PRTR対象物質について、単に排出量や農薬使用量を考えるだけでなく、行政や事業者が大気や水質を測定した値を評価したり、事業者が排ガス(周辺大気)や排水(周辺河川等)を自主的に管理したり、地元自治体や周辺住民とのリスクコミュニケーションを行ったりする際には、人の健康あるいは水生生物(生態系)への影響を考えて、
ほぼ安全と考えられる「環境管理の目標濃度」を得ることはとても重要です。しかし、PRTR制度は規制ではなく、毒性の強さについての情報が十分でない物質についても自主管理を進めることが特徴ですので、462種類のPRTR対象物質すべてについて、法律で環境基準値を決めることは基本的に困難です。
そこで、本ホームページでは、PRTR対象物質の選定にも利用された横浜国立大学大学院環境安全管理学研究室が長年蓄積してきたデータベース、すなわち、信頼性の高い国際機関や日米の政府機関、または信頼できる専門家機関等による定量的な毒性情報等を収集した結果から、
「人の健康保護のための大気管理参考濃度」、「人の健康保護のための水域管理参考濃度」、「水生生物保護のための水域管理参考濃度」の3種類の
「環境管理参考濃度」および「環境管理参考濃度」の逆数である
「毒性重み付け係数」を算出して提案することにしました。
ただし、これらは現時点で入手可能な、できるだけ信頼できる情報を基にして提案した値ですが、
この濃度を越えたら直ちに被害がでると言うことではありませんし、逆に、この濃度以下にすれば絶対に安全であるということでもありません。また、基準値等の追加や変更などの毒性関連情報の充実によって変化することがある値です。
また、信頼性の高い国際機関や日米の政府機関、または信頼できる定量的な毒性情報がない物質については、「環境管理参考濃度」の算出ができません。「環境管理参考濃度」の提案・表示がないことは、その物質についての毒性情報が不足していることを意味し、必ずしも安全であることを意味していませんので注意して下さい。
国や都道府県で公表しているPRTRデータは、排出量(農薬は使用量)と廃棄物等としての移動量です。しかし、PRTR対象物質には、毒性が大きく異なるものがありますから、
同じ量が排出または使用されても、悪影響の出る可能性(リスク)は大きく異なります。
排出または使用された化学物質のリスクを正しく評価するためには、毒性の強さとともに、各地域での環境中の濃度から摂取量を知る必要があります。
このため、環境中の化学物質の濃度を様々な環境挙動モデルで計算することが試みられています。しかし、届出された排出量は、年間の総量であり、計算に必要な排出ガスあるいは排水の濃度と量の時間変化、排出源の位置や形状などのデータはありません。また、使用された農薬が大気や水域にどれだけ揮散、流出するかは農薬の種類はもとより、その使用方法、あるいは地形や気象によって変化し、正確には分かりません。さらに、市区町村ごとの気象データも揃っていません。したがって、多くの仮定や近似をもとにした仮想的な濃度は計算できても(このような計算結果をコンピュータ画面で見せられると真実であるかのように思いがちですので注意してください)、
環境中濃度を正確に予測することは不可能です。
一方、
ある量の化学物質が排出されたり、農薬が使用されると、発生源近くでの濃度は、必ず排出量や農薬使用量に比例します。したがって、リスクは排出量または農薬使用量と毒性の強さに比例すると考えられます。
そこで、届出事業所からの排出量、または農地等での農薬の使用量を、
環境管理参考濃度で割り算し(環境管理参考濃度が小さいほど毒性が強いと考えられるので、逆数を「毒性重み付け係数」と定義し、この値を掛けてもよい)、「毒性重み付け排出量」や「毒性重み付け農薬使用量」を求め、都道府県や市区町村別の大きさと、それらを大きくしている原因物質を表示することによって、各事業所(者)や地方自治体、あるいはNGO等が、
どの地域で、どの物質について、優先的に発生源や周辺汚染の調査、および対策を行ったら良いかを判断しやすいようにしました。
なお、裾切り以下の事業所、非対象業種の事業所からの排出については、推計排出量の信頼性が低いことや個別の排出源や大気・水域等の排出先が不明確であるため、毒性重み付け排出量は計算しませんでした。また、自動車や家庭からの排出については、推計排出量が自動車走行量や所帯あるいは人口や下道未普及率などに比例すること、自動車本体の改善やライフスタイルの改善など以外に削減対策がとりにくいことなどから、各都道府県での毒性重み付け排出量のみ提供し、各市区町村での値は提供しないことにしました。農薬の使用量についても、市区町村への割り振りが非常に大変であること、削減のためには農作物の転換、農耕地の削減、低農薬・無農薬栽培の普及等以外には削減対策がとりにくいことなどから、各都道府県での毒性重み付け農薬使用量のみを提供し、各市区町村での値は提供しないことにしました。
毒性の強さとしては、
「人の健康に与える悪影響の強さ」と
「生態系で影響を受けやすい水生生物に与える悪影響の強さ」を考えました。
人の健康に与える悪影響の強さの情報は、人が化学物質を取り込む経路が、主に呼吸(吸入)と飲料水や食物(経口)ですので、吸入毒性と経口毒性について考えました。なお、これらの毒性には低濃度で長期間取り込んだ場合に問題となる長期毒性(発がん性や慢性毒性等)と事故等で短時間に取り込んだ場合に問題となる短期(急性)毒性とがありますが、PRTRでは日常的な環境のリスクを考えるので、長期毒性のみを考えて、大気と水域の管理参考濃度(毒性重み付け係数)を提案しました。
なお、短期毒性については毒物・劇物の指定がされているか否かの情報だけを提供することにしました。また、これらの毒性の強さに関する情報(毒性重み付け係数)のほかに、発がん性、生殖毒性、変異原性、感作性(アレルギー誘発性)などの毒性があることは分かっていても、これらの毒性の強さが求められていない物質については、人に対して毒性を与える確からしさ(毒性確度情報)をランク分けして分かりやすい棒グラフで示すことにしました。
水生生物にに対する毒性の強さは、OECDやEUと同様の考え方で、データ数が多い、指定生物種についての魚類の半数致死濃度(LC50)、甲殻類(ミジンコ類)の半数遊泳障害濃度(EC50)、藻類の半数増殖阻害濃度(EC50またはIC50と表記)などの短期毒性値を利用し、これらの毒性データの信頼性やデータの不足状況を考慮して「それらの生物の増殖に悪影響のない濃度」とするための安全係数で割った値を水域管理参考濃度とすることにしました。
現在、毒性に関する情報は、各種の国際機関、国、地方公共団体、学会、その他の公共機関、およびデータベース業者などの様々な情報源から発信されています。しかし、情報源によって毒性データやそのデータの評価結果が大きく異なることがあり、信頼性の不明確な情報を利用すると、誤った判断をしてしまう恐れがあります。このため、
