エコケミストリー研究会の情報誌「化学物質と環境」のRADAR に掲載した情報を紹介しています。
下記の情報をご利用になる場合は、各情報元をご確認下さい。
このページは、2000年から2005年までの日本の動きのアーカイブです。最新の日本の動きはこちらをご覧ください。
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東京都の新しい産業廃棄物対策
東京都は平成17年11月11日、有害廃棄物の都内処理体制の確立等を盛り込んだ、新しい「産業廃棄物対策」を発表した(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2005/11/20fbb700.htm)。
東京都が臨海部の埋立地に整備している「スーパーエコタウン」内の廃棄物処理施設等を活用し、有害廃棄物処理やリサイクルを推進する体制を確立する。対策の柱として3つが挙げられている。(1)有害廃棄物の都内処理体制の確立:アスベストや感染性廃棄物など有害廃棄物の6割は都外で処理されていたが、今後は都内で処理する方針。特にアスベストについては当面セメント固化したものを処分場に埋立、感染性廃棄物やPCB廃棄物については、スーパーエコタウン事業で整備している無害化処理施設で処理する。
(2)不法投棄対策の強化:関東八都県市が提案している建設廃棄物の総合的管理に関する実証試験の実施、排出事業者・処理業者の報告公表制度の実施、ICタグによる感染性廃棄物の追跡管理のモデル事業の実施などを行う。
(3)リサイクルの推進:廃プラスチックのエネルギー回収や建設泥土を都内工事で埋め戻し用資材等として有効利用する事業などを行いリサイクルの推進を図る。
産業廃棄物税の導入や廃棄物の越境移動の規制、逼迫する処分場残余年数、不法投棄や有害廃棄物による健康被害の懸念など、廃棄物を巡る問題は年々大きくなる一方である。今回の都の取り組みが実効性を伴う計画になることを期待する。また、今後、地方の事情に合わせた適切な廃棄物対策が実施されることを望む。(文責:山科 則之)
官民連携の既存化学物質安全性点検プログラムのスポンサー公表
厚生労働省、経済産業省および環境省が、産業界と連携して推進する「官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラム(Japanチャレンジプログラム)」(http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/kizonpro/top.htm)に、9月末の時点で47企業2団体から自主的にスポンサーとして参画があり、海外で情報収集予定のない63物質の情報収集を行うことが公表された。
本プログラムは、1992年に始まったOECDの高生産量化学物質(HPVC:High Production Volume Chemicals)点検プログラムの一環で実施されるもので、生産量の多い化学物質(OECD加盟国の少なくとも1ヶ国で年間1,000トン以上生産されている化学物質)について、加盟国で分担して有害性の初期評価に必要な信頼性の高いデータを収集し、評価文書を作成するものである。現時点では 4,843物質が対象となっており、2004年までに約 500物質の初期評価が終了し、結果も公表されている(http://www.jetoc.or.jp/HP_SIDS/SIAP_1.htm)。
2010年までには新たに1,000物質のデータを収集し、日本は96物質を担当する。
本取り組みは、HPVプログラムを加速するための新たな試みであり、スポンサーは随時募集し、公表することとなっており、多くの企業の積極的な参加が求められている。
企業の環境配慮活動が社会的に評価されるとともに、身の回りの化学物質の安全性評価が飛躍的進展することを期待したい。(文責:小林 剛)
RoHS規制対象物質対応で資源有効利用促進法施行令等が改正
経済産業省は、平成17年9月13日に「資源有効利用促進法施行令」と同法の「指定省資源化製品・指定再利用促進製品の判断基準省令」の改正案をまとめ、平成17年10月13日まで意見を募集している(http://www.meti.go.jp/feedback/data/i50913ej.html)。
これは、産業構造審議会の製品3Rシステム高度化WGの取りまとめで、製品に含まれるEUの「電機電子機器中の特定有害物質使用制限指令 (RoHS)」規制の対象6物質(鉛及びその化合物、水銀及びその化合物、六価クロム化合物、カドミウム及びその化合物、ポリブロモビフェニル、ポリブロモジフェニルエーテル)への対応が提言されたことを受けたものである。
パソコン、ユニット形エアコンディショナ、テレビ受像機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電子レンジ、衣類洗濯機と複写機の8製品の製造業者だけでなく、輸入販売事業者にも規制6物質について、(1)管理のための措置、(2)含有と含有箇所に係る表示、(3)含有に関する情報提供などを行うよう求めている。
一方、環境省の検討会でも(1)上記の製品情報開示のほか、(2)廃棄物排出事業者が処理業者に情報提供すること、(3)廃棄物MSDSを明確化すること、(4)消費者にも情報提供すること、(5)グリーン購入法基本方針にも情報記載を求めることなどを提言した報告書をとりまとめている(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=6263)。
これらによって、製品に含まれる有害物質情報の開示が拡大され、環境影響の小さい製品への転換や循環型社会形成への取組みが一層促進されることが期待される。(文責:井上 健太)
環境省が「水環境総合情報サイト」を開設
環境省は平成17年9月9日、水環境関連の情報を地図情報とあわせて提供するWebサイト「水環境総合情報サイト」の開設を発表した(http://www.
env.go.jp/water/mizu_site/index.html)。
環境省は、水環境に関するデータを収集してきたが、それらが紙媒体として存在していたことや総括的な公開がなされていなかったため、その価値を十分に生かしきれてこなかった。そこで、これらデータおよび関連する情報を総括したデータベースを整備するとともに、一般市民に分かりやすく情報を提供するシステムとして「水環境総合情報サイト」が開設された。
本サイトでは以下の情報が提供されている。
(1)水質汚濁防止法に基づき都道府県等で測定された公共用水域水質データ、(2)水浴場水質データ、(3)全国水生生物調査結果、(4)名水百選(昭和60年環境庁選定)の地域情報、(5)日本の水浴場88選(平成13年環境省選定)の地域情報、(6)「東京湾再生のための行動計画」(東京湾再生推進会議)におけるアピールポイントの地域情報
また、本サイトでは、地理情報システム(GIS)の活用により、観測地点の位置関係を視覚的に把握しながら、データや情報をみることができるため、一般市民にも理解し易くなっている。
今後、情報のさらなる追加がなされ、本サイトが水環境管理や環境学習などに効果的に活用されることが望まれる。(文責:志村 将大)
政府が5つの石綿(アスベスト)対策示す
過去に石綿を製造したり、取り扱っていた事業所の従業員とその家族や周辺住民に、石綿関連疾患によるとみられる健康被害が多発していることが複数の企業から公表された点を踏まえて、政府の「アスベスト問題に関する関係省庁会議」は、平成17年7月11日に石綿問題への総合対策を公表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=6175)。
石綿は天然に産出する鉱物繊維の一種である。耐熱性や耐薬品性、耐摩耗性などに優れ、建設資材(約9割)や自動車摩擦材などに使われ、1960年代から2000年にかけて毎年10万トン以上が輸入され大量に使用された。しかし、吸引すると肺ガンや中皮腫などの健康被害が発生する恐れがあり、段階的に使用が禁止され、昨年10月に一部の例外を除き、製造・使用が禁止された。
石綿関連疾患は、70年代に製造工場や造船、建設現場における労働者災害として顕在化しているが、労災認定者数が少なく、十分な補償を受けてきたとは考えにくい。また、周辺住民の健康被害の救済措置はない。潜伏期間が数十年と長いだけに、今後、発病者が増加していく懸念も強い。
そこで、政府が示した対策は、(1)石綿被害に関する実態把握、(2)石綿関連事業場労働者、退職者、その家族、周辺住民を対象とした健康診断窓口の開設、(3)健康診断の呼びかけ、労災補償制度や健康管理手帳制度の周知徹底、(4)建築物解体時の飛散予防等の徹底、(5)石綿含有製品の代替化の促進の5つである。また、環境省では、大気中への飛散防止対策および廃石綿適正処理の徹底を求める通知文書を各都道府県等に送付した。
関係機関が連携・協力して被害低減のために適切な対応をはかり、石綿による「負の遺産」の解決を図ってほしい。(文責:山科 則之)
進まぬ埋設農薬処理
過去に埋設処理したPOPs(残留性有機汚染物質)系農薬の対策の遅れが相次いで報道された。
福岡県では集中保管している農薬工場内の土壌や地下水から(毎日新聞,5/25)、宮城県は集中保管している工場敷地内の土壌から(河北新報,7/4)、山形県では14箇所中6箇所の埋設箇所の土壌から(山形新聞,6/24)、指針値を超過する農薬が検出された。さらに、秋田県では、当時の書類を紛失し、埋設箇所2カ所のうち1カ所を昨年まで発見できないなど、ずさんな管理が浮き彫りになった(河北新報,7/4)。いずれも周辺への影響はないとしているが、早急な対策が求められる。
しかし、対策を行うにも課題がある。埋設農薬の処理は、「POPs廃農薬の処理に関する技術的留意事項」に基づいて対策を行うことになっており、現在、高温焼却やガラス固化により処理が行われている。しかし、埋設農薬処理のために指定された処理施設も少ない上に、億単位の処理費用が必要であることなどから処理実績は少ない。例えば、福島県では、総額3億円をかけて全量191トンを処理する計画を立てている(河北新報,7/4)。
また、国の補助事業として、"埋設農薬最終処理事業"(1/2補助、H16〜20年)があるが、予算額が小さいことや残り1/2の財源確保が難しいことなどから、十分に活用されているとは言い難い。
「負の遺産」の清算には時間がかかる。まず、国や自治体は、実態調査をしっかり進め、その結果や処理実績を公表してほしい。(文責:山科 則之)
総務省が化管(PRTR)法の改善を勧告
総務省は平成17年5月2日、「化学物質の排出の把握及び管理に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を公表した(http://www.soumu.go.jp/hyouka/kohyo_fa.htm)。総務省が18道府県等及び343事業者を対象に、化学物質の移動・排出量等届出(PRTR)制度の実施状況や化学物質の性状取扱情報(MSDS)提供制度の実施状況等を独自に調査して、関係5省(厚労省、農水省、経産省、国交省及び環境省)に改善を促したものである。
今回の行政評価・監視は、(1)未届事業者を把握して未届の理由の分析、(2)MSDSを提供しなかったことがある事業者や提供を受けなかったことがある事業者の理由の分析、(3)化学物質の管理方針の策定状況の調査等を行った。
これらの結果から、前年度の届出状況や他法令の届出台帳等の活用が不十分な点や、未届事業者を把握している道府県の割合が低いことが指摘され、これらを改善して届出が着実かつ正確に行われるよう勧告された。また、MSDSの提供が行われないケースについて、未提供事業者に対する指導が未実施である点が指摘され、提供に関する啓発活動や提供しない事業者への措置実施が勧告された。さらに、過半数の事業者が管理方針や管理計画を策定していないことから、必要性について周知を図るよう勧告された。その他、届出データの活用事例の一層の収集と事業者への提供や、現在は法の適用外であるが事業所からの多種多様な化学物質の流入が予想される下水道からの公共用水域への排出実態の把握の促進を図るよう勧告された。
関係する5省は、今回の勧告を真摯に受け止め、実態に目を向けて制度の周知徹底を図ることが望まれる。(文責:亀屋 隆志)
東京都北区土壌でダイオキシン類汚染
東京都北区は平成17年4月19日、旧豊島東小学校跡地の周辺から環境基準を超えるダイオキシン類が検出されたと発表した(http://www.city.kita.tokyo.jp/dioxin/index.htm)。
1,000pg-TEQ/gの基準値を超えるダイオキシン類が検出されたのは、豊島東保育園の園庭(最大基準値の2倍)と東豊島公園(同1.3倍)の2箇所。今年1月、団地内の旧豊島東小跡地を開発するため、区が土壌汚染調査を行ったところ、3月に入り基準値の14倍のダイオキシンを検出。これを受け、さらに団地内9カ所の土壌調査を実施した結果、上記2箇所で汚染が発覚した。現在、汚染のあった土壌が露出している部分にシートを張り、飛散防止の措置が採られている。
園児の保護者や近隣住民に対して開かれた説明会では、区から「直ちに健康被害が生じる汚染レベルではない」「ダイオキシンの健康影響は医学的にもはっきりしていない」「今後、詳細調査を行い、汚染土壌は適切に処理される」などの説明があった。しかし、住民側からは「早く土壌を入れ替えて欲しい」「原因をはっきりさせて」「園児の健康状態の追跡調査をして欲しい」といった質問や要望が続出した。また、「もっと早く対策が採れなかったのか」「調査に時間がかかりすぎる」など区の取り組みを批判する意見もあった。
今後も多くの地域で汚染が明らかになる可能性があるが、詳細な調査には時間がかかる。簡易測定を活用し、速やかに汚染状況を把握し、迅速な対策を行うことが望まれる。(文責:阿部島 美穂)
環境省が内分泌かく乱化学物質に関する新取組「ExTEND2005」を公表
環境省は平成17年3月14日、内分泌かく乱化学物質に関する今後の新たな取組方針を示す「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND2005-」を公表した。
「ExTEND2005」は、平成10年5月に策定した「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」を改訂し、新たな化学的知見と国際的な取組を反映させたもので、前回の反省を含め、特定の物質をリストアップするのではなく、すべての化学物質の中から規制の対象となっている物質、国内の使用実態、国際機関などの公的機関が公表した報告書などを参考に試験対象物質を選定するとしている。また、ヒトへの影響のみならず野生生物等の生態系への影響や天然のホルモン様物質についても視野に入れて評価することなどが盛り込まれている。
