日本空輸(株)、(株)損害保険ジャパン、ダイキン工業(株)、(株)タケエイ、(株)電通、東京海上日動火災保険(株)、日本興亜損害保険(株)の10社である。今までに認定されたのが11社であったことを考えると今回急増したといえる。
 これらの企業は、業界のトップランナーとして、環境保全に関する先進的な行動をし続けることを社会に約束したことになるが、それぞれの企業の業態によって環境保全への取組み方は異なっている。たとえば、近畿環境興産(株)は産業廃棄物の再燃料化、三洋商事(株)は通信機器の再資源化、住友化学(株)は化学物質のリスク評価と情報公開・コミュニケーション、全日本空輸(株)はCO2削減、(株)損害保険ジャパンは環境教育やエコファンド、ダイキン工業(株)はフロン類を含む温室効果ガスの削減、(株)タケエイは建設廃棄物の3R、(株)電通は環境配慮イベントやカーボンオフセット、東京海上日動火災保険(株)はマングローブ植林や気候変動影響の産学連携研究、日本興亜損害保険(株)はCO2削減などが評価されている。
 まだまだ数は少ないが、今後多くの企業が自主的に先進的な環境保全活動を行い、このような認定を受け、認定に恥じない環境調和企業として活動することを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2008年9月号(No.91)

 第2回日中韓における化学物質に関する政策ダイアローグが開催
 去る9月1日〜3日に韓国ソウルで「第2回日中韓における化学物質に関する政策ダイアローグ」が開催された。この会合は、日中韓が北東アジアの大気、海洋、自然環境を共有する「環境共同体」であるとの認識の上で「第8回三カ国環境大臣会合(TEMM8)」での合意をもとに、「化学物質に関する政策や規制に関する情報交換の推進」のために、昨年の第1回東京集会に続いて開催されたものである。この第2回ダイアローグでは、(1)GHS国際専門家会合、(2)日中韓三カ国における化学物質管理政策及び欧州REACHへの対応戦略セミナーと(3)日中韓政府事務レベル会合が開かれた。
 (1)では、GHSへの各国の対応の現状についての情報交換と有害性分類の調和のための比較検討を進めることや、第2回の専門家会合を来年3月に東京で開催することが合意された。
 (2)では、三カ国の政府関係者、学識経験者、企業人等約140名の参加の下に各国の化学物質管理の最新動向、REACHへの対応戦略や優良試験所基準(GLP)制度についての発表と討論がなされた。
 (3)では、REACH対応、製造・使用規制、有害性試験の方法とGLP、PRTRなどのあり方について今後情報交換を進めることや第3回政策ダイアローグを来年下半期に中国で開催することなどが合意された。
 国際化が進む化学物質管理についても、欧米に合わせるだけでなく、アジア視点での対策が重要になっている。昨年から始まったこの三カ国ダイアローグが継続するとともに、三カ国以外のアジア諸国との情報交流や世界への情報発信にも発展していくことが期待される。(文責:浦野 紘平)

経産省が化学物質セミナーキャラバン2008を実施予定
 経済産業省は、平成20年10月〜11月にかけて北海道(札幌市)、東北(仙台市)、北陸(高岡市)、信越(新潟市)、関東(渋谷区)、中部(名古屋市)、近畿(大阪市)、中国(広島市)、四国(高松市)、九州(北九州市)の全国10カ所で、「化学物質のリスクマネジメントとリスクコミュニケーション」についてのセミナーを開催する。
 この化学物質セミナーは、化学物質を適切に管理するためには、法規制の遵守だけでは不十分であり、化学物質を扱う事業者自らが化学物質のリスクを把握し、リスクの大きさに応じて適切なリスク削減対策を講じるなどの自主的な管理や国際動向を踏まえた対応が求められていることを踏まえ、化学物質の評価・管理に必要なリスク評価手法やリスクコミュニケーションに関する情報、および国内の法規制動向及びREACHやGHS等の国際的な規制の動向などについての理解を促進するために、企業向けに開催されるセミナーといえる。具体的には、「化審法と化管法の見直しの動向」と「最近4年間の化学物質の排出量・移動量の動向」を共通とした上で、各地域ごとに地元自治体や企業における取り組み、あるいは
REACHやGHS対応の紹介などが予定されている。
 このような催しが継続的に開催されることは大変良いことであるが、今後重要となるリスクコミュニケーションに関する内容が乏しいのが残念であり、今後この点についての充実が期待される。(文責:浦野 紘平)


2008年7月号(No.90)

 3省がJapanチャレンジプログラム中間評価(案)について意見募集
 厚労省、経産省、環境省の3省は、平成20年7月8日に「Japanチャレンジプログラム中間評価(案)」を公表し、8月6日まで意見募集を行っている
 Japanチャレンジプログラムは、平成17年6月から平成20年3月末までに、日本で年間1,000トン以上生産・輸入され、かつ国内外で基本的な毒性情報などが得られていなかった物質について、製造・輸入業者が自主的に情報を収集するスポンサーになることを求めた制度である。中間評価(案)によると、平成20年6月時点では、126物質が対象になっているが、すでにスポンサーが得られたのは89物質で、37物質が残されており、そのうち、国内生産が中止または大幅に削減された9物質、他の法令で規制されている8物質、閉鎖系での使用のみの2物質を除く、18物質のスポンサー登録が今後必要であるとされている。また、データベース公開サイトとしてJ-CHECKがスタートしたが、情報の数と利用しやすさに課題があるとされている。
 平成20年度末の期限までに、18物質にスポンサーが得られ、全ての対象物質についての十分な情報収集が行われて公開されるという所期の目標の達成はかなり難しい状況にあるといえる。
 今後は、業界の不公平感の解消と市民の信頼を得るために、正確な製造・輸入量の把握体制を構築して対象物質の追加をするとともに、国際的な動向との調和を図るために、ボランタリーな制度と強制的な制度とを組み合わせることによって、正直者が損をしない、信頼できる制度に改善されることが期待される。(文責:浦野紘平)