信頼性の不明確な情報源は使用せず、信頼性の高い情報源のみから情報を収集すること、および信頼性のより高い情報から優先的に利用することが極めて重要であると考えました。
そこで、エコケミストリー研究会と(有)環境資源システム総合研究所では、専門家の議論を経た信頼性が高い情報源として、(a)日本の政府機関、(b)国際機関、(c)米国の政府機関、(d)上記以外の信頼できる学会等の専門家機関からの情報を収集して用いることとしました。すなわち、全体の信頼性を失わないために、これら以外の都道府県あるいは米国の州などの情報や商業データベース等の情報は利用しないことにしました。
ここで、日本以外に米国の政府機関のみを選定した理由は、米国が世界的に最も毒性情報が充実している国であり、他の国については公表情報が少なく、採用、不採用の判断や情報の更新が難しいためです。
ただし、水生生物に対する毒性情報は、(a)、(b)、(c)からの情報にも信頼性が低い情報が混在していますので、横浜国立大学大学院環境安全管理学研究室が信頼性の低いデータを除き、さらに日本、米国、英国、ドイツ、カナダの水生生物保護のための水質基準を追加して整理、解析した値を採用しました。
なお、日本の基準値や指針値等は最新の値、それら以外は2015年5月現在の値を使用しました。
吸入長期毒性とは、人が長期間吸い込んだ場合に、内臓の機能や神経等に悪影響を与えたり、がんを生じる可能性がある毒性をいいます。吸入毒性の強さは、敏感な人が一生涯(70年間)吸い続けても悪影響を受けない大気または室内空気中の濃度、または実質的に発がんの確率が無視できる(10万分の1以下になる)大気または室内空気中の濃度で表されています。
飲食物と違い、空気は肺から直接取り込まれるため、肝臓などで解毒されないまま全身へまわる可能性があります。したがって、吸入毒性には特に注意が必要です。また、人は1日に15m
3から20m
3の空気を吸入しています。これは、重量で19kgから25kgにもなります。すなわち、人は1日に体重の2分の1から3分の1もの空気を吸っていますので、吸入毒性物質の管理は非常に重要です。
大気管理参考濃度を算出するための吸入長期毒性は、
表1に示すような情報源をもとに情報の優先順位を
下図のように決定することにしました。
すなわち、日本の大気環境基準値や大気環境指針値を最優先し、次に、世界保健機関(WHO)の発がん性物質以外についての大気質ガイドライン値を採用するか、もしくは発がん性物質に関するユニットリスク、すなわち、1µg/m
3の空気を一生涯(70年間)、1日に20m
3吸い続けたときの発がん確率を採用することにしました。なお、米国の国家環境大気質基準値もありますが、日本の大気環境基準にある項目しかないため採用しないこととしました。また、これらの値がない場合には日本の室内濃度の長期指針値を採用することとしました。
さらに、これらの基準値等がない物質は、米国環境保護庁(U.S.EPA)が毒性情報を整理して公表している毒性データベースIRISに示されている発がん性物質以外についての吸入の参考曝露濃度(RfC:一生涯吸い続けても悪影響がないと思われる濃度)または発がん性物質の吸入ユニットリスク、及び米国産業衛生専門家会議(ACGIH)および日本産業衛生学会によって決められている作業環境の許容濃度から算出される参考濃度のうちで、最も厳しくなる値を採用することにしました。
ここで、作業環境の許容濃度は、労働の場以外での許容限界値として用いないこととされていますが、これ以外に吸入長期毒性の強さに関する情報が少ないため、他に信頼できる情報がない場合には、作業環境と一般環境との取り込み条件の差などを補正して利用することにしました。このような取扱いは、国の大気環境基準値や大気環境指針値の決定の際にも採用されています。
表1 大気管理参考濃度を算出するために利用した情報源
大気基準値等 |
1. |
環境省、環境基本法第16条第1項による大気の汚染に係る環境上の条件につき人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準(大気環境基準)、
http://www.env.go.jp/kijun/taiki.html及び大気環境指針値
|
2. |
World Health Organization (WHO), WHO Air Quality Guidelines global update,
http://www.who.int/phe/health_topics/outdoorair_aqg/en/
|
3. |
厚生労働省、シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku.html?tid=128714
|
IRIS参考曝露濃度 RfCと吸入ユニットリスク |
4. |
United States Environmental Protection Agency (U.S.EPA), The Integrated Risk Information System (IRIS), Chronic Health Hazard Assessments for Noncarcinogenic Effects, Reference Concentration for Chronic Inhalation Exposure (RfC); Carcinogenicity Assessment for Lifetime Exposure, Quantitative Estimate of Carcinogenic Risk from Inhalation Exposure, http://cfpub.epa.gov/ncea/iris/compare.cfm
|
作業環境許容濃度 TWA |
5. |
American Conference of Governmental Industrial Hygienist (ACGIH), 2011
Threshold Limit Values for Chemical Substances and Physical Agents and
Biological Exposure Indices, Adopted Threshold Limit Value
|
6. |
日本産業衛生学会、許容濃度の勧告 表I 許容濃度、産業衛生学会誌、Vol.56 (2014)
|
|
大気環境基準値や大気環境指針値、室内空気の長期指針値、WHO大気質ガイドラインなどは、そのままの値を大気管理参考濃度Caとしました。
RfC(mg/m