対策の基本的な柱として以下の7つを提示している。(1)市民や専門家による生態系への影響を調べるための野生生物の観察推進、(2)環境省が毎年実施している化学物質環境実態調査などの機会を利用した環境中濃度の実態の把握及び暴露状況の測定、(3)生態系やヒトへの影響を明らかにするため個体レベルと細胞・分子レベルの基礎的研究の推進、(4)試験対象物質の選定手法の明確化とそれに基づく評価の実施、(5)有害性や暴露評価を併せた総合的なリスク評価、(6)リスク管理体制の整備、(7)Webやシンポジウム等による情報提供とリスクコミュニケーション等の推進。
国内外で化学物質政策が大きな転換期を迎えている。「ExTEND2005」も形だけでなく、市民団体や一般市民が納得できる実効性のある取り組みとなることを望む。(文責 山科則之)
日本自動車工業会、車室内VOC低減へ
日本自動車工業会は平成17年2月14日、車室内でVOC(揮発性有機化合物)低減について、自主的な取り組みを進めることを発表した。
VOCは、乾燥しやすいことや油汚れを落としやすいなどの特徴を活かし、塗料や接着剤などの溶剤、または脱脂洗浄剤として産業界で広く利用されているほか、プラスチックの原料や添加剤、殺虫剤、香料など様々な用途に利用されている。 近年、いわゆるシックハウス症候群が注目され、厚生労働省や産業界はその原因であるVOC対策に取り組んできている。日本自動車工業会では、車室内を居住空間の一部と考え、最適なVOC濃度試験方法の研究や実態調査などを進めてきた。これらの結果を踏まえて、「車室内VOC試験方法(乗用車)」を新たに策定し、部品メーカーや素材メーカーと協力して2007年度以降の新型乗用車について、厚生労働省の定めたホルムアルデヒドやトルエンなどの13物質の室内濃度指針値を満足させる「車室内のVOC低減に対する自主的な取り組み」を始める。また、トラック・バス等は2005年度内を目処に自主的な取り組みを公表できるように検討している。
厚生労働省の定めた13物質の室内濃度指針値を、そのまま車室内に適用することにはやや疑問があるが、今後、これを皮切りに、狭い密閉空間である車室内の空気を管理する動きが加速され、さらに様々な生活場での室内環境が改善されていくことが望まれる。(文責 杉原全信)
国内初のPCB廃棄物処理施設が稼働
日本環境安全事業(株)の「北九州PCB廃棄物第T期処理施設」が平成16年12月18日開業し、本格的な処理が開始されることになった。昭和47年にPCBの製造禁止と保管の義務化がなされて以降、30年以上先送りされてきたPCBの無害化処理がようやく本格化する。
同社は、PCB特措法の制定により、平成28年7月までのPCB廃棄物処理が義務化されたのを受け、国の指導のもとに広域的な処理施設の整備と処理事業を行うために国の全額出資で設立された「特殊会社」である。同社のPCB廃棄物処理施設整備事業は、今回の北九州市の処理施設(西日本17県分)をはじめ、豊田市(東海4県分)、東京都(南関東1都3県分)、大阪市(近畿2府4県分)、北海道(北海道,東北,北関東,甲信越,北陸15県分)の5箇所で進められている。今回の北九州事業の開業をかわきりに、9月に豊田事業、11月に東京事業、来年8月に大阪事業、そして来年8月以降の早い時期に北海道事業が開業し、処理が本格化する予定である。
「北九州PCB廃棄物第T期処理施設」では、北九州市の区域等に存する高圧トランス等および廃PCB等を対象としている。その後に計画されている第U期工事で整備する施設と合わせて、西日本17県の高圧トランス等および廃PCBに加え、安定器、廃感圧紙紙等の処理を検討している。北九州事業は、国内初の本格的な処理事業であり、他の模範となるような適正処理を行って欲しい。
なお、北九州PCB廃棄物処理施設の視察報告も含め、PCB処理の最新動向については、当研究会・日本POPsネットワークのウェブサイトに詳しく掲載している。(文責:山科則之)
ISO14001/JIS Q14001が8年ぶりに改正
平成16年11月15日の国際規格ISO14001環境マネジメントシステムの改正に合わせて、日本工業規格「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引(JIS Q14001)」が平成16年12月27日付で改正され、同日から有効となった。(http://www.meti.go.jp/press/20041227001/041227jis.pdf)。
主な改正点は、要求事項の明確化とISO9001/ JIS Q9001(品質マネジメントシステム-要求事項)との両立性の向上の2点となっている。具体的には、(1)法的要求事項およびその他の要求事項を特定、参照する手順を追加し、要求事項の順守に関わる管理を強化すること、(2)環境マネジメントシステムを適用する範囲を決定し、決定した範囲内においては、組織の活動、製品、サービスの全てにわたり環境側面を考慮すること、(3)組織が直接管理できる環境側面に加え、環境に影響を及ぼしうる側面(間接的な環境側面)についても対応を徹底すること、(4)ISO 9001/JIS Q9001:2000との共通用語は、記述内容を同一にして、実際の運用面での品質と環境の両立性を向上させることなどである。なお、ISO14001審査登録制度の新規格への移行終了は新規格発行後18か月とし、移行期間内は改正前の1996年版と2004年版のどちらの規格も使用できるとされている。
今回の改正は、積極的な環境対応を行う企業・組織だけでなく、グリーン調達を行う調達者や企業活動等の環境への配慮を求める市民にとっても好ましいものである。形だけでなく実行ある規格となることを望む。(文責:山科則之)
POPsに関する各種技術ガイドラインが提案
2005年5月にウルグアイで開催される残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)第1回締約国会議の開催に向け、POPsに関する各種技術ガイドラインが取りまとめられている。
10月中旬に東京で開催された同条約の専門家会合において、「非意図的生成物の放出を削減するための利用可能な最良の技術(BAT)及び環境のための最良の慣行(BEP)に関するガイドライン(案)」がまとめられた。本ガイドラインでは、締約国に作成が義務づけられている「非意図的生成POPsに関する削減・廃絶行動計画」の中で考慮すべきガイドラインの一つとして想定されるもので、ダイオキシン類などを排出させない排煙浄化法の改善、廃棄物・下水汚泥のよりよい処理法、工程変更、燃焼効率の向上などを推奨している (http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5357)。
また、10月末にスイスで開催されたバーゼル条約第7回締約国会議において、POPs廃棄物に関する技術ガイドラインとして、「総合ガイドライン」及び「PCB/PCT/PBBに係るガイドライン」が採択された。これらのガイドラインには、低POPs含有廃棄物の規定やPOPs廃棄物の分解または不可逆的変換の水準などが盛り込まれている。この他、廃農薬やダイオキシン類等についての4種類の技術ガイドラインがバーゼル条約の作業部会(OEWG)で検討されている(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5404)。
これらのガイドラインは、来年5月のPOPs条約第1回締約国会議で正式に採択される予定である。本ガイドラインの発効により、POPsの適正管理・廃絶が進展することを期待する。関連情報は、当研究会・日本POPsネットワークのウェブサイト(http://env.safetyeng.bsk.ynu.ac.jp/ecochemi/pops net/)を参照されたい。(文責:山科則之)
3Rイニシアティブ閣僚会合の準備進む
環境省は、2005年4月に東京で開催予定の「3Rイニシアティブ閣僚会合」の準備を進めるために、省内に「3Rイニシアティブ閣僚会合準備本部」を設置すると共に、情報を広く提供するためにウェブサイトを開設した (http://www.env.go.jp/earth/3r/index.html)。
「3Rイニシアティブ閣僚会合」とは、2004年6月開催のG8(シーアイランドサミット)において合意された、廃棄物の発生抑制(Reduce)、資源・製品の再利用(Reuce)、再生利用(Recycle)を通じて循環型社会の構築を目指すための「3Rイニシアティブ(率先)行動計画」を開始するための閣僚会合のことである。
本行動計画では、(1)経済的に実行可能な3Rの促進、(2)再生利用、再生産のための物品及び原料・製品、クリーンで効率的な技術の国際的な流通に対する障壁の低減、(3)中央政府、地方政府、民間、NGO、地域社会など多様な関係者間の協力の奨励、(4)3Rに適した科学技術の推進、(5)人材育成や再生利用事業の実施等の分野で途上国との協力の実現を目的としており、閣僚会合でもこの5課題を中心に討議が行われる予定である。
なおウェブサイトでは、閣僚会合の情報のほか、各種リサイクル関連法の情報、廃棄物処理や特定有害廃棄物輸出入の状況など日本の3Rについての情報も掲載されているので参考になる。
日本主導で進められている取り組みであり、グローバルな視点から持続可能な社会の実現に寄与することを期待する。(文責 山科則之)
環境保全活動・環境教育推進法の完全施行
平成16年10月1日、人材認定等事業の登録制度の施行を受け、「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律(環境保全活動・環境教育推進法)」が完全施行される(http://www.env.go.jp/policy/suishin_ho/index.html)。
環境保全活動・環境教育推進法に基づく人材認定事業の登録とは、NPO等の民間団体が行っている環境教育の指導者育成・認定事業のうち信頼性があるものの情報提供を促進するため、主務大臣(環境大臣、文部科学大臣など)が登録を行うものであり、(1)対象となる人材認定についての規定、(2)申請方法や添付書類についての規定、(3)申請書の記載事項、(4)登録基準、(5)変更や廃止届出方法が省令で定められている。この他、同法の完全施行に合わせて「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の促進に関する基本方針」が9月末に閣議決定される予定である。
また、文部科学省では、学校での環境教育推進を目的に「環境教育推進グリーンプラン」をまとめた(http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/daisuki/04070907.htm)。このプランは、「科学技術・理科大好きプラン」の一環として実施するもので、(1)教材開発(新規事業)、(2)優れた実践活動への支援と普及(モデル地域の指定、事例発表大会の開催など)、(3)総合的な情報提供体制の整備、(4)指導者養成のための基礎講座開催(カリキュラムや教材の作成、講師派遣)などの活動を行っている。
環境教育の定義や人材認定に関して、批判や懸念の声が消えないのは事実であるが、同法の完全施行により、ともかく賽は投げられた。持続可能な社会づくりのためには、様々な主体の自発的な活動が不可欠であり、同法がそれらの取り組みの一助になることを期待する。(文責:山科 則之)
環境省、不法投棄撲滅へ取り組み強化
環境省は、本年6月に公表された「不法投棄撲滅アクションプラン」で「5年以内に5,000トンを越える大規模不法投棄をゼロにする」目標に基づき、(1)破れ窓理論に基づく地域のゴミ対策強化、(2)透明性の高い廃棄物処理システムの強化、(3)優良処理業者の育成や行政の人材育成という3つを推進することとなった(http://www.env.go.jp/recycle/ill_dum/actionplan/index.html)。このプランを受け、廃棄物処理法の改正が行われた。(1)硫酸ピッチの保管・運搬・処分等の基準設定、(2)産廃収集運搬車での許可証の写し備え付けと許可番号表示の義務化、(3)最終処分場の残余容量の把握と閲覧の義務化、(4)ミニ処分場の埋立処分基準の具体化・明確化などが盛り込まれている((1)は本年10月27日施行予定、それ以外は来年4月1日施行予定)。
また、これらの措置を担保するために平成17年度予算概算要求に以下の事業が盛り込まれている(http://www.env.go.jp/guide/budget/h17/h17-gaiyo.html)。(1)原状回復措置推進費補助金(4.4億円)、(2)不適正処理監視等対策強化費(2億円)、(3)不法投棄事案対応支援事業(0.5億円)、(4)行政人材育成費(0.3億円)、(5)立入調査指導費(0.33億円)。このうち、(3)では環境調査研修所に都道府県市の産廃担当新任職員等に集中的な専門的研修を行う「産廃アカデミー」を創設することを目指している。
不法投棄は、周辺の水質や土壌に深刻な汚染を引き起こすほか、社会的・経済的な損失も大きい。上記の取り組みが実効性を持ち、不法投棄撲滅につながることを期待する。(文責 山科 則之)
化学品の有害性表示等に関するアンケート
環境省は5月28日に「ダイオキシン類簡易測定技術評価報告書」をまとめ公表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4979)。この報告書では、「生物検定法」と「低分解能GC/MS」について技術評価を行っている。その結果、「生物検定法」については、期待される技術水準を満たしているか、改善を重ねれば期待の水準に到達する可能性があるとし、また「低分解能GC/MS」は、施設の日常管理をする際の簡易測定法として適用可能であると評価している。環境省は、検討結果を踏まえ、小型焼却施設の排ガス、ばいじん、焼却灰等の測定に限定し「生物検定法」を公定法を補完する方法として認める方針で、7月1日に開催された中央環境審議会大気部会に諮問した。今後は、前処理方法の規定や基準適合の判定基準の明確化等の課題の解決が残されている。
一方、国土交通省は、「河川、湖沼底質中のダイオキシン類簡易測定マニュアル案」を作成し、7月16日に公表した(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/05/050716_2_.html)。本マニュアル案は、簡易測定法の情報を集めて提供することにより、汚染範囲の確定作業での費用や時間の効率化に貢献することを目的としている。また、同省では土壌汚染の簡易測定マニュアルも検討中である。