厚労省が妊婦や乳幼児のビスフェノールA曝露に注意を喚起
 厚労省は、平成20年7月8日に「食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について−ビスフェノールAがヒトの健康に与える影響について−」を発表し、妊婦や乳幼児を育ている人へのアドバイスを含むQ&Aを公表した。
 ビスフェノールAは、代表的な内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)であり、プラスチックのポリカーボネートやエポキシ樹脂の原料で、哺乳びんや食品容器、食品缶や飲料缶の防食塗装などに使われている。
 国は、1993年にビスフェノールAの許容摂取量を0.05mg/kg-体重/日に設定したが、その後の国内外の研究で、妊娠した動物にその100分の1〜5分の1の0.0005〜0.01mg/kg-体重/日だけ投与した場合にも子に異常が見られたとの報告が出され、各国で対策の強化が進められてきている。
 このようなことから、厚労省も改めて健康影響評価を行うとともに、妊婦の缶詰等からの摂取や乳幼児のポリカーボネート製の哺乳びん等の使用をできるだけ避けるように注意を促した。
 内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)問題は、「騒ぎすぎたがもう終わった」というような受け取られ方がされているが、胎児や乳幼児に対する影響を示唆する報告が増えてきている。今後の化学物質管理全体に、胎児や乳幼児への影響、および生態系への影響を重視した評価と管理の発展が期待される。(文責:浦野 紘平)


2008年5月号(No.89)

 地球温暖化対策法改正案が参議院審議へ
 地球温暖化対策の推進に関する法律の改正案が平成20年4月25日に衆議院で修正可決され、参議院での審議が始まった(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm)。
 この改正案では、(1)温室効果ガス算定・報告・公表制度の見直し、(2)排出抑制等指針の策定、(3)国民生活における温室効果ガス排出抑制のための取り組み促進、(4)新規植林・再植林CDM事業によるクレジットの補填手続きの明確化、(5)地方公共団体実行計画の充実、(6)地球温暖化防止活動推進員と都道府県地球温暖化防止活動推進センター等の見直しを行うとしている。すなわち、(1)従来は事業所単位であったものを事業者・フランチャイズ単位の制度にして対象範囲を広げる。(2)事業者が自らの削減とともに、国民の削減取組に寄与するように努めることとし、そのために、望ましい排出原単位水準や取組内容を示した指針を策定する。(3)国民の具体的な努力方法を示して支援し、(4)植林CDMの具体的な補填手続きを定め、(5)都道府県や指定都市だけでなく、中核都市や特例市についても自らの削減だけでなく、地域の排出抑制計画の策定を義務づけ、(6)センター等を活かして実施することとしている。衆議院では、エネルギー供給事業者が供給相手にエネルギー使用に伴う二酸化炭素排出量の情報を提供すること、政府が白熱電球の代替化の促進等の省エネ型日常生活製品の普及措置をとること、温室効果ガスに関わる投資や製品の利用等に関する情報提供のあり方を検討すること、国民の生活様式の改善に必要な施策を講ずることなどの修正が加えられた。この法改正が日本の温暖化防止対策の本格化のきっかけになることを期待したい。(文責:浦野 紘平)

環境省の「かんたん化学物質ガイド」と 経産省の「ケミカル・ワンダータウン」
 環境省では、化学物質の環境安全についての理解を深めるためにe-learningツール「かんたん化学物質ガイド」を公開しているが、最近、「私たちの生活と化学物質」、「乗り物と化学物質」、「洗剤と化学物質」に加えて、「殺虫剤と化学物質」が追加された。このガイドでは、質問形式やクイズで初歩的な知識を与えるレベルから、かなり詳しい専門的な知識までを順次学んでいけるように工夫されている。今後は、学校や市民団体などが多く利用するように紹介や働きかけを行うことが求められる。また、他の身近な製品についての追加のほかに、過去または現在の地域環境への影響、および地球環境や生態系への影響などについての記述の充実も期待される。
 一方、経済産業省では、「ケミカル・ワンダータウン」を公開している。このサイトでは、化学物質って何だ?「博士の家」から始まって、「おうち」、「スーパーマーケット」、「電気屋さん」など9種類のお店などに分けて化学物質の役割や利便性について解説し、環境を守るしくみや環境を守る化学等も示されている。しかし、健康や地球に悪かったこと「図書館」という部分には、オゾン層破壊しか示されていない。政府が出すなら、過去及び現在の化学物質問題についても隠さずに示した上で、より安全で安心が得られる化学物質利用への努力を示すことが必要と考えられる。(文責:浦野 紘平)


2008年3月号(No.88)

 環境省が産業廃棄物処理施設の設置・処理業許可等の平成17年度実績を公表
 環境省は、平成20年3月7日に、「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成17年度実績)について」を公表した。
 これによると、平成18年4月1日現在の産業廃棄物の中間処理施設数は19,164で前年より1,449減で、北海道、愛知県、静岡県、神奈川県などに1,000以上、合計19,164あり、そのうちの焼却施設は、13県に100施設以上、合計3,902施設となっている。また、最終処分場数は2,335で143減となてっいるが、産業廃棄物処理業の許可件数は256,947件で22,341件増、特別管理産業廃棄物処理業は25,671件で2,763件増となっている。
 広域認定業者回収量は426,192tで32,560t増であるが、再生利用認定業者再生利用量は201,120tで29,499t減、広域再生利用指定業者回収量は375,541tで33,069t減となっているものの、最終処分量は2,423万tで160万t減となっている。このため、最終処分場の残存容量は18,625万m3で142万m3増、残余年数は7.7年で0.5年増となっているが、首都圏では3.4年で横這いとなっている。
 報告徴収や立入検査の数、産業廃棄物処理業の許可取消し、特別管理産業廃棄物処理業の許可取消し、産業廃棄物処理施設の許可取消し、改善命令、措置命令などの数は減少傾向にあり、平成12年度以来急増していた取消処分数も減少に転じたものの、未だかなりの行政処分数があることが示されている。このほか、処理・処分施設の内訳や回収物・再利用物の内訳など、様々な基本データが提供されており、今後の産業廃棄物問題の抜本的改善への利用が期待される。(文責:浦野 紘平)