3)は、大気経由の摂取割合を掛けると大気に関する基準値等に相当する値が得られことになりますが、日本の大気環境基準やWHO大気質ガイドラインの多くは、大気汚染しやすい物質については、大気経由摂取割合を1とみなしています。このため、RfCの数値もそのまま大気管理参考濃度としました。
また、ユニットリスクからは、10万分の1の発がんリスクとなる大気管理参考濃度C
a(mg/m
3)とし、下式によって算出しました。
C
a= 1/1000÷10
5UR
a = 10
-8UR
a-1
ただし、UR
a:吸入のユニットリスク(µg/m
3)
-1です。
10万分の1の発がん確率となる濃度を大気管理参考濃度とした理由は、WHOが発がん物質について、生涯発がんリスクが1万分の1ではただちに対策を施す必要があり、10万分の1では可能な限り対策を施す、100万分1では注意して経済性等を考慮して対処するとしていること、日本の大気環境基準値も同じ10万分の1の発がん確率で決められていることによります。
作業環境の許容濃度からの大気管理参考濃度C
a は以下の式で求めました。
C
a(mg/m
3) =(作業環境の時間加重許容濃度TWA)÷安全係数
=TWA÷{(個人差の安全係数)×(LOAELとNOAELとの比)×(時間補正)}
=TWA÷(10×3〜10×4〜10)=TWA÷(1,000〜120)=TWA÷300
作業環境では、特に敏感な人は配置転換が可能なので、許容濃度は敏感な人は考慮されていませんが、環境基準等は敏感な人も含めて設定されています。
このような個人の感受性の差には、一般に安全係数として10が用いられています。また、作業環境の許容濃度は、大部分の成人には影響がないが、 一部の人には悪影響がある可能性がある濃度(LOAELに相当)で設定されていると考えられるのに対して、環境基準等は悪影響がでないと想定される濃度(NOAEL)
で設定されています。このため、LOAELとNOAELの安全係数の差3〜10が用いられています。
さらに、作業環境の時間加重平均許容濃度TWAは、1日8時間、 週5日間の断続的な取り込みを想定しているのに対して、一般環境では連続的な取り込みとなります。断続的な取り込みの場合には、取り込んでいない時間に
回復することがありますが、連続的な取り込みではそれができないことがあります。また、発がん性物質では、一生涯(70年間)の曝露によるリスクを考える
のに対して、作業環境では労働年数(約35年間)の曝露を考えています。したがって、曝露時間の補正(24h/8h)×(7d/5d)=4.2だけでは不十分なことがあると
考えられ、4〜10を用いて補正することとしました。したがって、TWAの1,000分の1から120分の1が大気管理参考濃度になります。
また、環境省が作業環境のTWAを利用して大気環境基準を設定する際にも、個別の物質ごとに毒性の種類と作用機構についての詳細な検討を行い、 TWAの1,000分の1から100分の1の値を採用しています。そこで本情報では300分の1を採用することにしました。
経口長期毒性とは、人が長期間、飲食によって取り込んだ場合に、内蔵機能や神経等に悪影響を与えたり、がんを生じる可能性がある毒性をいいます。経口長期毒性の強さは、敏感な人が一生涯取り続けても悪影響を受けない水中の濃度、あるいは一生涯取り込み続けても悪影響を受けない1日、体重1kgあたりの取り込み量(1日許容摂取量:ADI)、または実質的に発がんの確率が無視できる水中の濃度、あるいは一生涯取り込み続けても実質的に発がんの確率が無視できる(10万分の1以下になる)1日、体重1kgあたりの取り込み量(ADI)で表されています。
水域管理参考濃度を算出するための経口長期毒性は、
表2に示すような情報源をもとに採用の優先順位を
下図のように決定することにしました。
すなわち、日本の健康の保護に関する水質環境基準値または要監視項目の指針値を最優先し、次に日本の健康保護に関する水道水質基準値または管理目標値を採用しました。その次に、世界保健機関(WHO)が国際的な議論の上で示している飲料水水質ガイドライン、それらがない場合には米国の安全飲料水基準を採用することにしました。
これらの濃度情報がない場合には、日本政府(環境省または厚生労働省)によって決められているか、国連食糧農業機関(FAO)とWHOとの合同残留農薬会議(JMPR)で決められている農薬の1日許容摂取量(ADI:一生涯取り込んでも悪影響がないとみなせる1日、体重1kgあたりの取り込み量)の厳しい方の値から算出される濃度を用いました。
ADIもない場合には、米国環境保護庁(U.S.EPA)が各州の水質の基準値を定める際の参考となるように推奨している水質クライテリアを採用することとしました。この水質クライテリアは、毒性学的にはやや厳しめの値が示されていますが、他に水質基準等やADIがない場合には、安全側の値として採用しました。なお、発がん性物質の水質クライテリアは100万分の1の発がん確率での値が示されていますので、他の値と同様に10万分の1の発がん確率に揃えるため、10倍した値を使用しました。
これらの情報もない場合には、U.S.EPAが毒性情報を整理して公表している毒性データベースIRISに示されている発がん性以外の参考曝露量(RfD:ADIとほぼ同じ意味ですが、ADIほど十分な議論で決められていない)、IRISの経口ユニットリスク(1µg/Lの水を一生涯、1日に2Lのみ続けたときの発がん確率の両者から算出される濃度のうち、厳しい方の値を採用することにしました。
表2 水域管理参考濃度を算出するために利用した情報源
水質基準値等 |
1. |
環境省、水質汚濁に係る環境基準について、別表1 人の健康の保護に関する環境基準、
http://www.env.go.jp/kijun/mizu.html
|
2. |
厚生労働省、水道水質基準について、http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/
|
3. |
World Health Organization (WHO) Guidelines for drinking-water quality,
third edition, incorporating first and second addenda, http://www.who.int/water_sanitation_health/dwq/gdwq3rev/en/
|
4. |
United States Environmental Protection Agency (U.S.EPA), National Primary Drinking Water Regulations. The Safe Drinking Water Act.