簡易測定法を国が認めて環境管理に活用する方向は好ましいが、「生物検定法」より信頼性が高い方法もいくつかあり、公平性の観点から、これらを総合的に認めることが必要である。また、簡易測定法の操作の詳細まで国の許可が必要になるとかえって技術の進歩を阻害しかねないことにも十分な配慮が必要である。(文責:山科則之)
自治体が相次いでシックハウス対策を発表
東京都は、全国初となる子どもを対象とした化学物質ガイドラインをまとめた。02年度からの「鉛編」「室内空気編」「殺虫剤樹木散布編」と今回の「食事編」で全編がそろった(http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/kanho/news/h16/presskanho040707.html)。
「鉛編」では、公園などの遊具に無鉛塗料の使用を呼びかけた。「室内空気編」では、(1)適切な管理で施設内の化学物質量を減らすこと、(2)建築時以外にも定期的に化学物質濃度を測定すること、(3)子どものいる時間帯で子どもの身長にあわせた低い位置で測定を行うこと、などが盛り込まれている。「殺虫剤樹木散布編」では、殺虫剤散布の際の注意事項が記載されている。「食事編」では、ダイオキシン類、ビスフェノールA、ノニルフェノールを対象に、食事でどのくらい摂取しているかを示し、(1)摂取量を減らす調理法、(2)バランスの良い食生活を心がけることなどが盛り込まれている。
子どもの視点に立った環境施策は、1997年の先進国環境大臣会合で採択された「マイアミ宣言」で初めて盛り込まれた。アメリカ合衆国では、子供の曝露評価やリスク低減対策を先行的に実施している。EUでは、子供を対策の重点においた行動プログラムを進めている。しかし、日本では環境省が子供の行動調査などに着手している他は、具体的な対策が遅れている。今後、このような取組みが広がり、国も本格的な対策をとるようになることを期待したい。(文責:山科則之)
化学品の有害性表示等に関するアンケート
環境省は、平成16年2月に化学品の有害性表示に関する全国の消費者を対象に化学品の有害性表示等に関するアンケートの結果をまとめ、4月27日付けで公表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4909)。
これによれば、危険・有害性に関する表示を「常に見る・時々見る」は全体の6割以上あったが、現在の表示方法は、「何を意味しているのかわからない」(54.4%)、「文字が小さくて読みにくい」(53.7%)など、不満を訴える人が半数以上あり、「現在の表示方法は改善が必要」と考えている人が多いことが判明した。また、平成15年7月に国連が勧告した「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS:Globally Harmonized System)に基づく「危険」表示がある製品は「購入量や使用量を減らす」と答えた人が7割を占め、「警告」表示がある製品は「購入量や使用量は変わらない」と回答した人が過半数を超えていた。このほか、希望する情報提供として、「製品の安全で適切な利用方法についての説明」が約7割と最も多く、「誤った取り扱いをした場合の応急処置の説明」「発がん性、水生環境有害性などの言葉の解説」が続いた。国際的には2008年までの実施が目標とされ、現在、GHS関係省庁連絡会議で検討されている(http://www.env.go.jp/chemi/ghs/index.html)。
GHSの実施は、化学品による事故や人の健康被害を減らすだけでなく、環境に配慮した化学品の購入を促すことになると思われる。本アンケート調査の結果を参考にして、分かりやすいGHSの速やかな導入に向けて、関係者の一層の努力を期待したい。(文責:山科 則之)
自治体が相次いでシックハウス対策を発表
仙台市と横浜市が、相次いで自治体独自のシックハウス対策を発表した。
仙台市は平成16年3月23日に「市有施設の新築・改築時等におけるシックハウス対策マニュアル」を発表した(http://www.city.sendai.jp/soumu/kouhou/press/04-03-23/sickhouse2.html)。平成16年度以降に新築または大規模改修させる施設を対象とし、(1)建材等の選定、施工、使用開始までの対策(放散量の少ない建材を選定、十分換気できる工期設定・換気風量の設定など)、(2)化学物質濃度検査(完成時と備品納入時の2回測定など)、(3)指針超過時の対応(指針値以下を確認後に使用)という取り組みを定めている。
横浜市は平成16年4月7日に「横浜市公共建築物シックハウス対策ガイドライン」を発表し、入札参加条件に加えるなど、同日から適用を開始した (http://www.city.yokohama.jp/me/eisei/kisha/sickhouse/sickhouse.html)。(1)建築設計、工事施工管理時の配慮(建材等の制限や換気量の確保等)、(2)什器の選定方法(放散量が少ないもの)、(3)室内濃度の測定(計画的な測定の実施)、(4)換気等の日常管理方法(使用の配慮と十分な換気)、(5)測定結果の公表、といった総合的な取り組みを定めている。
身近な化学物質対策は、自治体レベルでの対策が迅速であり、かつ必要不可欠である。今後、自治体独自の対策を講じる事例が増えてくると思われる。シックハウス問題に苦しめられているあらゆる人々のためにも、各自治体の適切な対応を期待したい。(文責:山科 則之)
農薬使用基準の省令改正案に意見募集
環境省と農水省は、3月5日に農薬取締法に基づいた「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の一部を改正する省令(案)」(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4756)を公開し、4月2日まで、意見を募集している。
現行の省令では、農薬の使用回数を守るべき期間の定義が不明確であり、また、農薬の使用目的別の製剤について総使用回数を規定しているため、同一の有効成分を含む製剤が同じ時期に重複して使用されると、残留性等の観点から安全性が十分に確保できない事態が生じる恐れがある。
改正案では、農薬の使用回数を守るべき期間について、は種前の土壌薫蒸や種子の消毒、またはイチゴ等の植付けのための準備期間を含むことを明示した。また、農薬の総使用回数について、有効成分に着目した種類ごとの総使用回数(使用時期または使用の態様の区分ごとに定められている場合は、それらの区分ごとの総使用回数)の遵守を義務づけた。これらの改正内容は、パブリックコメントの結果を踏まえて、策定・公表され、公布の1年後から施行される。
今回の省令改正のほか、無登録農薬の製造・使用の禁止、特定防除資材(特定農薬)の指定、非農耕地用除草剤の農耕地への誤用や流用防止のための容器・包装や販売所への表示義務づけ等々、最近、農薬の安全確保に関する法改正や省令改正が次々と行われていることは、今まで放置されてきた農薬管理の問題点の改善につながるが、使用する農民等が「人の健康リスクの低減や生態系保護のために必要」というこれらの改正の意味を理解して改正内容を遵守するようにするためには、関係者の一層の努力が期待される。(文責 劉 鋭)
VOC排出抑制の大防法改正案が閣議決定
揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制強化のための大気汚染防止法の一部改正案が3月9日に閣議決定された(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=4763)。
この法案は、浮遊粒子状物質および光化学オキシダントの生成に影響を与えている固定発生源からのVOCの排出抑制が不可欠であるとして、法規制のみでなく、規制と事業者の自主的取組を適切に組み合わせることによって、効率的にVOCの排出抑制を行うという新しい考え方を初めて法律に位置づけたものとして注目される。
すなわち、この法案では、事業者の自主的な取組が促進されるように十分配慮した上で、(1)塗装施設及び塗装後の乾燥・焼付施設、(2)化学製品製造における乾燥施設、(3)工業用洗浄施設及び洗浄後の乾燥施設、(4)印刷施設及び印刷後の乾燥・焼付施設、(5)VOC(ガソリン等)の貯蔵施設、(6)接着剤使用施設及び使用後の乾燥・焼付施設のうち、VOC排出量が多い施設に限定して、排出口での濃度を規制するとともに、施設の新設や変更の都道府県知事への届出等を義務づけている。なお、改正法の施行は公布後2年以内とされている。
具体的な規制範囲等々は今後の検討によることになっているが、この新しい環境管理方式が成功するか否かは、地域特性への配慮がなされ、情報公開とチェック手段が担保された上で、規制対象外の事業者による自主管理が如何に進められるか、また、行政が国民の理解向上に如何に努力するかにかかっているといえよう。(文責:浦野 紘平)
環境省が硫酸ピッチ不適正処分状況を公表
環境省は、全国各地で急増している硫酸ピッチの不法投棄と不適正保管(以下不適正処分)の状況を調査した結果を12月22日に公表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4599)。
硫酸ピッチは、不正軽油の製造過程において原料のA重油と灯油に添加されている識別剤(クマリン)を除去するために濃硫酸を混入した際に生成する強酸性物質で、触れると皮膚にただれを生じるほか、気管や肺に障害を起こす亜硫酸ガスを発生する。近年この硫酸ピッチの不適正処分が急増しており、近隣住民の健康被害や周辺の土壌や地下水汚染が懸念されている。
公表結果によれば、平成11年4月1日から平成15年10月1日の期間に114件、ドラム缶約35,000本分の不適正処分が確認され、この約33%が不法投棄、約54%が不適正保管であった。さらに、12年度以前は約3,000本であったものが14年度には約14,600本と急増し、15年度も10月1日までで約12,205本とさらに増加が予想される。現状回復の実施は、件数で全体の約60%、量で約36%のみにとどまり、このうち排出事業者、搬入者、保管者によるものは件数で19%、量で47%である。
硫酸ピッチの不適正処分問題は土壌・水の汚染や健康被害問題だけではなく、不正軽油の販売による脱税や使用による大気汚染の問題とも関係している。今後、硫酸ピッチの有害性の明確化、不適正処分の防止と原状回復を促進するとともに、不正軽油の製造を厳しく取り締まるための法整備などが強く望まれる。(文責 小口 正弘)
中環審がVOC排出抑制を本格検討
平成15年9月の中央環境審議会大気環境部会の決定で設置された揮発性有機化合物(VOC)排出抑制検討会が、12月16日に検討結果を同部会に報告した(http://www.env.go.jp/air/index.html)。
この報告では、浮遊粒子状物質および光化学オキシダントの大気環境基準の達成率が改善されていないこと、VOCがこれらの生成に影響を与えていること、自動車のVOC規制は進んできたが、欧米や韓国、台湾等で行われている固定発生源からのVOC規制がわが国では実施されていないことなどから、大気環境の改善のためには、固定発生源からのVOCの排出抑制が不可欠であるとしている。また、事業者の自主的な取り組みのみに委ねた場合、熱心に取り組む業種・事業者と、そうでない業種・事業者との間で、著しい不公平が生じることが懸念されること等から法律に基づいた何らかの排出規制が必要であるとしている。さらに、低VOC化製品や新測定技術の開発の促進、現行の非メタン炭化水素のモニタリング技術の改善等も検討が必要であるとしている。この報告を受けた後、同部会が数回開かれ、法規制と自主管理の長所と短所等についての活発な議論が行われ、近く結論が出される見通しとなっている。
VOC対策の緊急性と発生源の多様性とを考慮すると、ナショナルミニマムとしての法規制と、地域特性への配慮や情報公開とチェック手段が担保された上での事業者による自主管理とを組み合わせた効率的なVOC排出抑制制度が早期に合意、確立されることが望まれる。(文責:渡部 和泉)
水道水質基準が大幅見直し
厚生労働省は50の基準項目からなる新しい水質基準に関する省令(http//www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/syourei.pdf)を5月30日に公布し、平成16年4月より施行することとした。
水道法第4条に基づく水質基準については、平成4年の改正から約10年が経過し、消毒副生成物に関してはトリハロメタン類の他にも臭素酸やハロゲン化酢酸等の問題に加え、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原菌微生物の問題、さらには内分泌撹乱化学物質やダイオキシン類等、新しい化学物質による問題が提起され、水道水質管理の充実・強化が求めらてきた。
新たな水質基準は、現行の基準に13項目を追加し、9項目を削除し、50項目とすべきとされた。水質管理目標設定項目については27項目が設定され、要検討項目としては40項目が提示された。農薬については、国民の関心が高いことを踏まえ、個別に水質基準を設定する項目のほかに、「総農薬」という検出指標値を水質管理目標とした。
有機物の指標については、従来、過マンガン酸カリウム消費量が採用されてきた。しかし、有機物の種類および反応時間等によって消費量が異なることや有機物以外にも消費するものがあることなど、種々の問題が指摘されてきたことから、有機物指標を全有機炭素(TOC)とすべきとされた。
TOC測定には、機器の購入や技術の修得などが必要であり、適切な経過措置が必要であろうが、TOCが有機物指標に採用され、データが蓄積されれば、水質管理が一層進むと考えられ、公共用水域の評価や排水の管理および規制等の対策にも今後の展開が期待される。(文責 高木 茜)
新たな海洋投棄処分管理制度の検討
環境省の中央環境審議会地球環境部会では、発効が近いロンドン条約96年議定書の締結と法改正を目指す検討を行い、「廃棄物の海洋投入実態等の概要とその評価および方針」を取りまとめた。 (http://www.env.go.jp/council/06earth/y063-03a.html)
同議定書は、陸上発生の廃棄物等の投棄による海洋汚染の防止を目的として採択され、海洋投棄および洋上焼却を原則禁止とし、海洋投棄を検討できるものを限定列挙する方式を採用するとともに、海洋投棄する場合にはその影響の検討等に基づいて許可を発給することを義務づけている。