環境省が水生生物保全の類型指定案を公表
 環境省は、「水生生物の保全に係わる水質環境基準の類型指定について」の第二次答申を公表し、平成20年2月29日から3月29日まで意見募集している(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=9414)。
 これは、平成18年6月30日に告示された北上川水系、多摩川水系、大和川水系、吉野川水系の類型指定に続くものであり、利根川(矢木沢ダム貯水池、藤原ダム貯水池、奈良俣ダム貯水池を含む)、鬼怒川(川治ダム貯水池、川俣ダム貯水池を含む)、江戸川・旧江戸川、中川、綾瀬川、渡良瀬川(草木ダム貯水池を含む)、神流川(下久保ダム貯水池を含む)、荒川(二瀬ダム貯水池を含む)、霞ヶ浦・北浦・常陸利根川、および東京湾について、水域の概況、水質、水温、河川構造、および魚介類の生息状況などを基に、水生生物の産卵場または幼稚子の生育場としてとくに保全が必要な「特別域」の指定の要否を検討した上で、特徴のある範囲ごとに、生物特A、生物A、生物Bの類型指定と、亜鉛の環境基準の達成期間を提案したものである。
 他の水系についても順次類型指定が行われ、環境基準値の達成時期も決まることになるが、日本の水生生物保全のための環境基準は、現在、亜鉛についてのみであり、検討中のものを加えても極めて少数であるだけでなく、水産資源の保護を目的としたものである。今後は、国際的に求められている生物多様性(生態系)保全への対応や多様な汚染物質に対するバイオアッセイによる水質管理の導入などが期待される。(文責:浦野 紘平)


2008年1月号(No.87)

 環境省が第三次生物多様性国家戦略を策定
 環境省は、平成19年11月27日に、生物多様性条約に基づいた第三次生物多様性国家戦略を発表した
 この国家戦略は、我が国の生物多様性(自然環境)保全対策の基本を定める重要なものであり、平成14年に策定されたものの改訂版で、第1部「戦略」と第2部「行動計画」からなっている。
 第1部「戦略」では、生物多様性が我々の(1)生命の存立基盤、(2)資源利用できる価値、(3)文化の根源として、また(4)暮らしの安全性確保にとっていかに重要であるかとともに、地球温暖化による深刻な影響についても分かりやすく説明している。
 また、過去100年間に破壊してしまった生態系を今後100年かけて回復する「100年計画」を提示した上で、今後5年間での取り組みの基本戦略として、(1)生物多様性を社会に浸透させる、(2)地域における人と自然との関係を再構築する、(3)森・里・川・海のつながりを確保する、(4)地球規模の視野をもって行動するという4つの戦略を掲げている。
 第2部「行動計画」では、上記の戦略を実現する具体的施策を示している。とくに、「生物多様性」の認知度を30%から50%以上とすることやラムサール条約湿地を10か所増やすことなどの数値目標を設定するとともに、実施省庁を明記し、地域戦略の策定指針や企業活動ガイドラインの作成、評価指標の開発や人材養成、および農林水産業との連携などを示した点が特徴になっている。
 日本だけでなく、世界中で急速に失われてきている生物多様性を保護・回復することは、人類の将来にとって極めて重要なことであり、有害化学物質の影響の低減を含めた、一層積極的な取り組みが期待される。(文責:浦野 紘平)

各地で食の安全・安心条例制定の動き
 食品に対する不安が高まるなか、全国17都道府県で「食の安全・安心条例」が制定されてきている。例えば、関東7都県では東京、埼玉、千葉、栃木、群馬の5都県で制定され、神奈川県でも昨年12月に生活協同組合連合会を中心とした「条例制定連絡会」が結成されている
 これらの条例では、食中毒問題以外に、食品添加物や残留農薬などの化学物質問題、遺伝子組替え食品、BSE等の動物疾病、トレーサビリティなどの問題に対して、事業者と行政と消費者が協力した食の安全と安心確保のシステム作りを目指している。具体的には、利害関係者全体が参加する審議会の設置、事業者の情報提供の充実と見学受け入れ等、および情報や学習機会、検査・監視体制、緊急時対策の充実などが求められている。
 これらの適切な発展が期待されている一方で、狭い視点で、感覚的に目先の過剰な安全や安心を求めると、別の大きなリスクや犠牲が生まれることにも十分注意する必要がある。
 例えば、賞味期限切れ食品等の大量廃棄問題、生産・輸送時の大量エネルギー消費問題、途上国での過酷な食品生産労働問題、バイオ燃料と食糧の競合問題など、食品を巡る幅広い問題についても同時に考えることを忘れてはならない。
 このようなことは、有害化学物質問題や地球環境問題でも共通したことであり、日本社会がこのようなリスクコミュニケーションとリスク管理の経験を経て、成熟することを期待したい。(文責:浦野 紘平)


2007年11月号(No.86)

 千葉県がVOC排出抑制促進条例を公布
 千葉県は、平成14、16、17年度の光化学スモック注意報発令日数が全国ワースト1位であることから、原因となるVOC対策を進めるため、平成19年10月19日に「千葉県揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組の促進に関する条例」を公布した。
 この条例は、平成20年4月1日から施行される。
 対象施設は、VOCを使用する有機化学工業製品の製造施設(年間の最大製造量合計が5,000トン以上)、油脂加工製品・石鹸・合成洗剤・界面活性剤または塗料の製造施設(年間の最大製造量合計が1,000トン以上)、塗装・印刷・接着・洗浄・動植物油脂製造施設(年間の最大使用量が6トン以上)、ドライクリーニング施設(年間の最大使用量が6トン以上)、37.8℃での蒸気圧が20kPaを超えるVOCの貯蔵タンク(容量500kL以上、屋外密閉式・浮き屋根式を除く)および移動タンク・貯蔵所・貨物充填・出荷施設(消防法規定、合計容量500kL以上)などの施設とされている。
 これらの施設を設置する事業者に対して、(1)県が示す自主的取組指針に留意した自主的取組計画の作成と報告、取組実績報告、それらの公表を義務づけ、(2)必要な限度において、報告を求めたり、立入検査を行い、(3)報告義務違反、虚偽報告、報告・立入拒否などには5万円以下の過料を課すこととしている。なお、対象事業者以外も自主的取組を報告できるようにしている。
 このような地域の実態にあわせたVOC対策制度は、大気汚染防止法の実効を担保するために必要なことであるが、多数の関連事業者の納得が得られるような説明も重要である。また、周辺自治体をはじめとする他の自治体、および地域住民との協議や連携も望まれる。(文責:浦野 紘平)