http://www.epa.gov/safewater/mcl.html#mcls
|
5. |
United States Environmental Protection Agency (U.S.EPA), National Recommended
Water Quality Criteria, http://epa.gov/waterscience/criteria/wqctable/
|
農薬のADI |
6. |
The Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues (JMPR), http://apps.who.int/pesticide-residues-jmpr-database
|
7. |
内閣府、食品安全委員会の農薬ADI評価、http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/list?itemCategory=001
|
参考曝露量 RfD |
8. |
United States Environmental Protectin Agency (U.S.EPA), The Integrated
Risk Information System (IRIS), Chronic Health Hazard Assessments for Noncarcinogenic
Effects, Reference Dose for Chronic Oral Exposure (RfD), http://cfpub.epa.gov/ncea/iris/compare.cfm
|
ユニットリスク |
9. |
United States Environmental Protectin Agency (U.S.EPA), The Integrated
Risk Information System (IRIS), Drinking Water Unit Risks, http://cfpub.epa.gov/ncea/iris/compare.cfm
|
|
水質環境基準値や要監視項目指針値、水道水質基準値や監視項目指針値、WHO飲料水水質ガイドライン値、米国飲料水基準値、米国EPAの発がん物質以外の水質クライテリアなどは、そのままの値を水域環境管理参考濃度とし、米国EPAの発がん物質の水質クライテリア(100万分の1の発がん確率の値)は、10倍して用いました。
また、発がんのユニットリスクからは、10万分の1の発がんリスクとなる濃度を水域管理参考濃度C
w(mg/L)とし、下式によって算出しました。
C
w = 1/1000÷10
5UR
w = 10
-8UR
w-1
ただし、UR
w:経口のユニットリスク(µg/L)
-1です。
10万分の1の発がん確率のときの濃度を水域管理参考濃度とした理由は、WHOが発がん物質について、生涯発がんリスクが1万分の1ではただちに対策を施す必要があり、10万分の1では可能な限り対策を施す、100万分1では注意して経済性等を考慮して対処するとしていること、日本の水質環境基準値も同じ10万分の1の発がん確率で決められていることによります。
1日許容摂取量ADIまたは参考曝露量RfDからの水域管理参考濃度C
wは以下の式で求めました。
Cw(mg/L)={ADIまたはRfD(mg/kg・d)×体重(kg)×水経由摂取割合Xw}÷
{1日の飲料水摂取量(L/d)}
= (ADI またはRfD)× 50×Xw÷2= 25×(ADIまたはRfD)×Xw
体重および1日の飲料水量は、日本の水質基準値等の設定の際に用いられている値である、体重50kgおよび1日飲料水量2L/dを用いることにしましたが、飲料水経由での摂取量の総摂取量に対する割合X
wは個別物質ごとに設定する必要があります。しかし、この飲料水経由の摂取割合X
wを細かく決めることは非常に困難です。そこで、国際的な考え方を参考に、以下のようにして、0.01(1%)を最小とし、0.03(3%)、0.1(10%)、0.2(20%)、0.5(50%)の5段階ランク分けることにしました。
すなわち、化学物質の主な曝露経路は、大気、飲料水および食品ですので、大気経由摂取割合X
a(−)、水経由摂取割合X
w(−)、食品経由摂取割合X
f(−)の和は1になり、以下の式が成立します。
Xw = 飲料水からの摂取量÷全摂取量
={(飲料水濃度)×(1日の飲料水摂取量)×(経口吸収率)}÷
{(大気中濃度)× (1日の呼吸量)×(吸入吸収率)
+(飲料水濃度)×(1日の飲料水摂取量)×(経口吸収率)
+(食品中濃度)×(1日の該当食品摂取量)×(経口吸収率)}
ここで、気化しやすい物質は取扱中に揮発して大気環境中に排出されやすいことになり、水経由摂取割合X
wが小さくなります。ここで、環境水中と大気中との間に気液平衡関係が成立しているとみなしたとき、水からの気化しやすさはヘンリー定数H(−)という値で示されます。また、生物濃縮性の高い物質は魚介類に蓄積されやすいためX
fが大きくなります。生物濃縮性を表す値には生物濃縮係数BCFという値がありますが、BCFの実測値は非常に少ないため、BCFの実測値がない物質についてはオクタノール-水分配係数PowからBCFを推算するのが一般的です。
そこで、(汚染魚介類中濃度mg/kg)=(生物濃縮係数BCF)×(水中濃度mg/L)、 (大気濃度mg/m
3)=1,000(ヘンリー定数H)×(飲料水濃度mg/L)とみなし、1日の飲料水摂取量は2L/d、1日の呼吸量は20m
3/d、農薬以外の化学物質の食品からの摂取は1日に0.1kg/dの汚染魚介類から摂取すると仮定し、吸入での吸収率と経口での吸収率は等しいと近似して、水経由摂取割合X
wを概算してみました。その概算結果をもとに、残留性農薬以外の有機化合物の水経由摂取割合X
wは、ヘンリー定数とBCFまたはLogPowとから、
表3-aに示すように、0.01(1%)を最小とし、0.03(3%)、0.1(10%)、0.2(20%)、0.5(50%)の5段階にすることにしました。
なお、HとBCFの値は、米国環境保護庁の物性検索エンジンEstimation Program Interface(EPI)Suite (
http://www.epa.gov/opptintr/exposure/pubs/episuite.htm)の実測推奨値を優先して採用し、それらがない場合にはBCFの代わりにLogPowを用い、Hは化学構造からの推算値を用いました。
ただし、農作物に残留性のある農薬類については、穀物や野菜等の農産物経由での摂取割合が80%以下となるように残留農薬基準値が設定されていますので、大気、飲料水および魚介類経由での摂取割合の合計を安全側を考えて20%として、
表3-bのようにすることにしました。
また、無機物質のX
wは、WHO飲料水ガイドラインなどと同様に0.1としました。
表3-a 残留性農薬以外の有機化合物の水経由摂取割合X
wの設定方法
|
BCF<500 LogPow<4 |
500≦BCF<5000 4≦LogPow<5 |
5000≦BCF 5≦LogPow |
4E-3≦H |
0.01 |
0.01 |
0.01 |
4E-4≦H<4E-3 |
0.1 |
0.03 |
0.01 |
4E-5≦H<4E-4 |
0.2 |
0.1 |
0.01 |
H<4E-5 |
0.5 |
0.1 |
0.03 |
表3-b 残留性農薬の水経由摂取割合X
wの設定方法
|
BCF<500 LogPow<4 |
500≦BCF<5000 4≦LogPow<5 |
5000≦BCF 5≦LogPow |
4E-3≦H |
0.01 |
0.01 |
0.01 |
4E-4≦H<4E-3 |
0.03 |
0.01 |
0.01 |
4E-5≦H<4E-4 |