日本では、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」および「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によって規制を行い、「陸上処分の原則」に基づき削減努力を続けている。しかし、1999年以降、主要国で下水汚泥の海洋投棄を実施しているのは日本と韓国のみと考えられ、また産業廃棄物等においても、締約国の中では投棄量・投棄品目数ともに日本が世界最大となっている。
このため、発効に遅れることなく、同議定書を締結することを目指して、海洋投棄が行われている不発弾、押収爆発物、猟銃用火薬類、ごみピット汚水などはすべて陸上処分とし、浄化槽汚泥・し尿は平成19年1月までの早い時期に中止し、アルミニウム製造かすの赤泥と建設汚泥は段階的に削減し、処分する場合は海洋環境への潜在影響を適切に評価することとしている。今後、周辺国も含めて、海洋投棄の全容を常時管理、監視するシステムの構築が望まれる。(文責:遊佐なつみ)
環境保全・環境教育推進法が成立
7月18日「環境保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が成立した(http//www.env.go.jp/policy/suishin_ho/index.html)。
環境教育については、ヨハネスブルグ地球サミットで「持続可能な開発のための教育の10年」構想が提言され、国内NGOからは環境教育・環境学習の推進に関する法律の制定が求められていた。 与党は昨年11月にプロジェクトチームを結成し、民主党は本年2月「環境教育振興法案」を参議院に提出するなど各政党が独自に協議を重ねていた。さらに、与野党間、関係省庁間で協議が重ねられ、NGOによる働きかけも奏効した結果、最終的に合意に至り、衆議院環境委員会の委員長提案として法案が提出され、成立したものである。
本法律は、幅広い分野に関係するため、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、経済産業省の共管となった。法律での義務事項は「国が基本方針を策定する」ことのみであるが、努力規定として、環境保全・環境教育について、(1)事業者、国民、民間団体の積極的参加と国・地方公共団体による施策の策定・実施、(2)学校教育での推進と教職員の資質向上等の措置、(3)職場における関連知識及び技能の向上、(4)国民、民間等による指導者育成・認定事業等の主務大臣による登録、(5)関連情報の提供、助言、相談等の拠点整備、(6)国民、民間団体等による土地等の提供に関する措置、(7)国による各主体の協働についての有効な実施方法等の周知のための措置、(8)必要な財政上等の措置等の幅広い内容が盛り込まれた。
施行は10月1日((4)は来年10月1日)で、施行後5年を目途に施行状況に応じて見直しが行われる。
本法律については、内容の大部分が努力規定であることの他、法律内の環境教育の定義や指導者育成事業の登録制度について批判や懸念の声があるのも事実である。今後、本法律が実効性の伴う法律となり、持続可能な社会の構築に向けて大きな役割を果たすよう、国や地方公共団体のみならず、企業、学校そしてわたしたち自身が環境保全・環境教育へさらに積極的に参画することが求められる。(文責 石井誠治)
代替フロン等3ガスの排出抑制状況が発表
経済産業省は、6月11日に開催された産業構造審議会化学・バイオ部会第9回地球温暖化防止対策小委員会で、2002年の代替フロン等3ガス(HFCs, PFCs, SF6)の産業界による排出抑制自主行動計画の進捗状況を発表した(http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004117/index.html)。
これらの3ガスは、エアコン、冷蔵庫等の冷媒、発泡剤・断熱材、エアゾール、半導体・電気絶縁機器製造等の分野で使用されている。この計画を策定・実施した11分野22団体における製造・使用時の漏洩防止、使用・排出量の削減、代替物質への転換等の取り組みの結果、2002年の3ガスの排出量は2,800万トン(CO2換算)となり、前年比で15%減少したことが確認された。これは、京都議定書の基準年(1995年)の5,000万トンと比べて42%の減少となる。一方、分野別に見ると、ガス製造分野で大幅に削減しているものの、冷媒分野では増加傾向にあり、また、発泡分野では2003年末でHCFC-141bの生産が禁止されること等から、今後HFCへの転換が進み、排出量が増加することが懸念されている。
なお、同時期に経済産業省は、HFC全推計排出量の約2割を占めるHFC-134aを用いたエアゾール製品(ATM機器等のほこり飛ばしや急冷剤など)の使用実態調査結果を発表し、圧縮空気や代替物質への変換を広報するとしている。
今後は、代替化とともに、各種リサイクル法やフロン回収破壊法等によるフロン対策を一層充実させることが期待される。(文責 加藤みか)
環境省が事業者の環境パフォーマンス指標ガイドラインを改訂
環境省は、平成13年2月に公表した事業者の活動による環境への影響を的確に把握し、評価することを目的とした「事業者の環境パフォーマンス指標(2000年度版)」のガイドラインをより利用しやすく、持続可能な社会の構築に向けた環境政策などの進捗状況に沿ったものとするために改訂し、2002年度版を平成15年4月10日に発表した(http//www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4046)。
今回の改訂のポイントは、コア指標の整理と指標選択幅の拡大の2つである。コア指標の整理では、2000年版で80あったコア指標を環境基本計画に基づいて、事業活動に伴う総エネルギー投入量、総物質投入量、総水資源投入量、温室効果ガス排出量、化学物質排出・移動量、総製品生産量又は総製品販売量、廃棄物等総排出量、廃棄物最終処分量、総排水量といった9つのコア指標に整理したコアセットを示した。これにより指標の位置付けと優先取組み順位を明らかにしている。また、指標選択幅の拡大では、2000年度版で事業者を業態別に区別して業態別コア指標を設定していたのをやめ、全ての事業者に共通した環境政策上重要な指標を共通コア指標とし、それ以外についてはサブ指標として事業者が判断して選択できるようにした。指標の選択の幅が大きく拡げられている。
循環型社会を形成するためには社会全体での物質のフローを把握することが求めらているが、そのフローの大部分を占める事業者に対して、このような指標を提示することで、物質フローに関する基礎情報が収集され、事業者が環境政策に沿った取り組みが進められるようになるために、指標のさらなる開発が期待される。(文責:八木克)
リスクコミュニケーションを円滑に進める化学物質アドバイザーの派遣開始
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)に基づいて3月20日に化学物質の排出量・移動量のデータが公表されたことに伴い、環境省は4月22日に化学物質アドバイザー(仮称)の派遣を行うパイロット事業を開始した(http://www.ceis3.jp/adviser/index.html)。
化学物質アドバイザーとは、リスクコミュニケーションの場において、化学物質に関する正確な情報を分かりやすく提供することにより、対話の推進を図る人材である。具体的活動としては、市民、企業、行政からの要請に応じて、化学物質やPRTR制度に関する勉強会の講師を務めたり、市民と企業の間に入って第3者的立場で客観的な情報を提供したりする。ただし、リスクの削減にまで踏み込んでアドバイスをするようなことは客観性・中立性に欠くため行わない。また、化学物質アドバイザーは資格制度ではなく、一定レベル以上の知識とスキルがあることを証明した制度である。したがって、この資格を持った者でなければ一定の活動に従事できないというものではない。
現在登録されている18人の化学物質アドバイザーには出身母体があるので、どのようにして中立性を確保していくかという問題はあるが、今後、化学物質アドバイザーの活躍する頻度が増すようになり、化学物質の環境リスクの削減が促進されることを期待したい。 (文責:杉原全信)
PRTRデータの集計結果が公表
環境省および経済産業省は、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)に基づいて、平成13年度の全国の届出対象事業者からの排出量や移動量(廃棄物としての搬出量や下水道放流量等)の報告データと届出対象外の事業所、農業、自動車や家庭などからの推計排出量の集計結果を3月20日に公表した(http//www.prtr-info.jp/index.html)。
354の対象化学物質の全国・都道府県別、業種別、従業員別の集計表の他、グラフや地図による加工情報がWebページで提供されている。また、個別事業所のデータも開示請求すれば、全データを収録したCD-Rを1,090円で入手することができる。
全国の約3万5千の届出対象事業所からの排出量は合計約31万tで、このうち約9割が大気への排出であった。また、移動量は合計約22万tで、ほとんどが廃棄物としての搬出量であり、排出・移動量合計のうち、トルエン、キシレン、塩化メチレンで約5割を占めていた。一方、届出対象外の推計排出量は合計約59万tで、このうち裾切り以下の事業所が約32万t、農業等の非対象業種が約11万t、自動車等が約9万t、家庭が約7万tと推計された。しかし、届出排出量と同程度にもなる裾切り以下の事業所の推計方法の根拠データの詳細は明かとされていない。また、国が公表した情報のみでは、身近な地域や化学物質の人や生物への悪影響の可能性の程度を知ることができない。
環境リスク削減のためのリスクコミュニケーションを進めるために、当研究会でWeb公開予定の「身近な地域での人や生物への悪影響の可能性や環境を自主管理するための目標濃度等がわかる情報」を是非活用して頂きたい。(文責:加藤みか)
PCB本格処理に向けた基本計画案まとまる
環境省は3月13日に、PCB廃棄物特別措置法に基づき「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画(案)」(http//www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3978)を公開した。この計画案には、PCB廃棄物の現状および2016年7月までの発生量・保管量・処分量の見込み、保管事業者やPCB製造者や国・自治体の役割、処理施設の整備方針、広域処理施設による処理体制、収集運搬体制、処理基金、情報公開や知識の普及、調査研究や処理技術開発の推進等について記されている。これらは、5年毎、また処理体制の整備状況等により見直しされることとなっている。3月末までのパブリックコメントの結果を踏まえて、4月中には策定・公表される予定である。
一方、昨年7月に変圧器等の絶縁油から微量のPCBが検出された問題について、3月19日に(社)日本電気工業会から中間報告(第4報)(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3993)がなされた。
18社、全1,356件の検出事例が報告された。中には数百ppm含有されていた例もあった。大部分は1990年以前に製造された製品からであり、市販再生油等からの混入が疑われている。原因解明のために、現在、製造工程や絶縁油の取り扱い等について調査されている。
このような低濃度PCB含有物を含めたPCB含有物の存在量の調査を一層進め、多様なPCB含有廃棄物について、それぞれに適した管理および焼却処理も含めた多様な処理方法が認められるような検討・見直しが期待される。(文責 小林 剛)
食品安全基本法案が次期国会に提出予定
政府は現在、「今後の食品安全行政のあり方について」(平成14年6月11日食品安全行政に関する関係閣僚会議とりまとめ)に基づき、食品安全基本法案(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shokuhin/pc/kossi.pdf)の検討を進めており、次期国会への同法案の提出を予定している。
食品安全基本法案は、食品の安全性の確保を総合的に推進することを目的とし、基本理念としては、国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにすることにより、「国民の生命及び健康の保護」、「食品供給行程の各段階における食品の安全性確保」および「最新の科学的知見及び国際的動向・国民の意見に即応した適切な対応」を謳っている。また、施策の策定に係る基本方針としては、「食品健康影響評価の実施」、「食品健康影響評価結果に基づく施策の策定」、「情報公開、意見供述の機会の付与、関係者相互間の情報・意見交換の促進」や「緊急事態への対処・発生防止に関する体制整備」等を掲げている。この法案には、食品の安全性確保のために、リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションといったリスク分析手法の導入、リスク評価を行う食品安全委員会の設置や行政機関相互の連携、試験研究・人材の確保等といった具体的な施策の充実も盛り込まれている。
近年、食品の安全性に関わる事件が多数報道され、国民の食品の安全性に対する不信感が強くなっていると同時に、関心が高まっている時期でもある。この機会に、各関係機関内だけでなく、枠を越えた情報の共有および広く国民への情報発信を積極的に行うことで、この法案が有効に活用されることを期待する。(文責:村田尚子)
農薬のリスク管理についての報告まとまる
環境省は、農薬環境懇談会の7回にわたる議論報告をとりまとめ、農薬のリスク管理とリスクコミュニケーションに関する現状と課題を整理し、今後の施策の推進方向について提言した(http://www.env.go.jp/press)。
現状と課題では、リスク管理に関しては、生態系保全のためのリスク管理、複合影響や内分泌かく乱作用、化学物質過敏症に対する評価についての課題、農薬に該当しない殺虫剤や除草剤等に関する対応の課題などが示され、リスクコミュニケーションに関しては、農薬登録保留基準の設定時に慎重な検討がなされたことについての一般国民の理解、農薬製造業者等に対する適切な情報開示手法の検討の必要性などが示された。
今後の施策の推進方向では、登録保留基準の充実のため、生態系保全を目的に魚類・甲殻類・藻類等に対する農薬の毒性と環境中の予測濃度との比較によるリスク管理の実施、水田への使用農薬にしか設定されていない基準の畑地・ゴルフ場等への使用農薬に対する設定、登録・販売・使用段階のモニタリング等による環境リスクの把握と使用段階における規制措置などの必要性が示され、また、リスクコミュニケーションを相互の理解増進に向けて推進していく必要性などが示された。