UNEPが第1回水銀に関するアドホック公開作業部会を開催
 国連環境計画(UNEP)は、平成19年11月12〜16日に水銀に関するアドホック公開作業部会第1回をタイで開催した(http://www.chem.unep.ch/mercury/OEWG/Meeting.htm(UNEP), http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=9060(環境省))。
 本部会は、2007年2月の第24回UNEP管理理事会で、条約制定の可能性も含めた水銀対策強化を検討するために設置されたもので、各国政府代表、国際機関、NGO等約200名が参加し、それぞれの意見を出した。EUおよびアフリカ各国は、例えばPOPs条約の新規議定書や新規の水銀条約の制定など、法的拘束力のある文書の制定を支持し、米国は自主的取組の強化を主張し、日本は、まず自主的取組で水銀対策や途上国支援を進め、並行して法的拘束力のある文書の必要性を検討するという現実的アプローチを主張した。
 また、管理理事会で決議された7つの優先課題である(1)人為的な大気への排出削減、(2)水銀含有廃棄物の処理対策、(3)製品・生産工程での水銀需要の削減、(4)水銀供給の削減、(5)環境影響の少ない水銀の長期保管、(6)汚染地の修復、(7)環境曝露・モニタリングや社会経済的な影響等の知識の増進に対応する施策がリストアップされ、作業計画などが議論された。今後は2008年9月頃に開催される第2回会合で結論を得て、2009年2月頃の第25回管理理事会で報告される予定となっている。
 「水俣病の教訓」を活かし、世界でこれ以上水銀汚染で苦しむ人を増やさぬよう、日本の積極的な行動と提案が期待される。(文責:加藤 みか)


2007年9月号(No.85)

 環境省が4冊目の「かんたん化学物質ガイド」を作成・公表
 環境省は、平成19年8月30日に「かんたん化学物質ガイド 殺虫剤と化学物質」を作成・公表した。
 このガイドは、子どもを含めた市民向けに、身近な化学物質の誤った利用や廃棄によって起こる人や動植物への悪影響のおそれ(環境リスク)を減らすための基礎知識を提供することを目的に作成されている小冊子「かんたん化学物質ガイド」シリーズの4冊目であり、すでに、「私たちの生活と化学物質」、「乗り物と化学物質」、「洗剤と化学物質」が作成・公表されている。この小冊子シリーズは、環境保健部環境安全課宛に申し込めば、郵送代だけで入手できる(詳細は上記H.P.参照)。
 4冊目の「殺虫剤と化学物質」では、まず、殺虫剤がどうして使われるようになったのか、どんな化学物質が使われているのかを紹介し、次に、殺虫剤がどのくらい使われ、どのくらい環境中に出て、環境中でどのようになるのかを述べ、さらに、殺虫剤が人の体にどこから入るのか、安全性はどうやって調べるのか、また、害虫以外の動物や植物に与える悪影響はどうなっているのかを説明し、最後に、殺虫剤の上手な使い方や害虫を増やさない方法と環境リスクを減らすために家庭でできる工夫について述べられている。また、さらに詳しいことを知りたい人向けのホームページの紹介もされ、インターネット上で楽しみながら学べるe-ラーニングも計画されている。
 このような化学物質についての市民向けの情報が提供されることは非常によいことであり、今後、専門的な無難さより、一層の分かりやすさと、知識から行動に繋がるためのインパクトのある編集が期待される。(文責: 加藤 みか)

NITEがリスクコミュニケーション国内事例を公開
 平成19年8月30日に(独)製品評価技術基盤機構(NITE)がリスクコミュニケーションの国内事例をホームページ上に掲載した。
 「地域住民などの関係者に対し、化学物質管理等を含む環境や安全に関して、情報公開や対話を行った事例」を地域別、およびリスクコミュニケーション実施形態(タイプ)別に整理して紹介している。また、NITEがこれまでに実施したリスクコミュニケーションに関する調査や報告等の資料も併せて整理、公開されている。
 地域別事例では、県ごと、実施主体ごとに内容と関連する資料や環境報告書等が参照されている。タイプ別事例では、地域対話集会・環境懇親会(参加人数規模別)、環境への取り組み報告を含む工場見学、環境への取り組み報告を含む交流会・お祭り、環境報告書を読む会、環境モニター・パトロール、ステークホルダーミーティングなどに分けて整理されており、関連するホームページや報告書等が参照されている。これらの情報はNITEの調査等によって集積されたもので、9月21日現在、182社分が集められているが、その他の事例や推薦を随時受け付けており、今後も事例が増強されていく見込みである。
 このような事例は、環境への配慮、地域住民など関係者との対話の姿勢を持っている企業等の証でもあり、今後、情報提供主体から双方向の意見交換・理解への一層の発展が期待される。(文責:浦野 真弥)


2007年7月号(No.84)

 経産省がリスク評価ガイドブックを公表
 経済産業省は、6月22日に事業者向けの「化学物質のリスク評価のためのガイドブック」を公表した。このガイドブックは、「入門編(18頁)」、「実践編(72頁)」、及び「附属書(93頁)」からなり、全てダウンロードできる。
 入門編では、化学物質のリスクの説明と化学物質の環境リスク評価の実施手順の要点、事業者の環境リスク評価の取り組み事例が紹介されている。
 実践編では、化学物質の環境リスク評価の理論として、化学物質のリスクの説明と事業者による環境リスク評価実施のメリット、環境リスク評価の手順、シナリオ設定、有害性評価と評価基準値の設定、曝露評価、およびリスク判定の方法が示され、また、環境リスク評価の実践例としてヒト健康のリスク評価と環境中の生物のリスク評価についての実践例が示されている。
 附属書では、リスク評価の参考となる情報源リスト、有害性評価の参考情報、発がんと経口曝露のリスク評価の考え方、曝露評価に使えるツール、及び略語集などが記載されている。
 このガイドブックは、従来のリスク評価方法をまとめたもので、化学物質を取り扱う事業者だけでなく、行政の環境部局担当者、関心の高い市民や学生などにもリスク評価の現状の理解に役立つものである。一方、毒性情報及び環境濃度などの曝露情報や予測計算モデルが不足していたり、信頼性に課題がある中で、企業の経営リスクを低減する予防的な環境リスクマネジメントのためには、本ガイドブックに示されている以外に、リスクランク分け評価や新しい環境モニタリング方法の導入などの一歩進んだ自主管理が求められていることも忘れてはならない。(文責:浦野 紘平)

