農薬以外の排出量・移動量と農薬の使用量

 

排出量・移動量と農薬使用量
情報提供の基本的な考え方 排出量・移動量と農薬使用量の情報提供方法

 

排出量・移動量と農薬使用量
情報提供の基本的な考え方

   本サイトで公開する情報の根拠となる大気または水域への排出量,土壌への排出量・事業所内埋立量(農薬は使用量),および下水道への放出や廃棄物としての搬出などの移動量,及び農薬の使用量(土壌への排出扱い)は,国から2010年2月に公表された都道府県別,物質別の値(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/result/index.html)です。
 この莫大なデータを詳細に調べれば,各届出事業所が何をどれだけ排出,移動しているかが分かります。また,各都道府県で,届出対象となっていない中小規模事業所(裾切り以下事業所)や対象業種以外の事業所(非対称業種)から,何がどれだけ排出されていると推計されたか,自動車などの移動体や家庭から何がどれだけ排出されていると推計されたか,農耕地等で農薬がどれだけ使われたかの推計値などが分かります。

 しかし,知りたい都道府県での排出量,移動量や知りたい物質についての排出量,移動量については,やや分かりにくくなっています。

 そこで,全国での各物質の排出量や移動量と農薬使用量などのほかに,各都道府県ごとの各物質の排出量や移動量と農薬使用量,および物質ごとの各都道府県での排出量や移動量と農薬使用量などをまとめて分かりやすく提供することにしました。


 ただし,52番 4'-エトキシアセトアニリド(別名フェナセチン), 88番 クロロトリフルオロメタン(別名CFC-13), 127番 1,2-ジクロロ-3-ニトロベンゼン, 164番 3,4-ジメチルアニリン, 168番 1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウム塩(ジクロリドを除く), 201番 テトラクロロジフルオロエタン(別名CFC-112), 285番 ブロモクロロジフルオロメタン(別名ハロン-1211), 290番 1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(別名クロレンド酸), 296番 ベンジリデン=ジクロリド, 305番 ホスゲン, 343番 9-メトキシ-7H-フロ[3,2-g][1]ベンゾピラン-7-オン, 344番 2-メトキシ-5-メチルアニリンの 12物質は,全国で排出量も移動量もありませんでした。

 また,33番 1,1'-[イミノジ(オクタメチレン)]ジグアニジン(別名 イミノクタジン), 48番 N,N'-エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛(別名 ジネブ), 136番 3',4'-ジクロロプロピオンアニリド(別名 プロパニル), 149番 ジチオりん酸S-2-(エチルチオ)エチル-O,O-ジメチル(別名 チオメトン), 150番 ジチオりん酸O-エチル-O-(4-メチルチオフェニル)-S-n-プロピル(別名 スルプロホス), 186番 チオりん酸O,O-ジエチル-O-(6-オキソ-1-フェニル-1,6-ジヒドロ-3-ピリダジニル)(別名 ピリダフェンチオン), 187番 チオりん酸O,O-ジエチル-O-2-キノキサリニル(別名 キナルホス), 191番 チオりん酸O,O-ジメチル-S-{2-[1-(N-メチルカルバモイル)エチルチオ]エチル}(別名 バミドチオン), 215番 2,2,2-トリクロロ-1,1-ビス(4-クロロフェニル)エタノール(別名 ケルセン), 229番 2-(2-ナフチルオキシ)プロピオンアニリド(別名 ナプロアニリド), 248番 ビス(ジチオりん酸)S,S'-メチレン-O,O,O',O'-テトラエチル(別名 エチオン), 302番 ペンタクロロニトロベンゼン(別名 キントゼン), 303番 ペンタクロロフェノール(別名 PCP), 327番 N-メチルカルバミン酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾ[b]フラニル(別名 カルボフラン), 328番 N-メチルカルバミン酸3,5-ジメチルフェニル(別名 XMC), 337番 S-1-メチル-1-フェニルエチル=ピペリジン-1-カルボチオアート(別名 ジメピペレート), 339番 <2-(1-メチルプロピル)-4,6-ジニトロフェノール(別名 ジノセブ), 347番 りん酸2-クロロ-1-(2,4-ジクロロフェニル)ビニル=ジエチル(別名 クロルフェンビンホス), 348番 りん酸2-クロロ-1-(2,4-ジクロロフェニル)ビニル=ジメチル(別名 ジメチルビンホス), 349番 りん酸1,2-ジブロモ-2,2-ジクロロエチル=ジメチル(別名ナレド), 351番 りん酸ジメチル=(E)-1-メチル-2-(N-メチルカルバモイル)ビニル(別名モノクロトホス)の 21農薬は,全国で使用がありませんでした。