農薬は、その毒性が使用者によく知られないまま散布され、近隣の住民の健康が冒された等の報告も聞かれる。これ以上被害者を生まないためにも毒性情報の開示だけではなく、リスクコミュニケーションの徹底が望まれる。(文責:糸山景子)
政府間化学物質安全性フォーラム(IFCS)アジア太平洋地域会合が開かれる
厚生労働省は10月7日から10日にかけて、政府間化学物質安全性フォーラム(Intergovernmental Forum on Chemical Safety:IFCS)アジア太平洋地域会合」を18ヶ国53名の出席により開催した。IFCSは、1992年の国連環境開発会議のアジェンダ21第19章「化学物質の環境適性管理と不法流通の防止」を促進するために、国連、国連専門機関、国際原子力機関に加盟している政府間のフォーラムとして1994年に発足し、日本は2003年まで5つの副議長国の一つ(アジア太平洋地域代表)である。
今回の会合では、2000年の第3回フォーラム全体会合での勧告「2000年以降の優先事項」に対するアジア地域の取り組みについて討議し、「地球規模の化学物質分類・表示システム(GHS)」、「化学物質情報の交換」、「化学物質の不要在庫の安全な廃棄」、「急性農薬中毒およびリスクの削減」、「中毒センターとデータ収集」、「ナショナルプロファイルおよびナショナルフォーカルポイント」、「国家の方針または行動計画」、「財源捻出と技術支援」の8点が、アジア太平洋地域各国にとって最優先事項であることを確認した。その上で、各国が国家行動計画の策定を主導する国内調整機構を創設することを奨励し、情報交換内容を勧告するグループを設立すること、有害化学物質や残留性有機汚染物質(POPs)のモニタリングシステムの開発について支援要請と協力をすること、少なくとも1つの中毒センターを設置または強化する提案を行うことなどの具体的な取り組み方向をまとめた(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/10/h1018-1.html)。
現時点では、方向性がまとめられただけであるので、今後できるだけ早く、各国で具体的な取り組みを実施していく必要がある。(文責:王子達也)
アクリルアミドの毒性が問題に
厚生労働省は10月31日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会において、世界的な問題となっていたイモ類などを高温で調理した食品中のアクリルアミドに関する調査結果を報告した。これによると、ポテトチップスが500〜3500μg/kg程度で最も高く、フレンチフライ、ビスケット・クラッカー、とうもろこしチップス類などが100〜800μg/kg程度などとなっている。
アクリルアミドは、「おそらく発がん性がある物質(IARC分類の2A)」とされ、皮膚や目に強い刺激性があり、神経毒性があることがわかっている。このような有害物が身近な生活の中で非意図的に生成していることに関心が高まっている。
しかし、アクリルアミドは多数の分子を結合させたポリマーとして、印刷用紙の紙力増強剤や土木工事用の土壌安定剤、排水の凝集沈殿剤、接着剤、塗料など広範囲に用いられ、2000年の国内需要は6万1000トンにも上っている。このため、工場等での作業者の安全とともに、ポリマーの中に残っている原料のアクリルアミド(モノマー)の毒性も懸念されている。このアクリルアミドは、化学物質管理促進(PRTR)法の第一種指定化学物質となっていあるが、ポリマーから溶出するモノマーは排出・移動量の算定対象になっていない。
食品加工過程での生成に関しては、健康影響および加工時の生成抑制・毒性抑制に関する研究の推進などが進められているが、今後、環境中への排出実態の解明や生態系に対する悪影響に関する研究などの推進も求められる。(文責:井田裕之)
土壌汚染対策法の技術的基準の考え方が答申
中央環境審議会は、9月20日に「土壌汚染対策法に係る技術的事項について」(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3617)を環境大臣に答申した。本答申は土壌環境部会土壌汚染技術基準等専門委員会の案について、131通556件のパブリックコメント(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3615)をふまえて修正されたものである。
答申には、特定有害物質の定義、土壌汚染状況の調査方法、指定区域の指定に係る基準、指定区域台帳に記載する調査結果に関する事項、汚染の除去等の措置の実施に関する技術的基準、土地の形質の変更の施行方法に係る基準等がとりまとめられている。また、資料調査等により汚染の可能性が低い場合には調査地点数が軽減されること、コンクリートやアスファルトと同等の舗装措置も認めること、産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準値を用いて汚染レベルに応じた対策方法を定めたこと(揮発性有機化合物以外の特定有害物質について、掘削除去や原位置浄化の他に、判定基準値を越えても遮断工封じ込め措置を認め、不溶化により判定基準値を越えなくすれば、原位置封じ込め・遮水工封じ込め措置を認める)など、より現実的・効率的に運用できるよう定められている。
なお、技術的事項以外の政省令の内容についても、環境省が案(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3530)をとりまとめて、パブリックコメントがなされており、これらを踏まえて政省令の策定を進めるとしている。
現時点で、土壌汚染対策法の付帯決議の項目が全て盛り込まれた訳ではなく、今後の政省令の策定や施行後の運用状況に応じて、適宜改善がなされるよう見守る必要があろう。(文責:小林 剛)
水生生物生態系を考慮した水質目標値が公開
環境省の「水生生物保全水質検討会」は、水生生物保護のために優先的に検討すべきとされた81物質のうち、より多くの毒性データが得られているホルムアルデヒド、アニリン、クロロホルム、ナフタレン、フェノール、2.4-ジクロロフェノール、エンドスルファン、カドミウム、亜鉛の9物質について、水質目標値を求めて公表した(http//www.env.go.jp/water/report/h14-03/index.html)。
9物質のなかには、亜鉛のようにヒトに対する毒性は非常に弱いが、水生生物には強い毒性を示し、多用されている物質が含まれている。また、宮城県北部の迫川流域における亜鉛濃度の測定結果によると、今回示された亜鉛の水質目標値0.03mg/lを明らかに超える測定地点が少なくとも3地点あるなど、今後の対策が求められる。
さらに、数多くの生物種で構成される水圏生態系について、どのような水生生物を評価対象とするかについて、同検討委員会では、対象生物をヒトの生活ととくに関わりの深い水産資源生物種とその餌になる生物に絞り込んでいる。すなわち、生物種の生息域を「イワナ・サケマス域(淡水域)」と「コイ・フナ域(淡水域)」および「海域」の3区分に分けてそれぞれ水質目標値を検討している。
水生生物を用いた毒性試験データを活用する水環境管理は、欧米では10年以上前から進められているが、日本もようやく第1歩がスタートした。対象生物種や基礎データの集積など、課題も山積しているが、水生生物の保全を指向した水環境管理方法の進展を期待したい。 (文責:井田裕之)
内分泌撹乱作用の評価結果が公開される
環境省は、環境ホルモン戦略計画SPEED'98に掲載した疑わしい物質リストのうち、平成12年度には12物質、平成13年度には8物質を選定し、人の健康および生態系への影響を評価するための実験を進めてきた。そのうちアルキルフェノール類やフタル酸エステル類、有機スズ化合物など10物質についての有害性評価結果を公開した(http//www.env.go.jp/chemi/end/kento1401/index.html)。
人への有害性は、「げっ歯類を用いた1世代試験」および「試験管内試験」の結果で評価されており、今回の10物質については、人が曝露すると予測されるような低用量での内分泌撹乱性は認められなかったと報告されている。
生態系(魚類)への有害性は、メダカを用いた「ビテロジェニン産生試験」および「パーシャルサイクル試験」等の結果で評価されている。10物質のうち、4-オクチルフェノールについてはメダカの生殖機能に明確な影響が観察され、魚類に対して内分泌撹乱性があることが確認されている。これは同省が昨年度報告したノニルフェノールに続き、2番目の例である。しかし、推計無影響濃度は0.99μg/Lであり、国内の環境水中濃度からみると魚類へのリスクはやや低いと報告している。また、他の5物質は、オスの精巣内に卵細胞の出現がみられ、現在追加試験を行っているが、残りの4物質には内分泌撹乱作用は確認されなかったとされている。
最近、水環境中において、農薬類や人畜由来の女性ホルモンの影響が大きいという測定結果も報告されている。今後は、農薬類やリストにない合成化学物質についての研究を進めるとともに、天然由来物質を含めた水生生物保護対策を進めることが重要になると考えられる。(文責:細川将洋)
環境省が産業廃棄物税導入の考え方を報告
環境省は、自治体の産廃税導入についての考え方などをまとめ、報告書を発表した(http//www.env.go.jp/recycle/report/h14-01.pdf )。
産廃税は、三重県で昨年6月に条例が制定され、今年4月に施行されてから、今年6月には北九州市、岡山県、7月には広島県で条例が可決された。また、鳥取県や北東北3県などのように隣接する県と協力して広域的な導入を検討する自治体も増え、現在、26都道府県で導入が検討されている。
課税方法は様々であるが、三重県では年間排出量が1000トン以上の事業所等を対象とし、県内処分には1トン当たり1000円を課税し、中間処理施設には、実際の重量に処理施設および産業廃棄物の種類に応じた係数を乗じた値に課税している。
この報告書では、産廃税は各種産業廃棄物対策に係る財源確保のために必要であり、発生抑制等の効果も期待できるとし、地域の事情に応じた単独導入もあるが、流入の偏りや二重課税等も懸念されるため、県域を越えた広域的な導入や全国一律、一斉の課税も検討に値するとしている。
また、産業廃棄物の広域移動と域外で発生した産業廃棄物の流入抑制措置、処理施設設置に係る住民同意やこれらに関連する産廃条例による規制についての現状や考え方もまとめられ、地方分権を考慮しつつ、自治体と国の相互協力で問題解決に当たることが重要であるとしている。
今後は、産廃税導入による産廃発生量の削減の一方で、増加が懸念される不法投棄の対策の強化も検討する必要があろう。(文責:佐藤智幸)
生物多様性条約の締約国会議が開催される
生物多様性条約第6回締約国会議が4月7〜19日にオランダのハーグで開催され、具体的な対策を含む36件の決議案や「閣僚宣言」が採択された (http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3307)。
決議案では、優先すべき活動等を定めた「生物多様性条約戦略計画」、森林法や関連法規の実施環境の向上や貿易に対する取り組みの推進などを盛り込んだ「森林の生物多様性に関する作業計画」、外来種の侵入予防、初期の発見と予防、駆除と管理の段階に応じた対策を盛り込んだ「外来種対策の最終的な指針原則」、「遺伝資源の利用から生じる利益の配分などに係わる国際的なガイドライン」、地球上の植物種の約2/3が21世紀中に絶滅の危機に曝されているという指摘を受けて、2010年までの具体的な目標を定めた「世界植物保全戦略」などが採択された。また、閣僚級会議では、生物多様性の保全とその持続的な利用に関する努力の強化、世界・地域・国レベルで生物多様性の損失速度を2010年までに低減するための措置の強化が決意され、8月のヨハネスブルグサミットへの要請事項を含む「ハーグ閣僚宣言」が採択された。
さらに、未締約国の米国が本条約やバイオテクノロジーにより改変された生物の移送、取扱い、利用における生物多様性へのリスクを管理、制御するための措置を定めた「バイオセーフティに関するカタルヘナ議定書」の批准表明を行った。
影響力の大きい先進国が率先して取り組む姿勢を示す必要があり、日本でも人間が生物多様性に支えられていることを実感できる環境教育や生態系保全の観点での開発事業の影響評価と化学物質対策の強化など、各分野が協働した具体的な取り組みの推進を期待したい。(文責:加藤みか)
PRTR情報提供のNGOネットワークが設立される
PRTR情報を中心とした化学物質情報の提供等を行うNGOのネットワーク「有害化学物質削減ネットワーク(Toxic Watch Network)」が4月27日に設立された(http://www.toxwatch.net/)。
このネットワークでは、有害化学物質の削減をめざして活動してきたNGO・NPO団体等に所属する中心メンバーが協力して、PRTR情報や関連情報を市民に分かり易く提供するとともに、市民の活動を支援し、化学物質による環境リスク削減を促進するために、エコケミストリー研究会や関連団体と連携した市民向けのWebサイトの構築、情報の活用と充実、学習会等の普及啓発活動などに取り組む。また、将来は海外NGOとのネットワーク化、有害化学物質に関する現行の法制度の見直しや政策の立案・提言なども行うことを目的としている。設立集会の記念講演では、当研究会代表の浦野紘平氏(横浜国立大学大学院教授)が有害化学物質の管理と削減のための国内外の流れとPRTRの重要性や当研究会がWebサイトで発信するPRTR情報提供の考え方と事例を紹介し、リスクコミュニケーションの推進と関連機関の連絡先リスト等、連携するWebサイトの構築・運用など、今後のネットワークへの期待が述べられた。
このネットワークに消費者団体を含めた全国のNGO等が参加することで、市民が化学物質問題に対して関心や知識を高め、NGO・NPOの連携が強化され、自立した力を持つようになり、市民参加のもとで日本の新しい化学物質管理システムが構築されることを期待したい。(文責:加藤みか)
自動車排出ガスの新長期目標案まとまる
環境省の中央環境審議会大気環境部会では、「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第五次答申案)」をまとめ、意見募集している。