0.03 |
0.03 |
0.01 |
H<4E-5 |
0.1 |
0.03 |
0.01 |
野生生物のうちでも、特に、藻類、甲殻類、魚類などの水生生物は有害物質の影響を直接受けます。藻類は二酸化炭素などの無機物から生育する基礎生物であり、甲殻類などの動物プランクトンや小動物、魚類などの餌となります。動物プランクトンや小動物は、魚類や鳥類の餌になり、魚類は鳥類や獣だけでなく、人間の食糧になります。このため、国際的に、水生生物に対する毒性物質を管理することは、森林保護とともに、生態系の保護にとって最も重要な事項とされています。
水生生物に対する毒性については、様々な生物種や試験条件での値が報告されています。また、OECDやEUでは、水生生物などについての毒性試験方法と毒性の強さに応じた化学物質の管理の方法が示され、
多くのOECD加盟国では、水生生物毒性をもとにした化学物質管理が広く行われています。たとえば、米国、英国、ドイツ、カナダ等では水生生物保護のための水環境基準が定められています。これに対して、日本ではあまり進んでいないので、2002年にOECDから生態系保護を考えた化学物質管理を進めるように勧告されてしまいました。
OECDやU.S.EPAによると、食物連鎖上で最も重要な基本的生物であり、感受性が高く、比較的容易に飼育や管理ができ、また、代謝などの機能が異なる生物として、食物連鎖の最下位に位置する藻類について、増殖速度が72時間または96時間で半分になる濃度(EC
50)、次に位置する甲殻類節足動物のミジンコ類の半数が48時間で泳がなくなる濃度(EC
50)、さらに、その上に位置する魚類の半数が96時間で死亡する濃度(LC
50)を中心に試験することを推薦しています。このため、これらの短期毒性試験データが世界的に最も多く報告されており、日本でも同じ試験を行うようになっています。また、国際的にこれらの水生生物に対する短期毒性データをもとにした有害化学物質の管理が行われています。
そこで、これらの情報を用いて水生生物保護を考えた水域管理参考濃度を定めることとしました。
なお、上記の生物に対する無影響濃度(NOEC)を使った評価も報告され、一部で化学物質管理に利用されています。しかし、「無影響」の定義が不明確であり、また、試験されている生物数やデータ数も少なく、信頼性の高い値が得にくいので、ここではEC
50やLC
50のデータを利用し、NOECのデータは利用しないこととしました。
情報源としては、まず、日本、米国、英国、ドイツ、カナダの水生生物保護のための水質基準値を用いました。
また、藻類、ミジンコ類、魚類に対する毒性データについては、公的機関での議論によって十分に評価されているまとまった情報は世界的にありません。
そこで、大量の毒性データが効率的に収集可能な公的な情報源として、(a)世界最大の水生生物毒性データベースである米国環境保護庁(U.S.EPA)のECOTOX
データベース(Aquatic Toxicity Information Retrieval:AQUIRE)(
http://cfpub.epa.gov/ecotox/)、 (b)専門家組織によって収集された水生生物毒性データが収録された化学物質生態毒性・毒性欧州センター(European Center for
Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals:ECETOC)の データベース(Technical Report
No. 56の中のAquatic Toxicity Data Evaluation Appendix C:The Database)、 (c)環境省の生態影響試験結果(
http://www.env.go.jp/chemi/sesaku/seitai.html)を収集し、 決められた条件でのデータを選定し、元情報を確認して重複しているデータや、明らかな単位間違えなどの信頼性の低いデータを削除してから整理して使用することとしました。
なお、農薬についてはデータが少ないので、上記のデータが不足している場合には「The British Crop Protection Council発行のThe
e-Pesticide Manual 2002-2003(Twelfth ed.) Version 2.2」および(社)日本植物防疫協会の「農薬ハンドブック2002」のデータを追加しました。
すなわち、これらの情報源に示された毒性データには、試験条件が異なるデータが混在し、同じ生物種、同じ物質であっても大きく異なる値が含まれています。例えば、U.S.EPAのデータベースAQUIREには、約4,000もの生物種に対する様々な試験条件での約7,000種類の化学物質の約22万(2003年9月現在)にも及ぶデータが収録されていますが、単位がmg/L、µg/L、mol/L、ppm、ppb等々と異なるデータが記載され、また、明らかに単位の誤りと思われるデータも多く見られます。
そこでまず、環境省、OECDおよびU.S.EPA で定められている試験方法で推奨されている生物種で、主に淡水域で生息する
表4に示した藻類5種、ミジンコ類2種、魚類11種のデータを選んで採用し、単位を全てmg/Lに換算して統一しました。
表4 採用した試験生物種
学名 |
英名 |
和名 |
推奨機関 |
OECD |
U.S.EPA |
環境省 |
藻類 |
Chlorella vulgaris |
Green algae |
クロレラ |
○ |
|
|
Scenedesmus subspicatus |
Green algae |
イカダモ |
○ |
|
|
Selenastrum capricornutum |
Green algae |
ムレミカヅキモ |
○ |
○ |
○ |
Anabaena flos-aquae |
Blue-green algae |
アファニゾメノン |
|
○ |
|
Navicula pelliculosa |
Diatom |
フナガタケイソウ |
|
○ |
|
甲殻類(ミジンコ類) |
Daphnia magna |
Water flea |
オオミジンコ |
○ |
○ |
○ |
Daphnia pulex |
Water flea |
ミジンコ |
○ |
○ |
○ |
魚類 |
Poecilia reticulata |
Guppy |
グッピー |
○ |
○ |
○ |
Pimephales promelas |
Fathead minnow |
ファットヘッドミノー |
○ |
○ |
|
Cyprinus carpio |
Carp, Mirror, Colored |
コイ |
○ |
○ |
|
Brachydanio rerio |
Zebra danio, Zebra-fish |
ゼブラフィッシュ |
○ |
○ |
|
Oncorhynchus mykiss |
Rainbow trout |
ニジマス |
○ |
○ |
|
Oncorhynchus kisutch |
Coho salmon, Silver salmon |
ギンザケ |
|
○ |
|
Salvelinus fontinalis |
Brook trout |
カワマス |
|
○ |
|
Salmo salar |
Atlantic salmon |
タイセイヨウサケ |
|
○ |
|
Lepomis macrochirus |
Bluegill |
ブルーギル |
○ |
○ |
|
Ictalurus punctatus |
Channel catfish |
アメリカナマズ |
|
○ |
|
Oryzias latipes |
Ricefish, Medaka, High-eyes |
ヒメダカ |
○ |
○ |
○ |