PRTR等の見直し方針が意見公募中
 環境省と経済産業省は、8月10日まで、化学物質管理促進法によるPRTRとMSDSの見直し等についての「中央環境審議会環境保険部会化学物質環境対策小委員会と産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会化学物質管理制度検討ワーキンググループ合同会合(中間取りまとめ)」に対する意見募集を行っている(http://www.env.go.jp/press/press.php?.serial=8565http://www.meti.go.jp/press/20070712001/20070712001.html)。
 この中間とりまとめでは、PRTRの対象物質を見直し、移動先を届出する方向としているが、建設業や病院等の対象業種の追加、取扱量・事業規模・含有率等の裾切りレベルの引き下げ、取扱量の届出追加は行わない方向としている。また、都道府県等との連携については、PRTRデータの公表や活用について述べているものの、立ち入り・指導・助言等の義務や権限付与はしないこととし、独自の上乗せ報告要求に懸念を示している。
 また、MSDSについては、GHSとの整合性を検討し、同法による指定物質以外についても対象とする方向で検討するとしている。このほか、自主管理やリスクコミュニケーション、人材養成の促進等についても提言している。
 化学物質管理制度が国際的に大幅強化されてきている中で、今後の日本の化学物質管理の中核である化学物質管理促進法(PRTRやMSDS)が、本来の目的を十分に果たせるようにするために、多くの方がこの中間報告をより良くするための意見を提出することを期待したい。(文責:加藤 みか)


2007年5月号(No.83)

 化学物質による労働者健康被害防止リスク評価報告書が発表される
 厚生労働省は、4月6日に「平成18年度化学物質による労働者の健康被害防止に係るリスク評価検討委員会報告書及びそれに基づく行政措置について」を発表した(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/04/h0406-4.html)。これは、平成18年9月に設置された検討会の初めての報告書であり、エピクロロヒドリン、塩化ベンジル、1,3-ブタジエン、ホルムアルデヒドおよび硫酸ジエチルの5物質についてのリスク評価の結果と、それに応じた厚生労働省の対策を示したものである。
 これによると、塗装、配合、サンプリングの作業等で曝露されるホルムアルデヒド、そのものの製造工程や合成ゴム製造工程での作業等で曝露される1,3-ブタジエン、樹脂製造工程の触媒として使用する作業等で曝露される硫酸ジエチルについては、いずれも個人曝露量の測定値が目標とする評価値を超える例が認められたことから、設備の密閉化、局所排気装置等の設置、作業環境濃度の測定、呼吸保護具の使用等の対策を行うとともに、労働安全衛生関連法令の整備を行うべきであるとしている。また、エピクロロヒドリンと塩化ベンゾイルについては、今回は個人曝露量の測定値が評価値を超える例はなかったが、有害性が高いので、事業者は労働者の健康被害の予防措置を徹底し、国は指導を続けるよう求めている。
 同検討会は今後も有害化学物質のリスク評価と対策を進めるとしているが、多数の有害化学物質に対して手遅れとならないような早期の評価と対策、および大気への排出との関係などにも十分注意した措置が望まれる。(文責:浦野 紘平)

公害防止に関する環境管理のあり方報告書が発表される
 経済産業省は、4月16日に「公害防止に関する環境管理のあり方」についての委員会報告書を公表した(http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g70413a01j.pdf)。これは、最近、義務づけられた流量や濃度を全く測定しなかったり、回数を減らしたにも拘わらず、測定したと虚偽の報告をしたり、測定値を改ざんしたケースが幾つも見つかってきたため、事業者向けのガイドラインと地方自治体の取組や今後の取組のあり方を示したものである。
 事業者向けガイドラインでは、まず、不適正事案とその構造的背景や課題を整理し、不適正な行為によって、環境悪化をだけでなく、事業者の法的制裁や企業価値の低下、事業活動への悪影響など、深刻な影響が出るとしている。次に、事業者の環境管理の基本的方向性として、全社的環境コンプライアンスの実践、各主体の役割、公害防止統括者や公害防止管理者の役割、実質的PCDAサイクルの実践などを示し、さらに、具体的方策として、工場・現場と本社・環境管理部門それぞれの取組、従業員教育、利害関係者との日常的コミュニケーションへの取組のあり方などを示している。
 また、地方自治体の取組については、基本的方向性、公害防止管理者の届出時の対応、報告の徴収や立入検査時の対応、コミュニケーションと啓発活動についての取組のあり方などを示している。
環境保全のためにも、経営リスクの低減のためにも、企業の社会的責任(CSR)の重要さの認識の再点検と強化が望まれる。(文責:浦野 紘平)


2007年3月号(No.82)

 新しいVOC排出量インベントリーまとまる
 環境省は、大気汚染防止法による揮発性有機化合物(VOC)の規制と自主管理による排出削減効果(努力)の検証等の基礎となる新しいVOC排出量インベントリーをまとめた(近く環境省ホームページで公開予定)。これは、平成14年度に推計されたインベントリーの精度を上げるために見直されたものである。 これによると、前回のインベントリーに比べて塗料由来のVOCが減少し、接着剤由来のVOCやクリーニング由来のVOCが増え、削減の基準年となる平成12年度の総排出量は約150万トンから約159万トンに修正された。また、この量が平成17年度には約129万トンに約19%削減されたと推計されている。その中でもジクロロメタン(−46%)、トルエン(−41%)、キシレン(−45%)、テトラクロロエチレン(−40%)などの減少が大きいのに対して、エチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチルエーテル、工業ガソリン5号などはやや増加していると推計されている。これを業種別にみると、化学工業(−37%)、総合工事業と印刷・同関連業(−32%)、パルプ・紙・紙加工品製造業(−31%)での減少が大きく、飲料・タバコ・飼料製造業(+13%)、小売業(+6%)などは増えていると推計されている。
 化合物名や排出業種が不明なVOCが約13%あることなど、さらに調査が必要な点はあるが、業界の協力により、かなり正確なインベントリーが作られたことから、今後のVOC削減効果(努力)の検証や光化学スモッグ等の低減予測などに活用されることが期待される。(文責:浦野 紘平)