この案では、ディーゼル車の新長期目標として、平成17年末までに、健康リスクの高い粒子状物質(PM)を小型乗用車と軽量トラック・バスは0.013、中型乗用車は0.014、中量トラック・バスは0.015g/km、重量トラック・バスは0.027g/kWhに大幅に低減するとしている。また、NOxをそれぞれ0.14〜0.25g/km(重量トラック・バスは2.0g/kWh)、非メタン炭化水素(NMHC)を0.024g/km(重量トラック・バスは0.17g/kWh)とするとしている。ガソリン車については、平成17年(軽貨物車は19年)末までに、NOxを中量・重量トラック・バス以外は0.05g/km、中量トラック・バスは0.07g/km、重量トラック・バスは0.7g/kWhとすること、NMHCを重量トラック・バス以外は0.05g/km、重量トラック・バスは0.23g/kWhに低減するとしている。
ガソリン中の硫黄分は平成16年末までに50ppm(現行100ppm)に低減することを確認し、また、実態にあった新しい排出ガスの試験モードを重量車は平成17年まで、乗用車等は平成20年〜23年までに段階的に導入するとしている。さらに、引き続きこの「新長期目標」以降の低減対策も検討すること、排出ガス認定制度等により、低排出ガス自動車の普及の促進を図ることなどを示している。
自動車対策は大気環境保全にとって非常に重要であるが、すでに、これ以上の対策を進めるとしているメーカーもあり、さらなる強化が可能と考えられる。また、他の発生源からのPM規制の強化も早急に検討する必要があろう。(文責:浦野紘平)
シックハウス対策に関する法改正の動き
国土交通省は、シックハウス対策のための規制やバリアフリー化、省エネ対策等を含めた「建築基準法」の改正案をまとめ、3月8日の閣議で決定、国会に提出されることとなった(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/07/070307_2_.html)。
この改正案では、室内汚染による健康影響や厚生労働省の指針値を超える住居が多数存在することから、有機リン系防蟻剤のクロルピリホスを放散する建築材料は使用禁止、ホルムアルデヒドを放散する建築材料は等級区分毎に使用面積を制限、等級区分のないものは使用禁止とすること、および換気設備設置を義務付けることとされている。トルエン、キシレン等、その他の化学物質も、順次規制を検討するとしている。また、濃度規制としなかったのは、住居構造や気象条件で濃度が大きく変動し、1回の測定値では評価できず、測定費用が大きな負担となるためとしている。
一方、この法律とは別に、民主党から個別の化学物質および揮発性有機化合物の総量(TVOC)による規制基準、新築・改築時の濃度測定義務等を盛り込んだ「シックハウス対策法案」や大規模建築物の定期的濃度測定義務を盛り込んだ「ビル管法の改正案」が提案されている。
1日の多くを過ごす建物だけでなく、家具や身近な製品による化学物質汚染がこれ以上深刻化しないように、早急な実態把握、発生源対策が必要である。低コストで簡易な測定方法の開発・普及、製品中の化学物質情報の提供など、取り組むべき課題は山積みである。(文責:加藤みか)
廃棄農薬調査結果が発表される
農林水産省は、12月6日に都道府県に依頼した埋設農薬の実態調査の結果を発表した(http://www.maff.go.jp/work/press011206-04.pdf)。また、環境省も12月26日に埋設農薬による汚染の調査、掘削・保管の作業手順や留意事項を暫定的なマニュアルとして取りまとめた。
残留性有機塩素系農薬(BHC、DDT、アルドリン、ディルドリン及びエンドリン)は、昭和46年度に販売が禁止または制限され、農林水産省によって小規模単位で地中埋設する指導された。47年度には同省が農薬安全処理対策事業(国庫補助事業)を実施し、大規模(3トン以上)な埋設処理による保管を指導した。昨年5月に上記農薬を含む残留性有機汚染物質(POPs)条約が採択されたことを踏まえ、これらを計画的かつ適切に処理するため実態調査が行われた。
現時点で埋設場所が特定された農薬は全国174ヵ所、総数量約3,680トンで、国庫補助事業によるものが全国43ヵ所、総数量約2,159トン、国庫補助事業以外が全国131ヵ所、総数量約1,521トンとされている。都道府県ごとに埋設量は大きく異なるが、国庫補助事業が北海道で埋設2ヵ所、数量約566トン、国庫補助事業以外でも新潟県で97ヵ所、約475トンが多かった。
農林水産省は、現在、安全な処理技術を環境省と連携しながら開発しており、最終処理が行われるまでの安全性を確保するため都道府県等に埋設地点の環境調査の実施を依頼することにしているが、今後、調査が進むにつれて埋設場所や埋設量が増えてくる可能性もある。農薬に限らず、土壌中に残された20世紀の負の遺産に対して早急に対策がとられることを期待したい。(文責:松島由佳)
産業廃棄物不法投棄実態が発表される
環境省は、12月25日に産業廃棄物の不法投棄の状況について発表し(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=3069)、対策強化に動き出した。
これによると、平成12年度の不法投棄件数は、1,027件で、1,000件を超えた状態が3年間続いている。また、不法投棄廃棄物量も40万トン以上が4年間続いている。とくに、1,000トン以上の大量投棄が63件、内5,000トン以上が19件もある。
不法投棄者は、排出事業者が約56%(量は約30%)、不明が約26%(量は約24%)、無許可事業者が約9%(量は約19%)のほか、許可事業者も約7%(量は13%)あり、複数が約1%(量は約14%)ある。
不法投棄量が多い地域は、千葉県が約12万トン、茨城県が約7万トンで、この2県だけで全投棄量の約47%を占めており、この2県が組織的にねらわれていることが考えられる。また、投棄物は、建設廃棄物が約6割を占めているが、廃プラも約23%あり、有害物質が多い可能性がある燃え殻が約7%、汚泥が約4%、金属くずが1%あり、特別管理廃棄物も81トン見つかっている。
これらのうちで、現状回復したのは、件数で約69%であるが、投棄量では約40%にすぎない。このような状態が続くと、各地に廃棄物が蓄積し、火災、悪臭、有害物質の揮散や浸出による被害が続出し、豊島の例のように、莫大な税金が必要なことにもなりかねない。しっかりとした投棄防止対策を立てるとともに、現状復帰がされないままの廃棄物についても処理・処分の制度と技術を早急に検討する必要があろう。(文責:浦野紘平)
12年度有害大気汚染物測定結果が発表される
環境省は、9月14日に「平成12年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果」を発表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=2851)。その結果によると、ベンゼンは環境基準超過地点が20%で減少傾向にあるが、沿道測定局では依然43%が基準を超過しており、また、最高値は工場等の発生源周辺で基準値の3μg/m3を大きく上回る7.8μg/m3となり、十分な改善が見られていない。ベンゼンについては、ガソリンの低ベンゼン化や関係業界団体の自主的削減が行われ、5地域については、地域の削減計画を定めて削減を図ることになっているが、それらの効果の程度は、今後の推移を見なければならない。
その他12の有機汚染物質については、最高値でもトリクロロエチレンが15μg/m3、テトラクロロエチレンが5.8μg/m3、ジクロロメタンが17μg/m3であり、いずれも環境基準値を大きく下回っている。しかし、環境基準値が定められていない発がん性物質の最大値は、塩化ビニルモノマーが12μg/m3、ホルムアルデヒドが14μg/m3、アセトアルデヒドが11μg/m3、ベンゾ[a]ピレンが2.7μg/m3などとなっており、平均値に比べて5倍から10倍以上高い地点がある。また、金属化合物についても、最高値は水銀が15ng/m3、ニッケルが47ng/m3、ヒ素が10ng/m3、ベリリュウムが0.7ng/m3、マンガンが180ng/m3、クロムが77ng/m3であり、いずれも平均値の5倍から10倍以上の地点があることが示されている。これら他の地点より極端に有害化学物質濃度が高い地点については、PRTRデータなども活用して発生源を特定し、削減対策を進めることが望まれる。(文責:浦野紘平)
表層土壌汚染の要措置レベルが算定される
環境省は、8月に「土壌の含有量リスク評価検討会報告書」を取りまとめた(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=2775)。
この報告書では、土壌環境基準で考慮していない土壌中の有害物質の暴露経路について、人の健康保護の観点と生活環境(生態系を含む)保全の観点とから整理し、それぞれ汚染土壌の直接暴露と他の媒体(大気、公共用水域、地下水)を通じての暴露とを比較検討している。また、重金属等(総水銀、カドミウム、鉛、ヒ素、六価クロム、ふっ素、ほう素、セレン、シアン化合物または全シアン)について、長期的な汚染土壌の直接摂取(摂食、皮膚接触)による人の健康影響の観点から、何らかのリスク低減が必要な「要措置レベル」を算定している。さらに、環境省が把握する土壌調査結果と要措置レベルとの比較結果(超過率は鉛(53/777)や六価クロム(12/38)が多い)や汚染された土地のリスク管理方法を示している。本報告は、今後、土壌環境保全対策制度の在り方の検討に活用される予定である。
「要措置レベル」は、表層土壌に高濃度で長期間蓄積する物質の直接摂取のみを考慮しており、放置すると地下に浸透して対策も困難となる有機塩素系溶剤や埋設農薬あるいは埋立地内の有害物質の安全等は考慮されていない。また、このレベル以下ならば安全とは言えないことにも注意が必要である。しかし、生態系保護の視点や汚染レベル算定方法等について重要な考え方が多く示されており、今後の具体的な適用や土壌環境保全法の制定への活用を期待したい。(文責:小林 剛)
冷媒フロン回収・破壊法が成立
6月に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律案」が成立した(http://www.env.go.jp/earth/ozone/cfc/low/)。
フロン類は、オゾン層を破壊するだけでなく、地球温暖化にも大きく影響するが、日本では回収と破壊が進んでいなかった。このため、議員立法で、業務用の冷蔵冷凍空調機器と使用済み自動車(カーエアコン)からのフロン類の回収・破壊が義務づけられた。対象フロン類にはCFCsとHCFCsだけでなく、HFCs等の地球温暖化物質も加えられ、これらのフロン類を含む業務用機器を廃棄する事業者は、回収業者に必要な経費を支払ってフロン類の回収(引き取り)を依託する義務があることとなった。一方、使用済み自動車の引き取り業者は、都道府県の登録を受け、自ら、または回収業者にフロン類の回収を依託する義務があることとなり、回収されたフロン類は、自動車製造業者等が運搬費用を回収業者に、破壊費用を破壊業者に支払って破壊することになった。フロン類の回収業者は、都道府県の登録を受け、回収量、破壊業者への引き渡し量、再利用量を記録・保存・報告する義務があり、フロン類の破壊業者は、国の許可を受け、基準に従って破壊し、破壊量を主務大臣に報告する義務があることとなった。
自動車については、利用者からの費用徴収方法が決まっていないが、自動車全体のリサイクルシステムの確立との関係を考えると新車購入時に廃棄処理費を支払う方式の導入が望まれる。また、この法律と家電リサイクル法によって、冷媒用フロン類の対策がやっと揃ったことになるが、断熱材、エアゾール、洗浄剤のフロン類対策等、今後の課題も多い。関係者の理解と努力によって、地球環境問題に対する日本の責任ある対応が一層進展することを期待したい。 (文責:浦野紘平)
21世紀『環の国』づくり会議報告書まとまる
小泉純一郎内閣総理大臣が日本の国の方向を明示するために主宰し、全閣僚および有識者で構成された「21世紀『環の国』づくり会議」が、今年3月から計5回開催され、その概要が取りまとめられた(http://www.env.go.jp/policy/report/h13-02/01.pdf)。
この会議では、次の5つの環についての基本的なあり方や施策が検討された。
(1)地球の環:地球温暖化防止のための社会づくりや国際環境協力と地球環境調査を推進する。
(2)環境と経済の環:環境産業革命を目指して、企業の環境経営の促進、資源・環境上の持続可能性を高めながらの経済発展や資源生産性・環境効率性向上のための技術開発の促進を行う。
(3)物質循環の環:循環型社会のためのシステム・社会資本の整備、静脈産業の育成、資源循環・環境モデル都市づくりの推進、PCB廃棄物など20世紀の負の遺産の解消と不法投棄の撲滅を図るとともに、適切な化学物質管理を促進する。
(4)生態系の環:伝統的な知恵と技を学びつつ、新技術を取り入れた順応的生態系管理の推進、自然再生型公共事業の推進、社会資本整備における環境配慮を徹底し、自然と共生する社会を実現する。
(5)人と人との環:環境教育・学習の推進、環境倫理の確立、市民・NPO活動の支援、各主体が連携した環境保全活動を推進する。
今後は、この方針に沿った具体的な取り組みが推進され、世界や次世代にも継承できる『環の国』が実現することを期待する。(文責:加藤みか)
下水道における内分泌撹乱化学物質に関する調査結果まとまる
国土交通省は、平成12年度の下水道における内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)に関する調査の結果をとりまとめた(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha01/04/040509_.html)。
本調査は、内分泌撹乱化学物質の下水処理場内における挙動および下水道への流入源について、平成10〜12年度にわたって全国47の下水処理場で調査されたものである。
調査対象物質は、環境省の「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」において内分泌撹乱作用が疑われている化学物質の中の25物質に加え、ノニルフェノールを生成する物質および中間生成物および天然の女性ホルモンや合成ホルモン等である。
調査結果によると、流入下水中の内分泌撹乱化学物質の多くが下水処理の過程で90%以上減少することが報告されている。とくに、反応タンクの滞留時間を長くするなどの運転条件の変更や活性炭処理、オゾン処理、逆浸透膜処理などの高度処理を行えば、多くの物質がほとんど検出されないレベルにまで低減することが示唆されている。