その上で、物質ごと、生物種ごとにデータを下図の手順で整理し、信頼度の低いデータを削除し、信頼度の高いデータのみを選びました。
すなわち、このデータベースをもとに、まず、同じ物質についての同じ生物種でのOECDまたはU.S.EPAガイドに記載されている「標準試験時間」(藻類は72時間から96時間まで、ミジンコ類は48時間、魚類は96時間)でのデータが2つ以上あるものを選び、生物の個体差や試験者および試験操作による誤差を考慮しても10倍以上は異ならないと考え、それらのデータ群の最大値と最小値のばらつき幅が10倍以内に収まっているデータを採用し、そのデータ群の幾何平均値をその物質のその生物種に対する
「毒性代表値」としました。
また、データ群の最大値と最小値のばらつき幅が10倍を越えたデータ群は、全データ数が4つ以上ある場合に限り、全データを大きい順に並べて3分の2以上が近くにあるのに、それらの大きい方の5倍以上あるいは小さい方の5分の1以下に離れているデータを何らかのミスによる特異値とみなして削除しました。その後にデータ群の最大値と最小値のばらつき幅が10倍以内に収まった信頼性の高いデータを採用し、そのデータ群の幾何平均値もその物質のその生物種に対する「毒性代表値」としました。
次に、上記の方法で「毒性代表値」が決まらなかった物質と生物種については、安全側の「標準より長い試験時間」(藻類は96時間より長く168時間まで、ミジンコ類は48時間より長く72時間まで、魚類は96時間より長く168時間まで)のデータを加えて、上記と同様の方法で信頼性の高いデータを採用し、そのデータ群の幾何平均値をその物質のその生物種に対する「毒性代表値」としました。
さらに、上記と同様の方法で特異値を削除後にも4つ以上のデータがあり、最大値と最小値のばらつき幅が10倍を越えているデータ群のうち、データの分布が連続している場合は、全データを採用し、そのデータ群の幾何平均値をその物質のその生物種に対する「毒性代表値」としました。一方、全データの分布が小さい方の5分の1以下あるいは大きい方の5倍以上の大きく2つに分かれて分布している場合には、物質の構造や水中の形態、他の類似物質の毒性などを根拠に専門家判断でどちらか一方を採用し、その採用したデータ群の幾何平均値をその物質のその生物種に対する「毒性代表値」としました。ただし、一部の無機物で専門家判断でも採否が明確にできなかったデータ群の物質がありましたので、そのようなデータは採用しないことにしました。
なお、削除されたデータの中には、AQUIREのデータが多くありましたが、ECETOCや環境省のデータにも他と明らかに異なり、信頼性が低いデータが少数含まれていました。
以上のような「標準試験時間」と「標準より長い試験時間」のデータ群でも「毒性代表値」が決まらなかった物質と生物種については、「標準より短い試験時間」(藻類は72時間より短く48時間まで、ミジンコ類は48時間より短く24時間まで、魚類は96時間より短く48時間まで)のデータを追加して、同様に判断して残ったデータ群の幾何平均値をその物質のその生物種に対する
「準毒性代表値」としました。
このような処理をしても、「毒性代表値」または「準毒性代表値」が決められなかった物質については、メーカーのMSDSのデータを採用しました。それもない物質は、無機物で専門家判断が明確にできなかった物質のデータ群、すべての試験時間のデータ数が1つしかない物質データ、2あるいは3データしかなくて最大値と最小値のばらつき幅が10倍を越えているデータ群です。今後、これらのデータあるいはデータ群の物質は、情報が追加された際に追加、更新することとし、今回は水域管理参考濃度の算出には使わないことにしました。
まず、日本の水生生物保護のための基準値または指針値が定められていれば、その値を採用しました。これがない場合には、水生生物保護のための水質基準値がホームページ等で公開されている米国、英国、ドイツ、カナダのうち2ヶ国以上で基準値が定められている物質については、その基準値の幾何平均値を採用することとしました。2ヶ国以上としたことと、幾何平均としたことは、各国によって基準設定の考え方が異なり、10倍以上異なる値が定められている物質もあったからです。
次に上記のようにして整理・集計した物質ごと、生物種ごとに決定した「毒性代表値」と「準毒性代表値」に対して、
表5、6のような安全係数を用いて算出した値の最小値を水生生物保護のための水域管理参考濃度としました。
表5 農薬以外の工業薬品に適用する安全係数
データの有無 |
試験生物 |
毒性代表値の 安全係数 |
準毒性代表値の 安全係数 |
3生物群データがある場合 |
藻類 ミジンコ類 魚類 |
10
50
50 |
10
100(=50×2)
100(=50×2) |
藻類データなしで ミジンコ類・魚類データが両方ある場合 |
ミジンコ類 魚類 |
100(=10×10)
100(=10×10) |
200(=10×10×2)
200(=10×10×2) |
藻類データなしで ミジンコ類・魚類データのいずれかがある場合 |
ミジンコ類 魚類 |
500(=10×50)
500(=10×50) |
1000(=10×50×2)
1000(=10×50×2) |
藻類データありで ミジンコ類・魚類データのいずれかがある場合 |
藻類 ミジンコ類 魚類 |
10
500(=10×50)
500(=10×50) |
10
1000(=10×50×2)
1000(=10×50×2) |
藻類データのみの場合 |
藻類 |
500(=10×50) |
1000(=10×50×2) |
表6 農薬に適用する安全係数
用途または化学構造 |
データの有無 |
生物群 |
毒性代表値 |
準毒性代表値 |
a) 有機リン系,カーバメート系および成長阻害作用を有する尿素系殺虫剤 |
ミジンコ類データがある場合 |
藻類and魚類あり |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
甲殻類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
魚類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
藻類or魚類あり |
藻類 |
500 (=10×50) |
500 (=10×50×1) |
甲殻類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
魚類 |
100 (=10×10) |
200 (=10×10×2) |
藻類and魚類なし |
甲殻類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
ミジンコ類データがない場合 |
藻類or魚類あり |
藻類 |
100000 (=2000×50) |
100000 (=2000×50×1) |
魚類 |
10000 (=200×50) |
20000 (=200×50×2) |
b) 除草剤 |
藻類データがある場合 |
ミジンコ類and魚類あり |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
甲殻類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
魚類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
ミジンコ類or魚類あり |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
甲殻類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
魚類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