5回目のPRTRデータが公開される
 化学物質排出把握管理促進法に基づき、平成17年度分の届出排出・移動量と国が推計した届出対象外排出量のデータが2月23日に発表された。
 17年度は40,823事業所から届出があり、環境への総排出量は25万9千トン(13年度比83%)、廃棄物や下水道への総移動量は23万1千トン(同107%)、届出対象外の総排出量は、建設業をはじめとする非対象業種から11万1千トン、家庭から5万5千トン、自動車や二輪車など移動体から12万4千トンであった。排出量が上位の業種は自動車などの輸送用機械器具製造業、プラスチック製品製造業、化学工業などで、移動量が上位の業種は化学工業、鉄鋼業、電気機械器具製造業などであり、排出量が大きく減少した業種は、出版・印刷・同関連産業(13年度比55%)、化学工業(同63%)、パルプ・紙・紙加工品製造業(同60%)であった。一方、過去5年間で一度も届出がない物質が9物質、届出があっても排出量がゼロであった物質が28物質もあることが示された。
 法施行後7年を経過し、現在、経済産業省の産業構造審議会と環境省の中央環境審議会が合同会合を開催し、今夏を目途に法の見直し作業が進められている。
 対象物質と届出内容の見直し、都道府県や業種毎の届出率の検証と改善、情報の開示・利用方法の検証と改善、毒性を考慮した排出量変化の評価、NGOとの協力体制の構築など、法の本来の目的である有害化学物質管理の促進に、より有効な制度とされることが期待される。(文責:亀屋 隆志)


2007年1月号(No.81)

 経済産業省「今後の化学物質政策の方向性に関する中間とりまとめ」を公表
 2006年12月28日、経済産業省は産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質政策基本問題小委員会がまとめた今後の化学物質政策に関する中間とりまとめを公表し、その内容について2007年1月28日まで意見募集を行った(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595206038&OBJCD=&GROUP=)。
 この中間とりまとめは、国際的に導入が検討されている化学品分類表示システム(GHS)や欧州新化学品規制(REACH)の動向、化学物質管理が化学産業だけの問題からサプライチェーン全体へと拡大していることなど、化学物質を巡る社会的状況の変化に的確に対応すること、ナノ粒子など新技術や安全・安心の更なる担保などに対応する合理的規制体制の構築を目指して検討された。
 この中では当面の課題に加えて、2020年目標達成のための長期的な課題の検討および実施に向けた行動計画の提示、上市後(使用段階)の管理のあり方、国際適性度調和の戦略的実施などが示されている。また、製造・輸入量に応じた段階的な安全情報の収集・把握に関する方針や安全情報に係わるデータベースの整備、安全性情報の伝達、リスク評価・リスク管理体制、国際的動向や国際協力への的確な対応、リスクコミュニケーションおよび人材育成について提言されている。今後、この方向が多くの化学物質関連法令にどのように反映されるかが重要と考えられる。(文責:浦野 真弥)

EUでREACH指令が採択
 EUで2003年に提案され、審議されてきたREACH(Registration, Evaluation, Authorisation and Restric-tion of Chemicals:化学物質の登録・評価・認可)が、昨年12月13日に欧州議会、12月18日に理事会で採択(http://europa.eu.int/eur-lex/lex/JOHtml.do?uri=OJ:L:2006:396:SOM:EN:HTML)され、本年6月1日に発効されることとなった。
 REACHは、EU加盟国の新たな化学物質管理制度であり、予防原則の観点から、健康と環境の保護のために、市場に出る化学物質の安全性情報の登録・評価・認定を産業界に義務付けている。具体的には、(1)1t/年以上の化学物質を製造・輸入する企業は、その情報を欧州化学機関EHAに登録することが義務づけられる。また、(2)登録情報により安全性が評価され、(3)深刻な影響の懸念がある物質は、個々の用途毎に認可が必要となる。今後、約30,000と言われる対象物質について段階的に登録されることとなり、(1)高生産量化学物質および最も有害とされる化学物質の予備登録は2008年11月、(2)製造・輸入量1,000t/年以上の物質(発がん性、変異原性、生殖毒性物質は1t/年以上、水生生物への毒性が非常に強い物質は100t/年以上)は2010年11月、(3)100t/年以上の物質は2013年6月、(4)その他は2018年6月が登録期限とされている。
 REACHは、企業負担等の多くの課題が指摘されているが、化学物質管理促進への期待も大きい。国内企業も製品を輸出する場合など、無関係ではいられないが、新たな情報を活用した自主管理が促進されることを期待したい。(文責:小林 剛)


2006年11月号(No.80)

 副生HCBのBAT削減レベルが決まる
 染料・顔料の原料であるテトラクロロ無水フタル酸(TCPA)の製造過程で化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質であるヘキサクロロベンゼン(HCB)の副生が判明したことから、厚生労働省・経済産業省・環境省は11月9日に「TCPA及びソルベントレッド135中の副生HCBに係るBAT(工業技術的・経済的に可能な技術)レベルに関する報告書」を発表した(http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/)。
 第一種特定化学物質は、「難分解性・高濃縮性で人又は高次捕食動物に対して長期毒性を有し、ひとたび環境中に放出されると汚染の進行管理が困難で、人の健康等に被害を生じるおそれがある物質」である。このため、非意図的な副生であっても、BATレベル以上に特定化学物質を含有する場合は、注意義務を怠った製造と見なし、化審法で規制されることになっている。
 3省が設置した評価委員会では、関連事業者のヒアリングやパブリックコメントを実施して現在の技術レベル等の調査を行った結果、現時点では副生HCBのBAT削減レベルとして、TCPAで200ppm、TCPA由来顔料で原則10ppmが適当と評価された。さらに、今後も事業者の不断の努力が期待されており、国や評価委員会による定期的な検討・見直しを行うことが適当とされている。
 化審法に基づくBATレベルの提示は初めてであるため、パブリックコメントでは多数の意見が寄せられ、関連した3省の考え方も同時に発表された。今後の化学物質管理の新たなひとつの方向が示されたといえよう。(文責:亀屋 隆志)