一方、ノニルフェノールエトキシレートやノニルフェノキシ酢酸類などのノニルフェノール関連物質や天然女性ホルモンは下水処理過程や環境水中で複雑に形態が変化し、放流水にも存在していることが示されている。さらに、それら中間体や反応生成物の生物への影響が不明確であることや調査項目が増大して分析が極めて煩雑で負担が大きいことなどの多くの課題も挙げられる。
今後、発生源や水生生物への影響の把握と効果的な処理技術の普及に注目するとともに、バイオアッセイ等を導入した効率的な管理体制の確立が期待される。(文責 細川将洋)
環境省の化学物質対策に関する意識調査結果まとまる
環境省は、環境モニターの1500人を対象とする「化学物質対策に関する意識調査」の平成12年度の結果を発表した(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=2561)。
この調査は、化学物質汚染への関心が高まるなか、PRTRやリスクコミュニケーションの方向性について国民意識を把握することを目的として行われた。質問内容は、(1)身近な化学物質への不安感やその理由、(2)PRTRの結果の利用や開示請求の手数料額、(3)リスクコミュニケーションの必要性・対象・動機などである。
化学物質への不安感は、工場・自動車排ガス・農薬・家庭用品が約80%前後と高く、その理由として約40%が「これらから有害な化学物質が排出されていることが明らかだから」と回答していた。PRTRの結果については、約80%が「環境中に排出された化学物質がどれくらい人や生態系に悪影響を与える状況にあるのかを示す」ことを要望していた。リスクコミュニケーションの必要性については、「自ら進んで行う必要性を感じる」と「将来必要となるかもしれない」とする人が99%を超え、その動機は、70%強が「排出される化学物質や環境リスク情報を知りたい」と回答していた。
この結果から、国民の多くが化学物質に不安を感じ、PRTR制度やリスクコミュニケーションを通じて、リスク情報を入手したいと考えていることが明らかになっている。国民の要望を反映した政策を期待したい。(文責 桑垣玲子)
化学工場等からのダイオキシン類排出実態調査はじまる
昨年、神奈川県藤沢市の荏原製作所の排水によるダイオキシン類汚染が問題とされてから、地方自治体による河川調査等によって、次々と未規制の化学工場等から排水基準値の数倍〜数百倍といった高濃度のダイオキシン類が見つかっている。現在までに高濃度汚染が明かとされた工場と主な発生源は下記の通りである。
(1)静岡県富士市の東洋インキ製造の工場:顔料製造工程排水や原料由来の重金属や塩素化合物を含む汚泥焼却処理後の排ガス冷却水等。
(2)愛知県名古屋市の東レの工場:ナイロンの中間原料であるカプロラクタムの製造工程で、原料である塩化ニトロシルを得るための塩酸や硫酸の脱水工程からの排水等。
(3)新潟県西頸城郡の電気化学工業の工場:アセチレン製造の精製工程の次亜塩洗浄排水やアルミナ短繊維製造での焼成炉ガス洗浄排水等。
(4)福岡県大牟田市の三井化学の工場:クロロベンゼン類製造工程の洗浄排水等。
(5)熊本県水俣市のチッソの工場:肥料原料である硫酸カリウムの製造工程で、原料である塩化カリウムと硫酸を反応させる炉の排ガス洗浄排水等。
昨年10月には環境省にダイオキシン類未規制発生源調査検討会(座長 横浜国立大 浦野紘平氏)が設けられ、ダイオキシン類を生成する可能性のある化学工場等の製造工程や排ガス処理工程等の調査が実施され始めている。これにより、詳しい汚染実態、ダイオキシン類の生成機構や発生工場等が解明され、従来の塩素を用いる各種の製造方法や排ガス・排水の処理方法が見直され、早期に全国的な未規制汚染源対策が進むことを期待したい。(文責 加藤みか)
PCB廃棄物の適正処理に関する特別措置法案まとまる
ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む廃棄物がきわめて長期間、処分されずに保管されている状況を受けて、「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案」が2月20日の閣議で決定され、衆議院で審議が行われている。
この法案は、PCB廃棄物の保管、処分等についての必要な規制や処理体制を速やかに整備することによって、確実・適正な処理を推進することを目的とし、主に下記の事項等が盛り込まれている。
(1)国や地方公共団体は、廃棄物処理計画を策定し、公表する。(2)事業者は、一定期間内にPCB廃棄物を処分し、環境大臣又は知事は、これに反した者に改善命令、立ち入り調査ができる。(3)事業者は、保管・処分状況を都道府県知事に毎年届出し、知事はこれを公表する。(4)環境大臣は、PCB製造者等に処理のための資金の拠出等の協力を要請する。
また、この法案と併せて、処理体制の確保のために、広域的処理事業を環境事業団の新たな業務として追加し、処理推進のための助成等に用いる基金を設置するなどの「環境事業団法の一部を改正する法律案」も閣議決定されている。
残留性有機汚染物質(POPs)条約によって、PCB等への取り組みの強化が国際的に求められている。欧米諸国に比べて対策が立ち遅れている日本で、この法律を機会に、PCBを初めとするPOPs全体に対する積極的な取り組みと情報公開が進められることを期待したい。 (文責 加藤みか)
水生生物保全に係る水質目標についての中間報告取りまとまる
環境省の「有害物質による水生生物影響検討会」は、水生生物保全に係る水質目標についての中間報告を発表した(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=1968)。これまで我が国では、人の健康の保護や富栄養化の防止等の観点から環境基準が設定されてきた。このため、水生生物保全の観点を中心に据えた化学物質汚染に係わる水質目標は設定されていなかった。一方、欧米においては1970年代から水生生物の保全を考えた基準値等が設定されている。また、近年では界面活性剤やいわるゆ環境ホルモンなどの水生生物への影響が指摘されてきている。このため、環境庁は上記検討会を設置して検討を行ってきた。
本報告は、河川等の化学物質汚染から水生生物を保全するための目標値の設定方法等の基本的な考え方を取りまとめたものである。水域の区分を河川の「イワナ・サケマス域」、「コイ・フナ域」および「海域」の3類型にするとともに、繁殖・生育の場として特に重要な水域を必要に応じて指定し、水質目標を設けることを提案している。
また、化学物質の毒性評価に関しては水生生物への慢性影響に着目した検討フローを作成している。信頼できる毒性試験データから最も感受性の高い生物に着目して目標値を設定し、データが不足しているものは毒性試験を実施するか、急性毒性データからの補正を行う流れになっている。さらに、当面優先的に検討すべき物質として81物質(群)を選定し、平成13年度以降順次、水生生物保全に係る環境目標を検討していくとしている。
これにより、具体的な生物保護政策の進展を期待したい。(文責 細川将洋)
容器包装リサイクルシステム検討会の最終報告書まとまる
厚生省(現在は環境省に移管)の容器包装リサイクルシステム検討会は、容器包装リサイクル法の実施状況、問題点や対応策について、平成12年12月に最終報告書を取りまとめた(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1212/h1219-1_14.html)。
現在、ガラスびんは7割以上、缶は9割以上、ペットボトルは6割以上の市町村が分別収集に取り組んでおり、リサイクル率も向上している。しかし、平成8年の飲料業界による小型ペットボトルの製造自主規制解除から、ペットボトルの生産量は急増し、埋立・焼却量はかえって増加している。
そのため、平成11年度には、再商品化能力が不足し、再商品化を委託される指定法人が一部の市町村からの受け取りを停止した事態が生じている。報告書には、平成16年度までの当面のリサイクル率の目標を50%以上として、消費者、市町村、特定事業者側の課題がまとめられている。
また、紙製、プラスチック製容器包装については、平成12年4月から対象に追加されて間もないため、状況把握は難しいが、実施市町村数や分別収集量は増加しており、消費者の分別促進のために、平成13年4月には識別表示が義務付けられる。
容器包装廃棄物は、特に家庭系廃棄物では56%(容積比)も占めている。今後、消費者の一層の意識向上を図るとともに、メーカー・販売会社の過剰生産、過剰包装を抑制するシステムづくりが不可欠であろう。(文責 加藤みか)
マテリアルフローの国際比較に関する研究報告書出版
環境庁国立環境研究所は、マテリアルフローの国際比較に関する研究報告書"The Weight of Nations"を米国、ドイツ、オランダ、オーストリアの調査研究機関と共同出版した。この報告書では、経済活動から環境への排出の総量に関する指標と投入と排出の差から物質の蓄積を表す指標を提案し、その国際比較を行っている。資源消費に関する指標を提案して国際比較した1997年の報告書とあわせて、持続可能な発展に向け、大量の物質に依存した経済社会の転換の必要性を指摘している。
量的な側面をみると、排出フローの大半を化石燃料の採掘と使用に関するものが占めていることがわかる。土地の掘削などのいわゆる隠れたフローを除けば、CO2は重量で排出フローの約8割を占め、さらに増加傾向にある。我が国は1996年の一人当たりの排出量は約11トンと5ヶ国中最も小さいが、総排出量では約26億トンと5ヶ国中3番目で、増加率は最も大きい。GDP当たりでは各国とも減少傾向にあり、我が国は最も小さい。このように、GDP当たりで見れば経済成長と環境への排出の分離は進んでいるとも言えるが、総排出量が増加を続けていることを問題点として認識することもまた不可欠である。また、排出の質的な側面では、一部の有害物質の排出は規制などにより削減に成功しているが、潜在的に有害な多くの物質の排出は増加を続けていると報告している。
大量消費、大量廃棄の社会を脱却し、持続可能な社会を構築するためには、資源の消費量や環境への排出量そのものの削減とあわせて、物質の循環を促進することも重要である。そのためにも、社会構造の変革と、明確な目標をもった政策の実施が必要であると言える。(文責 小口正弘)
事業所の環境パフォーマンス指標案への意見募集
環境庁は、「事業所の環境パフォーマンス指標〜意見募集のための草案〜」で、企業が環境配慮を進めるために、環境への負荷やその対策を的確に把握して自己評価するための指標項目とそれらの算定方法を提案し、11月30日まで意見を募集している。
環境パフォーマンス指標の目的は、(1)事業者の環境保全活動の適切化、(2)環境パフォーマンス情報の情報開示の適切化、(3)消費者、地域住民、投資機関等による企業の環境面での評価の促進等である。指標項目は、大きく「環境負荷関連指標」と「環境マネジメント関連指標」に分けられている。前者には、事業エリア内でのインプット、アウトプット、ストック汚染、土地利用、事業活動の上下流での物品等の購入、輸送などが挙げられる。後者には、環境マネジメントシステム、環境適合設計、環境会計、情報開示コミュニケーション、規制順守、社会貢献などの項目が挙げられている。これらの指標策定における原則として、(1)適合性、(2)比較可能性、(3)理解容易性が重視されている。
これまでは統一された指標がなく、各事業所の開示データが比較できない等の問題があった。今後、企業の自主的な情報開示の取組に対しても、社会的なアカウンタビリティ(説明責任)を促す重要な指標となることが期待される。より実状に合った活用しやすい指標の設定のために、積極的な意見提出を呼びかけたい。(文責 桑垣玲子)
有害大気汚染物質のモニタリング結果および業界団体による排出量が公表
環境庁は、平成11年度に地方公共団体が実施した有害大気汚染物質のモニタリング調査結果を発表した(http//www.eic.or.jp/kisha/200008/69219.html)。
ダイオキシン類の平均値は0.18pg-TEQ/m3となり、1.5%の地点で基準値0.6pg-TEQ/m3を超過していた。また、平均濃度は平成9年度に比べ62%の減少となり、ダイオキシン類特別措置法による削減効果が現れたと考えれられる。ベンゼンの平均値は2.5μg/m3となり、全体的には低下傾向にあるが、23%の地点(340地点中79地点)で基準値3μg/m3を超過していた。トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンは、すべての地点で基準値200μg/m3を下回っていた。また、アルデヒド類、ニッケル化合物、クロム及びその化合物、ベンゾ(a)ピレンの濃度は平成9年に比べ若干減少しているものの、その他の揮発性有機化合物や重金属類の濃度は横ばい傾向である。これらの中にはWHO欧州のガイドライン値等を超える物質もあり、一層の対策強化が必要である。
また、通産省は、大気汚染防止法に基づいて77業界団体に「自主管理計画」の策定を要請し、平成11年度の実施状況を発表している(http://www.miti.go.jp/kohosys/press/0000892/0/taiki1.htm)。ダイオキシン類を除く12物質の総排出量は、計画の基準年である平成7年度の約6.8万トンから約4.0万トンと41%削減し、すべて平成11年度の目標量を達成している。しかし、洗浄剤用途としてのジクロロメタンを中心に目標に達成していない団体が13あるとしている。
有害大気汚染物質のモニタリング結果によると依然、特定の地点で高い濃度が検出されており、今後、業界団体加盟事業者以外も含めてさらなる自主管理の強化が求められる。(文責 姫野修司)
海洋環境モニタリング調査中間結果まとまる
環境庁は、平成10〜11年度に実施した海洋環境モニタリング調査の中間結果を発表した。
本モニタリングでは、日本周辺200海里内の海域の水質、底質に加え、海生生物中に蓄積された汚染物質の濃度や生物群集の状況等を調査している。
陸域起源の汚染調査では、水質、底質は「日本近海海洋汚染実態調査(昭和50年〜平成6年度)」と同程度であった。また、重金属やダイオキシン類をはじめ、ほとんどの測定物質の値が内湾域が沖合域の値と同程度か高くなっている。特に底質中最高値は、東京湾内の鉛が49μg/g、全水銀が460ng/g、TBTが42ng/g、ダイオキシン類が7.3 pg-TEQ/g、大阪湾内のPCBが310ng/gとなっており、これらの地点で高濃度汚染が続いている。プラスチック類等は富山湾沖に非常に多く存在し、海生生物への影響が懸念される状態である。さらに、ダイオキシン類の海生生物中の濃度も東京湾でサメ類肝臓部に約180、東シナ海域でイカ類肝臓部に約20、日本海域でタラ類肝臓部に約90pg-TEQ/gと他海域より約2〜5倍高い値が見られている。