ミジンコ類and魚類なし |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
藻類データがない場合 |
ミジンコ類or魚類あり |
甲殻類 |
2000 (=200×10) |
4000 (=200×10×2) |
魚類 |
2000 (=200×10) |
4000 (=200×10×2) |
c) a),b)以外(有機リン系,カーバメート系および成長阻害作用を有する尿素系を除く殺虫剤,殺菌剤,植物成長調整剤,その他) |
藻類データがある場合 |
ミジンコ類and魚類あり |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
甲殻類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
魚類 |
50 (=1×50) |
100 (=1×50×2) |
ミジンコ類or魚類あり |
藻類 |
10 (=1×10) |
10 (=1×10×1) |
甲殻類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
魚類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
ミジンコ類and魚類なし |
藻類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
藻類データがない場合 |
ミジンコ類and魚類あり |
甲殻類 |
100 (=10×10) |
200 (=10×10×2) |
魚類 |
100 (=10×10) |
200 (=10×10×2) |
ミジンコ類or魚類あり |
甲殻類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
魚類 |
500 (=10×50) |
1000 (=10×50×2) |
農薬以外の化学物質については、藻類は増殖阻害をみており、環境省委員会(引用)のデータからEC
50とEC
0の比が10以下の物質が約3分の2あったことから安全係数を10としました。ミジンコ類については同様に短期不動試験でのEC
50と繁殖試験のEC
0との比が50以下の物質が約3分の2あったこと、魚類については、短期致死試験でのLC
50と成魚、胚、仔魚、稚魚のフルライフ試験でのEC
0との比が50以下の物質が約3分の2あったことから安全係数を50としました。また、データのない生物類に対する配慮は、データのある生物の毒性代表値の10分の1になりうるとして安全係数を10倍大きくしました。
なお、標準時間より短い試験時間での準毒性代表値については、藻類は変わらない値またはやや小さめの値となることから10のまま、ミジンコ類と魚類についてはやや大きめの値となることから、それぞれ安全係数を2倍にしました。
農薬については、主な用途と化学構造からa)有機リン系、カーバメート系および成長阻害作用を有する尿素系殺虫剤、b)除草剤、c)その他(a,b以外)の農薬に分け、それぞれについて藻類、ミジンコ類、魚類に対する毒性代表値を比較したところ、a)有機リン系、カーバメート系および成長阻害作用を有する尿素系殺虫剤は明らかにミジンコ類に対して毒性が高く、b)除草剤は明らかに藻類に対して毒性が高く、c)その他の農薬は特別な傾向がないことが分かりました。
このため、a)有機リン系、カーバメート系および成長阻害作用を有する尿素系殺虫剤でミジンコ類のデータがない場合には、藻類に対する毒性代表値に対しては、藻類とミジンコ類との平均的毒性代表値の差である2000倍、魚類に対する毒性代表値に対しては、魚類とミジンコ類との平均的な毒性代表値の差である200倍だけ安全係数を大きくし、その他は
表5と同じ安全係数としました。
また、除草剤で藻類のデータがない場合には、ミジンコ類の毒性代表値に対してはミジンコ類および魚類と藻類との平均的毒性代表値の差である200倍だけ安全係数を大きくし、その他は表5と同じ安全係数としました。
なお、c)その他の農薬についてはすべて
表5の農薬以外の化学物質と同じ安全係数としました。
各物質について、届出事業所からの大気または水域への毒性重み付け排出量を以下の式で計算しました。
◎届出事業所からの大気への毒性重み付け排出量=各物質の届出事業所からの大気への排出量÷各物質の大気管理参考濃度=各物質の届出事業所からの大気への排出量×各物質の大気経由毒性重み付け係数
◎届出事業所からの水域への人に対する毒性重み付け排出量=各物質の届出事業所からの水域への排出量÷各物質の人の健康保護のための水域管理参考濃度=各物質の届出事業所からの水域への排出量×各物質の水経由毒性重み付け係数
◎届出事業所からの水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量=各物質の届出事業所からの水域への排出量÷各物質の水生生物保護のための水域管理参考濃度=各物質の届出事業所からの水域への排出量×各物質の水生生物毒性重み付け係数
◎大気/水域管理参考濃度と毒性重み付け係数総括表
ただし、毒性の強さについての情報がない物質については、毒性重み付け排出量が計算されていませんし、その値の大きい物質リストにも表示されませんので注意が必要です。
悪影響を与えやすい排出源の事業所(者)およびその事業所が所在する都道府県や市区町村が、市民・NGOとも協力して安全で安心できる環境をつくるというPRTR制度の目的のために、以下のような情報を提供することにしました。
(1)全国各都道府県での届出事業所からの「大気への毒性重み付け排出量」と主原因5物質
北海道から沖縄県までの47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての大気への毒性重み付け排出量の積算値と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(2)届出事業所からの「大気への毒性重み付け排出量」の全国上位500市区町村と主原因5物質
全国約1,800の市区町村内に所在する事業所から届けられた各物質についての大気への毒性重み付け排出量の積算値を比較し、その値が大きい順に500位以内となる市区町村と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(3)全国各都道府県での届出事業所からの「水域への人に対する毒性重み付け排出量」と主原因5物質
北海道から沖縄県までの47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への人の健康に対する毒性重み付け排出量の積算値と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(4)届出事業所からの「水域への人に対する毒性重み付け排出量」の全国上位500市区町村と主原因5物質
全国約1,800の市区町村内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への人の健康に対する毒性重み付け排出量の積算値を比較し、その値が大きい順に500位以内となる市区町村と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(5)全国各都道府県での届出事業所からの「水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量」と主原因5物質