カボチャからPOPs農薬が検出
 本年8月に北海道函館市で生産されたカボチャからPOPs(残留性有機汚染物質)条約に定められた有機塩素系殺虫剤であるヘプタクロルが検出された。残留農薬検査時に判明したもので、ポジティブリスト制度施行後、国産農作物では3例目の違反事例である。同制度の施行以前は、カボチャにはヘプタクロルの残留基準値が存在せず、検査も実施されていなかった。
 ヘプタクロルは、1975年に農薬登録が失効しているが、土壌残留性が高いことが知られている。そのため、登録失効前に使用したものが土壌に残留し、カボチャが吸収したものと考えられている。
 今回の発見を受けて道内のカボチャ産地の66農協が実施した自主検査の結果、サンプル全体の6.6%から基準値を超えるヘプタクロルが検出された。このため、道では「北海道ヘプタクロル残留等対策チーム」を設置している。11月10日に開催された2回目の協議により、(1)当面カボチャなどウリ科の作付けを避け、客土等の土壌改良を行うといった営農指導対策、(2)土壌調査や吸収抑制技術の開発といった原因究明と対策の検討、(3)自主検査体制の強化、(4)消費者に対する情報提供などが実施されることになった(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/heputakuroru_002)。 
 ヘプタクロルは、北海道以外でも使用されており、今後、食品衛生法に基づく残留農薬検査などによって、各地で検出される可能性がある。早急な全国調査と原因究明および対策の実施が望まれる。(文責:山科 則之)


2006年7月号(No.78)

 化管(PRTR)法改正に向けた議論が活発に
 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)は、施行後7年(平成19年3月)に見直しをすることとされている。このため環境省は、本年5月に、学識経験者、地方公共団体、産業界、市民(NGO)を委員とする「化学物質排出把握管理促進法に関する懇談会」を設置した。懇談会は公開で行われ、配布資料や議事録は環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/archive/kondankai.html)で閲覧できるようになっている。
 5月10日の第1回懇談会では、各委員から以下のような活発な意見交換が行われた。
・特定の業種や小さな事業所では、届出のために膨大な作業が発生している現状を理解すべきだ。
・集められたデータは、請求時の開示ではなく、入手が容易となるよう、国が公表してほしい。
・データの精度をさらに改善を図る必要がある。
・廃棄物の移動後の行方がわからず問題だ。
・国におけるデータの活用も不十分だ。理解を深めるためにデータを解釈して示す必要がある。
・得られたデータを解析して、プロセス改善や推計の精度向上への活用を考えなければいけない。
・例えば取扱量も届出してもらい、削減努力が見えるような仕組みが必要だ。
・どうすればリスクが減るかの議論が欠けている。
・地域とのリスクコミュニケーションの中では、火災だとか爆発事故の際の急性毒性や危険性に関する物質について高い関心をもたれている。
・GHSやSAICMなど、多様な化学物質管理が求められる中、優先順位も必要であるし、化管法を超えた社会的な仕組み作りの議論も必要だ。
 このような自由闊達な意見交換について、一部の報道では「早くも対立構造か」と煽る記事もあるが、この懇談会を第1回から傍聴し、多くの委員とも面識ある筆者は、「これぞ大きなリスクコミュニケーションが行われている」と理解しており、実効性を高める見直しの方向が示されることを期待している。懇談会は本年秋口に終了し、その後、関係省での具体な検討やパブコメ等が行われることと思う。(文責:亀屋 隆志)


2006年5月号(No.77)

 東京都が条例で簡易分析を土壌調査に活用
 東京都は3月29日に土壌汚染調査(重金属等)の簡易で迅速な分析技術を公表した(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2006/03/20g3t300.htm)。 これまで、土壌汚染の濃度や分布把握のための土壌調査や処理対策時の分析費用が高額で、時間を要していたことから、そのコスト低減・期間短縮を目指して、実用段階にある技術を公募し、選定したものである。実証試験およびヒアリングの結果から、(1)土壌汚染対策法に定められた分析方法(公定法)と比べて簡便で短時間に測定できること、(2)一定の精度(公定法の±20%)と感度(基準値の1/2)が確保されていること、(3)人体および環境に有害な物質等を使用しないこと、という評価基準に基づいて選定された。技術の詳細はhttp://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/chem/dojyo/kanizinsoku2.htmに記載されている。
 選定された技術は、東京都環境確保条例に基づく概況調査で汚染が確認された際の汚染範囲の絞り込みをする場合、また、浄化対策時に処理範囲の確認をしながら掘削除去を行う場合に使用できるとされている。条例に基づく調査で使用可能と位置づけて今後、実用上の測定精度や分析妨害物質による影響などについての情報の蓄積・開示、技術の改良や追加等も必要となるであろうが、簡易分析法を環境行政へ活用する先鞭を付けた点は画期的であり、大いに評価される。今後、国や他の自治体、および他の環境管理分野でも簡易測定法が公認されて活用されることを期待したい。(文責:浦野 真弥)

PCB処理事故、安全教育の再徹底を
 事故が相次いだ日本環境安全事業(株)(JESCO)のPCB廃棄物処理事業が、今月より豊田事業、夏には東京事業の試運転がそれぞれ実施され、問題が発生しなければ、処理が再開される見込みとなった(http://www.jesconet.co.jp/)。
 両事業の事故はPCBが周辺環境へ漏洩するという重大なものであった。昨年11月に発生した豊田事業の場合は、計器の脱落によりPCB濃縮洗浄油から揮発したPCB蒸気の一部が未処理のまま大気中に排出された。今年3月に発生した東京事業の場合は、微量のPCBを含む排水の一部が一時貯留槽からあふれ出して、土壌や雨水ますに漏洩した。
 これらの事故は、設計上の欠陥と人的要素が重なって起きた。豊田事業では、漏洩を検知するオンラインPCB分析計の警報が出ても排ガス処理装置への自動切換されない設計になっており、かつ運転員が警報を故障とみなして手動切換もしなかった。また東京事業でも、設置許可申請では認められていない屋外仮設タンクを事業所独自の判断で設置して事故が発生した。
 処理施設をフェイルセーフや多重防護の視点で十分に整備した上で、それを管理・運転する人間の安全意識を十分に高めなければ事故は防げない。 JESCOは事故発生後、「事故対策委員会」を設置し、再発防止と安全対策の確立に向けた検討を重ねているが、PCB処理に対する不安をなくすために、全PCB処理施設の十分な安全点検とともに、管理者及び作業者の徹底した安全教育を行って欲しい。(文責:山科 則之)