また、非水溶性無機汚泥やし尿・有機汚泥等が投入されている海域でも投入処分の明確な影響は認められなかったとされている。
今後、高濃度汚染地の詳細な実態や海生生物への影響の調査と原因の解明が早急に行われるとともに、それら全ての結果が揃わなくても予防的な対策をとることが期待される。(文責:大久保博充)
平成11年度全国水生生物調査結果まとまる
環境庁は、昭和59年から行われている全国水生生物調査の平成11年度の結果を発表した。全国4,646地点(1,542河川)の指標生物の種類と数による水質判定が行われ、そのうち、T(きれいな水)と判定された地点は全体の73%を占めた。平成10年度と11年度に共に調査が行われている2,246地点で比較すると、76%は変化がなく、改善された地点、悪化した地点は共に12%であった。
また、これまでの調査方法では、環境庁と建設省のマニュアルとが一部異なっていたため、平成12年度から統一されることとなった(情報誌「化学物質と環境」No.42 p.15 本の紹介参照)。これにより、指標生物は16種類から30種類に充実され、水質の判定階級についてもT-U、T-V等の中間階級を廃止することで計10階級からT(きれいな水)〜W(大変きたない水)のみの4階級と分かりやすく整理された。このため、平成11年度の調査のうち、1,985地点では新旧の指標による比較も試され、指標生物が多く加えられた階級Uの地点が増加する結果となっている。
平成11年度は、過去最高の5万9千人の参加があり、全国の参加者のうち、小中学校等の学校が67%、子供会・市民団体が20%であった。また、参加者数の上位3都道府県はいずれも東北地方であり、東北地方全体で調査地点の40%を占めた。一方、関東地方での調査地点が7.5%しかないのが目立っている。
環境庁では、平成12年度も全国の小学生や一般市民への調査の参加を呼びかけており、希望者は各都道府県の環境担当部局に照会してもらいたいとしている。水生生物の調査は誰でも簡単に行え、環境問題への関心を高めるよい機会となる。ぜひ一人でも多くの子供達や市民、特に関東地方をはじめとする都会の子供達に参加して欲しいものである。(文責 西田貴弘)
ダイオキシン類の排出量目録まとまる
環境庁は、平成11年度のダイオキシン類の排出インベントリーを公表した。昨年ダイオキシン類対策特別措置法が成立し、(1)コプラナーPCBがダイオキシン類に追加されたこと、(2)毒性等価係数(TEF)がI-TEF(1988)からWHO-TEF(1998)に変更されたことをうけ、コプラナーPCBを加えてWHO-TEFを用いた方法と従来通りPCDD+PCDFについてI-TEFを用いた方法の2通りの推計が行われている。
これによると、新方式による平成11年度の排出量の合計は、2,620〜2,820g-TEQ/年(うち水への排出1.5g-TEQ/年)となっており、平成9年度の排出量7,300〜7,550g-TEQ/年(うち水への排出1.9g-TEQ/年)と比較すると、2年間で6割以上の削減が図られたことになる。これは、主に一般廃棄物焼却施設で73%減少したことによるが、産業廃棄物焼却施設では55%減少にとどまり、小型廃棄物焼却炉ではわずかしか減少がみられていない。また、合計排出量に占める廃棄物焼却施設からの排出量の割合は、依然として約75%を占めており、一層の削減が必要といえる。また、焼却施設以外で比較的排出量が多く、減少率の低い、鉄鋼用焼結工程、製鋼用電気炉等でも一層の削減が求められる。
なお、水への排出量は少ないものの、削減率も低く、地域によっては問題が起こるので注意と削減が必要と考えられる。さらに、今後は、飛灰等の廃棄物としての移動量や処理、処分量についてもインベントリーが整備されることが望まれる。(文責 遠藤雅樹)
循環型社会形成推進基本法が成立、関連3法が改正、新3法が成立へ
5月末に「循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)」が成立することとなり、これに関連して、廃棄物処理法及び産業廃棄物処理特定施設法、資源リサイクル法の3法の改正が行われた。また、新しく、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」、「建設工事に係わる資材の再資源化等に関する法律(建設資材リサイクル法)」および「官公需等についての環境負荷低減物品等への需要の転換の促進に関する法律(グリーン購入法)」の3法が成立することとなった。これらと容器包装リサイクル法、家電リサイクル法の8法が基本法の下に入ることになった。
これらによって、日本の廃棄物等の対策は大きく変化することになる。とくに、循環型社会基本法では、従来の「廃棄物」の定義を再使用や再利用ができる有用な「循環資源」を含めた「廃棄物等」として定義したこと、発生抑制(リダクション)、再使用(リユース)、再生利用(マテリアルリサイクル)、熱回収(サーマルリサイクル)の順で優先的に取り組み、これらができないときにのみ適正処分を行うとしたこと、国、地方公共団体、事業者、国民の各主体の責任を明確にしたこと、国が5年毎に基本計画を立てて取り組むことなどを定めている。
また、資源リサイクル法は法律名を改め、「特定省資源業種」、「指定再利用業種」、「指定省資源化製品」、「指定再利用促進製品」、「指定表示製品」、「指定再資源化製品」、「指定副産物」などを定め、発生抑制、再使用、再資源化、分別表示などを義務づけたり、自主的取り組みを促すとしている。
これらについては、拡大生産者責任やデポジット制等の経済的措置の導入の規定が不十分で、実効が上がるか疑問であるといった批判もある。今後、関係者が監視と提案を続け、実効のあるものに育てていく必要があろう。(文責 浦野紘平)
室内中揮発性有機物のガイドラインが提案
厚生省は、トルエンなど3物質についての室内濃度指針値および検査のための採取、測定方法を定めるガイドライン案をまとめ、6月12日まで意見募集をしている。この中で、室内濃度指針値はトルエンが260μg/m3(0.070ppm)、キシレンが870μg/m3(0.20ppm)、パラジクロロベンゼンが240μg/m3(0.040ppm)と設定されている。
指針値は、遺伝子障害性、発がん性、一般毒性、生殖発生毒性についての最新の知見に基づいて策定されている。トルエンは、神経行動機能および生殖発生への影響を及ぼすと考えられる一週間の最小毒性量、キシレンは、母ラットが吸入曝露された雌の仔ラットの中枢神経系発達への影響を及ぼす1年間平均の最小毒性量、パラジクロロベンゼンは、ビーグル犬への経口投与で肝臓や腎臓などに影響を及ぼさない1年間平均の無毒性量を吸入曝露に換算して設定されている。
3物質の測定方法は、固相吸着-溶媒抽出法、固相吸着-加熱脱着法、容器採取法のいずれかの方法により空気を採取し、ガスクロマトグラフ/質量分析法によって測定することとされている。
また同検討会では、化学物質過敏症患者が訪れる病院の室内空気についても基準を設けること、その際には竣工時や既存建築に対する基準などに分けた基準を設けることも提案している。
今後は、他の多くの室内汚染物質のガイドラインの設定とともに、被害の実態調査と対策が早期に行われることが期待される。(文責 辻 真枝)
農水省 食品廃棄物の発生抑制とリサイクルの推進方向まとまる
農林水産省では、食品廃棄物リサイクル研究会を設置し、3月に発生抑制とリサイクルの推進方向についての報告書を取りまとめた。
食品廃棄物は平成8年度で20百万トン排出され、一般廃棄物の排出量(約16百万トン)の約3割を占めているが、リサイクル率は0.3%と低い。また、食品流通業や外食産業の発達などにより、大量の食品残さが廃棄、焼却処理されている。現在、食品事業者や地方自治体の一部がリサイクルに取り組み、それによりコスト減につなげている例もあるが、初期投資などの負担増への不安感、施設の不足、需要先の確保、保管期間の制約などの課題も多く、リサイクルは非常に遅れている。
このため、発生抑制とリサイクルの法制度および予算措置を含む総合的なシステムを構築し、多様な取り組み方法と様々な政策手法を効果的に組み合わせる必要があり、また、関係者が各役割に応じて一体となって取り組むべきとしている。
具体的な推進方向としては、各主体の取り組み目標や方向を明示すること、消費者が自らの減量化や事業者などと相互協力すること、食品事業者が廃棄物の分別・管理やリサイクル製品の品質確保などに努めること、国と地方公共団体が必要な資金の確保、研究開発、情報の提供などの支援措置に努めることが必要であるとしている。また、リサイクルを推進するための体制整備、広域・共同的な処理の確保、リサイクル施設の整備、効率的減量化の技術開発、リサイクル製品の需要把握の情報ネットワークの構築、農業との連携の確保、積極的な普及・啓発などが必要であるとしている。
家庭からの食品廃棄物が全体の約5割を占めることから、消費者の意識向上や教育によって資源循環型の社会が実質的に進むことが望まれる。(文責 加藤みか)
PRTR対象物質、製品の要件、対象事業者等の最終答申とパブリックコメント結果が公表
中央環境審議会環境保健部会では、2月9日に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づく第一種及び第二種指定化学物質の指定に関する審議を行い、対象物質、製品の要件及び対象事業者について答申した。PRTR及びMSDSの対象となる354種の第一種指定物質、MSDSのみ対象となる81種の第二種指定物質のリストや答申内容の詳細は、添付ファイルで公表されている。
別表1 第一種指定候補物質リスト[PDFファイル][HTMLファイル]
別表2 第二種指定候補物質リスト[PDFファイル][HTMLファイル]
対象業種一覧[PDFファイル]
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の指定について(答申)[PDFファイル]
今後の化学物質による環境リスク対策の在り方について(第二次答申)−PRTR対象事業者等について−[PDFファイル]
また、昨年11月に求めた原案についてのパブリックコメントとそれに対する考え方・対応についての審議結果も取りまとめて公表されている。
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に係る対象化学物質、製品の要件及びPRTR対象事業者の案に対する意見の募集の結果について
[PDFファイル]
パブリックコメントは、合計470件提出され、物質選定や指定候補物質についてなどの対象物質に関する意見が半数を占め、次いで業種、従業員数や取扱量などの対象事業者に関する意見が152件あった。意見提出者の中でも、企業や事業者団体からの意見が164件中124件と多く見られた。また、各意見の詳細や意見に対する回答についても添付ファイルで見ることができる。
寄せられた意見に対する考え方・対応
[PDFファイル]
環境庁では、この答申を踏まえ、関係省庁と協力して、本年度内に政令を制定したいとしている。
今後、対象物質についての分かりやすい有害性情報の提供や中小企業に対する支援およびリスクコミュニケーションを含めたPRTR関係の人材養成が進められることが望まれる。(文責 加藤みか)
室内中揮発性有機化合物の全国調査まとまる
厚生省は、平成9、10年度に全国の室内環境中の揮発性有機化合物の実態調査を行った結果を12月に公表した。この調査では、既に室内濃度指針値が示されているホルムアルデヒド以外の44の揮発性有機化合物について385の一般家屋室内と室外濃度および室内外合わせた個人の一日の平均曝露濃度(個人曝露濃度)を調べている。
室内濃度は、溶剤等に使われているトルエン、防虫剤等に使われているp-ジクロロベンゼン、木材等の天然α-ピネン等が高く、中央値を諸外国のレベルと比べるとp-ジクロロベンゼンは2〜3倍以上となり、約5%が厚生省の耐用平均気中濃度(0.1ppm)を上回っていた。また、トルエンは全体の6%、クロロホルムでは28%がWHOの空気質ガイドライン値を上回っていた。さらに、ほとんどの物質が大気中濃度と同程度またはそれ以上で、スチレン、p-ジクロロベンゼンは25倍、香料成分のリモネンは約40倍も室内濃度が高くなっていた。
個人曝露濃度では、全般的に室内濃度と高い相関関係を示し、室内濃度の影響が大きく、とくにp-ジクロロベンゼンやトルエンが高濃度となっていた。また、新築住宅(3ヶ月以内)で特にトルエンやα-ピネンが高くなっていたが、建物の種類による違いはあまりなかった。また、p-ジクロロベンゼンやα-ピネン等が夏期に高くなり、石油ストーブを使うと脂肪族炭化水素等の一部が高くなる傾向などが示されている。
今後は、リスク評価を行うとともに、発生源、発生状況の把握、室内濃度の指針値、室内濃度の低減策を検討し、また、室内濃度は換気、気温、生活習慣の他に家具等の家庭用品の使用状況との関係を調査していくとしている。
さらに今後は、室内汚染と化学物質過敏症等との関係など、健康影響評価についてもあわせて検討されることが望まれる。(文責 加藤みか)
容器包装リサイクル法の進捗状況が公表
厚生省では、容器包装リサイクル法に基づいた平成11年4〜9月の各市町村の分別収集量および再商品化量を集計し県別に公表した。
集計結果によると、上半期の収集量(再商品化率)は、無色ガラス16万t(93%)、茶色ガラス15万t(93%)、その他ガラス7.3万t(87%)、ペットボトル4.0万t(91%)、スチール缶24万t(96%)、アルミ缶6.8万t(96%)、紙パック0.45万t(98%)となっている。 昨年度の同時期と比較して分別収集を実施する市町村数が増加したため、分別収集量および再商品化量は、アルミ缶およびスチール缶以外の品目では増加している。とくにペットボトルの分別収集量は、生産量に対する割合は示されていないが、昨年同時期の1.7倍、法施行前の平成8年の約8倍と増加が著しく、再商品化量も増加している。
今回は、回収量、再商品化量は示されているが、Reuse(再利用)量とRecycle(再資源化)量の内訳は不明であり、また、環境負荷を少なくするためのReduce(製造量削減)の評価がされていない。今後は、国会提出が予定されている「循環型社会基本法(仮称)」の制定を展望し、総合的な環境負荷削減量の評価方法について検討する必要がある。
また、Refuse(買わない)や再商品化製品を優先的に購入するような意識改革を促す必要もある。
なお、厚生省では「今後の廃棄物対策の在り方に関する意見・提案」について、3月31日まで募集している。(文責:小林 剛)