 なお,326番N-メチルカルバミン酸2-イソプロポキシフェニル(別名 プロポキスル)は,室内用殺虫剤としては使用されていますが,農薬としての使用はありませんでした。


 裾切り以下の事業所,非対象業種の事業所からの排出については,大気・水域等の排出・移動先が不明であるため,排出先別排出量と移動先別移動量の推計はしないことにしました。また,物質ごとの推計排出量が毎年大きく変動していて信頼度が低いため,市区町村別の値は推計しないこととしました。

 自動車からの排出量は走行量から推計され,家庭等からの排出量は,世帯数か人口や下水道普及率などから推計されており,これらの統計値は別に公開されていますし,これらの削減対策には,全国的な自動車排ガス規制や家庭用品規制,下水道普及などが必要になり,市区町村のみでの対応は困難ですので,市区町村別の排出量は推計しないこととしました。一方,比較的信頼度が高く,削減対策を採りやすいので,届出事業所からの大気及び水域への排出量は,事業所の所在する市区町村別に集計しました。

農薬の使用量について国は,使用場所や製剤の形状等に関係なく,使用量の全量が土壌へ排出されることとしています(検疫用臭化メチルくん蒸剤は使用量の全量,青酸くん蒸剤は使用量の0.5%を倉庫業からの大気への排出に割り振ることにしています)。しかし,散布された農薬が大気や水域にどれだけ揮散,流出するかは農薬の種類・形状だけではなく,散布方法,気象条件,地理的条件などにより変化します。そのため,農薬の使用量をそのまま土壌への「排出量」として取り扱うことには問題がありますので,ここでは,農薬は「使用量」として表示することにしました。

 なお,一般に農薬は,いくつかの有効成分(「原体」と言われています)を一定の割合で含む「製剤」に各メーカーが商品名を付けて販売しています。このため,PRTR対象の125物質(原体)を含む824製剤ごとに使用量を推算した上で,この「製剤別使用量」に,各製剤の「PRTR対象物質(有効成分)の含有率」を掛けて,「各製剤の対象物質(有効成分)換算の使用量」が計算されます。

 なお,農薬として使用されている可能性があった125種類のPRTR対象物質(無機シアン化合物を除く)のうち,14物質については,現在市販されている製剤には含まれていませんでした。
 ただし,農薬の届出事業所からの排出量については,農業用等への使用量に比べて少量であり,大部分が特定の下水道業や廃棄物処理業からの排出量であり,また,下水道業や廃棄物処理業と比べて極端に大量に排出している信頼度の低い数値があり,届出値には「排出量」と「使用量」とが混在しているため,今回は無視することにしました。
 さらに,農薬に含まれている有効成分以外の化学物質(アセトニトリル,直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(C=10-14),エチルベンゼン,エチレングリコール,2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテル,キシレン,クロロベンゼン,N,N-ジメチルホルムアミド,トルエン,フタル酸ジ-n-ブチル,ベンゼン,ほう素及びその化合物,ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(C=12-15)),ポリ(オキシエチレン)=オクチルエーテル,ポリ(オキシエチレン)=ノニルエーテル)についても,溶剤類は届出排出量に比べてごく少量であること,その他の物質についても少量のものが多く,使用後の大気と水域への排出率が不明であるために,事業所からの排出量と加算できないことから,考慮しないことにしました。
   また,平成14年度から国が推計を始めた家庭内や側溝等で使用される殺虫剤および平成15年度から国が推計を始めたシロアリ防除剤にも,主に農薬の有効成分として使用される化学物質が含まれますが,これらについては,別に表記しました。

 