2006年3月号(No.76)

 環境省・経産省が平成16年度PRTRデータ公表
 環境省と経済産業省は平成18年2月24日、PRTR集計データの16年度版を公表した(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=6874)。PRTR制度により各事業者から届出された354物質の排出量を集計したもので今回で4度目の公表となる。
 平成16年度の1年間に届出対象事業者(約4万事業所)から河川や大気に排出された化学物質量は約27万トン(平成15年度:約29万トン)、廃棄物に含まれて事業所外へ移動した量は約23万トン(同:23.5万トン)にのぼっていた。いずれも前年度と比較して減少傾向にあり、事業者による化学物質管理の改善が進んでいるものと考えられる。
 業種別では輸送用機械器具製造者が最も多く、化学工業など上位10業種の排出・移動量だけで全体の82%(約41万トン)に達していたほか、化学物質別でもトルエンやキシレンなど上位10物質だけで全体の74%(36.9万トン)を占めていた。
 また、国が推計を行った届出対象外の排出量は、より信頼性の高い推計値を得るため用いるデータを一部見直したことから、約35.7万トン(同:34.2万トン)と前年度と比べやや増加している。
 PRTRデータの活用については、環境省の市民向けのガイドブック「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」が参考になる()。この他、当研究会でも身近な地域での人や生物への悪影響の可能性や化学物質を自主管理するための目標濃度等が分かる情報「使いやすいPRTR情報」をウェブサイトで公開しているので、ぜひ活用して頂きたい。H16年度データの加工結果の公表は夏頃を予定している。(文責:山科 則之)

環境省が低濃度PCBの焼却実証試験を実施
 環境省は、平成18年3月13日〜23日にかけて全国3箇所の産業廃棄物処理施設で低濃度PCBを含む絶縁油の焼却実証試験を実施した(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=6918)。
 現在、PCBを使用していないはずの絶縁油が低濃度のPCBに汚染しているケースが数多くあることが判明し、その処理体制整備が課題となっている。処理方法としては、本誌No74号のOPINION/OBJECTION"微量PCB含有廃棄物等の焼却処理を認めよう"(横浜国大・浦野教授)に記述しているとおり、焼却処理が有力視されている。
 今回実施された実証試験は、安全・確実に処理できることを確認するためのもので、1,100℃以上の高温で焼却可能な既存の産業廃棄物処理施設・溶融施設で行われた。実施された施設は、福岡県北九州市の光和精鉱(株)、広島県福山市の(株)カムテックス、愛媛県新居浜市の(財)愛媛県廃棄物処理センターの3箇所。試験では、専門家の助言を得ながら、数10ppm程度のPCBを含む絶縁油を焼却し、排ガス・排水中のPCB濃度等を分析することにより、適正に処理されていることが確認されることになっている。現時点(3月20日)では結果が判明していないが、安全・確実な処理が確認されれば、協力が得られる他の施設やより低温での分解についても実証試験を行う予定である。
 今後、適切なリスクコミュニケーションの実施や安全・確実な焼却処理の導入の検討などを行うことで、低濃度PCB問題が速やかに解決することを期待したい。(文責:山科 則之)


2006年1月号(No.75)

中国が「汚染事故多発期に」
 中国では、昨年11月に吉林省の石油化学工場爆発事故で約100トンのニトロベンゼン等が松花江に流入し、松花江を水源とする黒竜江省ハルビン市の市民400万人への給水が停止された事件をはじめ、河川汚染事故が続発している。
 今年に入っても湖南省の湘江に精錬工場の汚水が流れ込み、カドミウムの濃度が一時環境基準の数十倍に達した事故や河南省の発電所から黄河支流伊洛河にディーゼル油6トンが流出した事故、重慶市の綦江に化学肥料工場の排水管の破損で硫酸600トンが流出する事故などが報告されている。これをうけ国家環境保護総局の王玉慶副局長は、「一部地方の不適切な経済発展が環境保護活動に大きな圧力を加え、わが国はすでに環境汚染事故多発期に入った」と述べ、汚染事故が今後も続く可能性を示唆した。
 経済の高成長を続ける中国では、重工業分野で環境対策が遅れている一方で、工場の多くは大河川の近くや都市の中心部に建設されているため、環境汚染事故は重大な影響をもたらす。また、中国は水資源の乏しい国で、全国661都市のうち3分の2で水不足、とりわけ100都市で水不足が深刻化している。そのような中での河川汚染事故は、生活や産業の危機であり、水資源の安全管理や環境問題への対応が緊急かつ重要な課題になっている。
 中国政府は汚染物質を排出する企業への監督を強化するとともに、水質汚染が迅速・安価・簡易に判断できる環境測定装置・技術の開発や重大な水質汚染事故の応急措置の導入などを強く求めている。また、隣国である日本には、産業界の技術力や過去の公害問題解決の経験を生かした協力と活躍が期待されている。(文責:劉 鋭)

環境省が土壌汚染の調査・対策事例等を公表
 環境省は平成17年12月20日に「平成15年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果の概要」を公表した。
 これによると平成15年度に都道府県等が把握した土壌汚染事例は、調査事例が701件、このうち、土壌環境基準または法の指定基準を超える汚染が判明した超過事例は349件であり、法適用対象はは調査事例49件、超過事例21件のみであった。また、平成16年3月31日までに都道府県等が把握した土壌汚染調査事例の把握の経緯をみると、「事業者等による調査」が「行政による調査」を大きく上回った(全調査事例数約81%)。これらのデータから、調査事例および超過事例のうち大多数が法適用対象外であり、業者委託等を含む事業者等による自主調査も多く行われていることがわかる。
 一方、(社)土壌環境センターによると、我が国の潜在的土壌汚染サイト数は30万程度と推定されており、平成16年3月31日まで把握されている調査事例数2,802件と比較しても、今後ますます汚染調査の機会や事例が増加することが予想される。
 このような中で、様々な簡易測定法が開発され、その使用方法や効率的調査方法も提案されてきている。今後、必ずしも公定法での測定結果を要しない法適用対象外の調査や事業者等による自主的調査、あるいは法対象の調査での公定法の補完などに、簡易測定法や効率的な調査方法が導入されることなどにより、土壌汚染の調査と対策が一層促進されることが望まれる。(文責:宇野 流沙)


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