北海道から沖縄県までの47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量の積算値と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(6)届出事業所からの「水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量」の全国上位500市区町村と主原因5物質
全国約1,800の市区町村内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量の積算値を比較し、その値が大きい順に500位以内となる市区町村と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
これらの(1)〜(6)の情報によって、全国的にみて、どの都道府県、あるいはどの物質が届出事業所から排出され、大気汚染や水質汚染による悪影響のリスクが高いか、熱心に取り組むべきかが分かります。
(7)都道府県ごとの各市区町村での届出事業所からの「毒性重み付け排出量」
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての3種類の毒性重み付け排出量を、それぞれ市区町村ごとに積算して表示しました。
(8)都道府県ごとの各市区町村での届出事業所からの大気/水域への「毒性重み付け排出量」の都道府県内順位
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての3種類の毒性重み付け排出量を、それぞれ市区町村ごとに積算した値の都道府県内での順位を表示しました。
(9)都道府県ごとの届出事業所からの「大気への毒性重み付け排出量」の市区町村比較地図
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての大気への毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが色分けされて一目で比較できるようにを地図で表示しました。
(10)都道府県ごとの届出事業所からの「大気への毒性重み付け排出量」が全国500位以内の市区町村と主原因3物質
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての大気への毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが全国で500位以内になってしまっている市区町村とその主原因3物質を表示しました。
(11)都道府県ごとの届出事業所からの「水域への人に対する毒性重み付け排出量」の市区町村比較地図
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への人の健康に対する毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが色分けされて一目で比較できるようにを地図で表示しました。
(12)都道府県ごとの届出事業所からの「水域への人に対する毒性重み付け排出量」が全国500位以内の市区町村と主原因3物質
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への人の健康に対する毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが全国で500位以内になってしまっている市区町村とその主原因3物質を表示しました。
(13)都道府県ごとの届出事業所からの「水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量」の市区町村比較地図
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが色分けされて一目で比較できるようにを地図で表示しました。
(14)都道府県ごとの届出事業所からの「水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量」が全国500位以内の市区町村と主原因3物質
47都道府県について、その都道府県内に所在する事業所から届けられた各物質についての水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量を市区町村ごとに積算した値の大きさが全国で500位以内になってしまっている市区町村とその主原因3物質を表示しました。
なお、毒性重み付け排出量の市区町村比較地図では、毒性重み付け排出量が全国で中位とみなせるところを黄色とし、その10分の1および10倍の幅で、白、緑、黄、赤、こげ茶の5色に分けて表示することにしました。具体的には、大気への毒性重み付け排出量は、100,000以上1,000,000未満を黄色、水域への人に対する毒性重み付け排出量は、1,000以上10,000未満を黄色、水域への水生生物に対する毒性重み付け排出量は、10,000以上100,000未満を黄色で表示し、黄色の10倍の地域を赤色、100倍の地域をこげ茶色、10分の1の地域を緑色、100分の1以下の地域を白色で表示しました。
全国比較を行っていますので、ある特定の都道府県では、赤色やこげ茶色が多くなったり、緑色や白色が多くなることがあります。
これらの(7)〜(14)の情報によって、それぞれの都道府県内のどの市区町村で、どの物質が大気汚染や水質汚染による悪影響のリスクが高いか、熱心に取り組むべきかが分かります。
農薬の毒性重み付け使用量については、土壌中などで分解されなかったものは、降雨で水域に流失する場合が多いと考えて、以下の式で計算しました。ただし、政令番号386のブロモメタン(臭化メチル)は大部分が倉庫業での検疫用くん蒸剤に使用され、一部が土壌くん蒸剤として使用されていますが、ほとんど大気へ放出されているので、除外しました。
◎農薬の人に対する毒性重み付け排出量 =各農薬の使用量÷各農薬の人の健康保護のための水域管理参考濃度=各農薬の使用量×各農薬の水経由人に対する毒性重み付け係数
◎農薬の水生生物に対する毒性重み付け使用量=各農薬の使用量÷各農薬の水生生物保護のための水域管理参考濃度 =各農薬の使用量×各農薬の水生生物毒性重み付け係数
ただし、毒性の強さについての情報がない農薬については、毒性重み付け農薬使用量が計算されていませんし、その値の大きい物質リストにも表示されませんので注意が必要です。
悪影響を与えやすい農薬を、各都道府県や市区町村が市民・NGOとも協力して削減・代替し、安全で安心できる環境をつくるというPRTR制度の目的のために、以下のような情報を提供することにしました。
(1)全国各都道府県での農薬の「水域への人に対する毒性重み付け使用量」と主原因5物質
北海道から沖縄県までの47都道府県について、その都道府県内で使用された農薬についての水域への人の健康に対する毒性重み付け使用量の積算値と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
(2)全国各都道府県での農薬の「水域への水生生物に対する毒性重み付け使用量」と主原因5物質
北海道から沖縄県までの47都道府県について、その都道府県内で使用された農薬についての水域への水生生物に対する毒性重み付け使用量の積算値と、その値に寄与の大きかった主原因5物質をまとめて表示しました。
◎「大気/水域管理参考濃度と毒性重み付け係数総括表」
PRTR対象物質の中で、毒性強度に関する情報が得られるすべての物質について、大気環境や水環境中の化学物質が人や水生生物にとってほぼ安全と見なせるような管理の参考とする濃度と、その逆数から毒性の強さに対応する毒性重み付け係数を一覧表に示しました。
これらの(1),(2)の情報によって、全国的にみて、どの都道府県、あるいはどの農薬が水質汚染による悪影響のリスクが高いか、熱心に削減に取り組むべきかが分かります。