農薬以外の排出量・移動量と農薬使用量の情報提供方法

 農薬以外の排出量・移動量および農薬の使用量について,以下のような情報を提供しています。

(1) 全国での届出事業所からの各物質(農薬以外)の「排出先別排出量・移動先別移動量」
   農薬以外の各物質について,届出事業所からの大気への排出量,水域への排出量,土壌への排出・事業所内埋立量,下水道への移動量,廃棄物としての搬出量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(2) 全国での届出事業所以外からの各物質の「排出源別排出量/使用目的別農薬使用量」
   農薬を含む各物質について,裾切り以下の中小事業所,各種の自動車や船舶等の移動体,塗料,洗剤・化粧品等からの環境中への排出量,農薬の使用量,農業用以外の殺虫剤の使用量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(3) 全国での「各農薬(有効成分)の使用先別使用量」
   各農薬(有効成分)の田,果樹園,畑,ゴルフ場,森林,その他非農耕地,家庭園芸などの使用先別の使用量,および合計使用量をまとめて示しました。
 
(4) 全国での「農業用以外各殺虫剤(有効成分)の使用先別使用量」
   各殺虫剤について,家庭用,輸入品等の防疫用,下水溝等の不快害虫駆除用,シロアリ防除用としての使用量,およびそれらの合計量をまとめて表示しました。
 
(5) 都道府県ごとの届出事業所からの各物質の「排出先別排出量・移動先別移動量」 (例示は岡山県)
   47都道府県ごとに,農薬以外の各物質について,届出事業所からの大気への排出量,水域への排出量,土壌への排出・事業所内埋立量,下水道への移動量,廃棄物としての搬出量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(6) 都道府県ごとの届出事業所以外からの各物質の「排出源別排出量/使用目的別農薬使用量」 (例示は岡山県)
   47都道府県ごとに,農薬を含む各物質について,裾切り以下の中小事業所,各種の自動車や船舶等の移動体,塗料,洗剤・化粧品等からの環境中への排出量,農薬の使用量,農業用以外の殺虫剤の使用量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(7) 都道府県ごとの「各農薬(有効成分)の使用先別使用量」 (例示は岡山県)
   47都道府県ごとに,各農薬(有効成分)の田,果樹園,畑,ゴルフ場,森林,その他非農耕地,家庭園芸などの使用先別の使用量,および合計使用量をまとめて示しました。 
 
(8) 都道府県ごとの「農業用以外各殺虫剤の使用先別使用量」 (例示は岡山県)
   47都道府県ごとに,各殺虫剤について,家庭用,輸入品等の防疫用,下水溝等の不快害虫駆除用,シロアリ防除用としての使用量,およびそれらの合計量をまとめて表示しました。
 
(9) 物質(農薬以外)ごとの各都道府県での「届出事業所からの排出先別排出量と移動先別移動量」 (例示はトルエン)
   農薬以外の各物質ごとに,各都道府県での届出事業所からの大気への排出量,水域への排出量,土壌への排出・事業所内埋立量,下水道への移動量,廃棄物としての搬出量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(10) 物質ごとの各都道府県での「届出事業所以外からの排出源別排出量/使用目的別農薬使用量」 (例示はトルエン)
   農薬を含む各物質について,各都道府県での裾切り以下の中小事業所,各種の自動車や船舶等の移動体,塗料,洗剤・化粧品等からの環境中への排出量,農薬の使用量,農業用以外の殺虫剤の使用量,およびそれらの合計量をまとめて示しました。
 
(11) 農薬ごとの「各都道府県での使用先別使用量」 (例示はダイアジノン)
   各農薬(有効成分)について,各都道府県での田,果樹園,畑,ゴルフ場,森林,その他非農耕地,家庭園芸などの使用先別の使用量,および合計使用量をまとめて示しました。
 

 なお,排出量や使用量の表示は,0.1kg/年の単位までとし,それら以下の場合は0.0とし,全くない場合は空欄とすることにしました。ただし,排出・移動先別や排出源別の排出量の表示は,有効数字2桁の数字×E+n(10のn乗)とし,全くない場合は空欄とました。

 これらによって,日本全体,または各都道府県内で,あるいは各化学物質が,どこから,どれだけ排出・移動されているか,使われているかなどが分かります。

各物質の用途 参照


著作権:エコケミストリー研究会横浜国立大学 環境安全管理学研究室