質問(a):環境管理参考濃度は信用できる値でしょうか?
回答(a):日本で環境基準値や指針値のない物質についての環境管理参考濃度は、平成8年度〜11年度に旧環境庁から(社)環境科学会(責任者:浦野紘平)に委託された「複数媒体汚染化学物質環境安全性点検評価調査」を更新・充実したデータによるものです。この調査結果は、PRTRの対象物質の選定にも利用されました。
情報源の選定や計算の仕方などの詳しいことは、説明文に記載してありますが、2012年2月現在で入手できた国内外の信頼できる機関からの基準値、指針(ガイド)値、管理参考濃度(RfC)、毒性値(ADIやUR)などを収集して選択または算出された値です。
本提供情報を参考にして、日本の基準値や指針値がない多くの物質についても、各地域、各事業所で、環境管理の目標濃度を定めたり、排出量に重み付けをすることによって、効果的な化学物質の環境安全管理が可能になると考えています。
意見(b):作業環境の許容濃度(TWA)を基に大気環境管理参考濃度を計算する場合に、物質によらず、一律に300分の1にしてよいか。
回答(b):作業環境の許容濃度は、大気環境や住宅等の室内環境の基準値や指針(ガイド)値がない場合にのみ使用することになっています。
また、従来の大気環境基準や指針値は、物質によって作業環境の許容濃度のおよそ100分の1から1,000分の1の間になっています。当然、本来は物質ごとの毒性の作用機構や曝露形態等によって異なる値とすべきものですが、一つの物質について基準値や指針値を決める場合にも、多くの情報と議論が必要であり、専門家によって意見が異なることも度々あります。
PRTR制度は、このような議論を行って基準値や指針値を決めるだけの情報がない多くの物質についても対象として管理する制度ですから、詳細な情報が得られ、国内外の公的機関で合意が得られた大気環境基準値または指針(ガイド)値等がない間は、個別物質ごとに個人的な意見や判断で安全係数を変えることはできませんが、安全側すぎても現実的ではないので、平成14年度からは100分の1と1,000分の1の間の300分の1の値を環境管理参考濃度として提案することにしました。
環境基準値等のない物質の環境管理参考濃度は、地域や事業者がそれぞれの判断で、各物質についての環境管理目標濃度を決めて自主管理を進める際の参考値として提案したものですから、国が法律に基づいて全国一律に決める環境基準と同じように考えるのは誤りですので、誤解のないようにして下さい。
意見(c):作業環境の許容濃度(TWA)を基に大気環境管理参考濃度を計算する場合に、刺激性を根拠にして許容濃度が定められている物質については、300分の1でも厳しすぎる。
回答(c):質問(b)と類似の意見ですが、米国産業衛生学会(ACGIH)の許容濃度の設定についての説明には、刺激性も長時間曝露されることによって起こる被害であり、他の慢性的な毒性と同様に扱うべきであることが記されています。また、刺激性物質で、大気環境基準や指針値等がある7種類の有機物質について、それらの値とTWAとを比較してみたところ、差の小さいエチレングリコールモノブチルエーテルを除いて、6物質が180分の1から780分の1の間になっていました。このため、平成14年度からはこれらの中間の300分の1にしました。
なお、PRTR制度は、詳細な議論を行って基準値や指針値を決めるだけの情報がない多くの物質についても対象として管理する制度であり、また、最近は化学物質過敏症などが増えているとされていることから、刺激性も重視すべきと考えています。
また、環境管理参考濃度は、回答(b)に記したように、国が法律に基づいて全国一律に決める環境基準と同じように考えるのは誤りですので、誤解のないようにして下さい。
意見(d):環境管理参考濃度を計算する場合の元情報の選択理由が示されていないのはおかしい。
回答(d):「説明文」に元情報の選定の考え方や採用する優先順について詳しく説明してあります。また、電子情報として入手可能な情報源は、全てリンクして元情報を確認できるようにしてあります。説明文をよくご覧下さい。 |